お気入りのサルビア音楽ホールのブラームス室内楽シリーズも第2回となりました。第2回は第1部が「神奈川フィルとジュニアが奏でる室内楽」、第2部が「プロが演奏するクラリネット五重奏」という構成です。普段と違う「ジュニアが入った演奏を聴くこと」と「生とオーディオの比較をすること」で、曖昧なまま思っていたことが、実感を伴う認識として感じられたコンサートでした。
座ったのは、4列目のやや右寄りです。このホールで聴く弦楽の「実音と響きのバランス」は4列目が一番好みであるとことをはっきりと認識しました。前回の弦楽六重奏は3列目で聴いたのですが、1列前だと実音の割合が少し多すぎと感じたからです。以前に4列目で聴いた感想も合わせて、弦楽の響きは4列目が一番好みに合うと思いました。
前半は弦楽四重奏曲を、オーディションで選別されたジュニアが第1ヴァイオリンでリードする編成です。「まさかジュニアに第1ヴァイオリンをやらせるの?」と疑心暗鬼になりながら聴き進んだのですが、この趣向もなかなかよかったです。
<第1部>:神奈川フィルとジュニアが奏でる室内楽
モーツァルト/ディベルティメント K.138より 第1楽章 第3楽章・・・第1ヴァイオリンは小学5年生
・モーツァルトが16歳の時に作曲した、「ザルツブルク・シンフォニー」と呼ばれる3部作の第3番です。
・軽快で親しみやすい曲なので、一度聴けば馴染む楽しい曲です。
・最初のジュニアの音出しが心配だったのですが、そんな心配はよそにとてもいい音を奏でました。
・音量こそ小さ目でしたが、周りの3人のプロ奏者たちはジュニアに合わせるように抑えて演奏されていたのでバランスも問題なしでした。
・音量を測ってみたところ、60dBから最大でも75dBあたりでしたが、音量不足は感じませんでした。
・音が大きすぎるよりも、このくらいの方が心地よく聴けるとも感じます。
・第1楽章が終わったところで拍手がわきました。
・自分もそうなのですが、会場の皆さんも心の中で「がんばれ、がんばれ」と応援していたので、第1楽章が終わったところで、ホッとし思わず拍手がわいたのだと思います。
・第3楽章が終わったころには、自分が演奏し切ったような達成感を感じていました。
モーツァルト/弦楽四重奏曲 第14番 K.387「春」より 第1楽章・・・第1ヴァイオリンは高校2年生
・モーツァルトの弦楽四重奏の中でも、「ハイドンセット」と呼ばれる有名曲のひとつです。
・この曲も、明るく親しみやすい曲で、馴染みやすいですね。
・最初が小学5年生でしたので、高校2年生となると聴く方も少し要求が高くなります。
・音を伸ばす最後のところで弓の角度が寝てしまい、音色が変わってしまうのがやや気になりましたが、中々楽しめました。
・サルビア音楽ホールの音の良さは七難隠します。
・心躍らせながら楽しく聴けたと思います。
モーツァルト/弦楽四重奏曲 第17番 K.458「狩」より 第1楽章・・・第1ヴァイオリンは高校2年生
・こちらも「ハイドンセット」の中の曲で有名な曲です。
・この曲は、自分の弦楽四重奏曲の中のリファレンス曲です。
・少し前にハーゲン四重奏団の演奏も聴いており、自宅で頻繁に聴いている曲でした。
・そんな曲ですから、ハードルが上がりますよね。
・テクニックはジュニアの中でも一番と感じたので、多分オーディションの優勝者なのでしょうが、音程がずれることが気になりました。
・ですが素性はいいですね。ソロで順番に掛け合う部分が多い曲ですが、プロたちと堂々と渡り合っていました。
・そして、最後の挨拶の声がとてもよかったです。オペラ歌手として育ててみたい、なんて邪念も湧きました。
◆「ジュニアが奏でる室内楽とバカにするなかれ」です。技量不足は応援する気持ちで十分補い楽しく聴けました。・・・感動度★☆☆☆☆
<第2部はプロが奏でるクラリネット五重奏>
ブラームス/クラリネット五重奏曲 作品115 感動度☆☆☆☆☆
この曲はブラームスの室内楽の中でも評価が高く、親しまれている曲です。自分は殆ど聴いて来なかった曲ですが、今回のコンサートを機に新たに調達したものの合わせて、手持ちの音源は5枚もありました。
演奏が始まると、「いい音だな~」と音の良さに耳が惹かれました。ホールの真ん中付近の位置で聴くと、響きが全身を包み込む感覚で目を閉じて聴くと定位感はなくなります。特にクラリネットはホール中に響き渡り、音楽の中に入り込んで聴いている感覚です。この心地よさは、オーディオでは歯が立たないと思いました。
ところが、40分ほどある曲の中盤から眠気が襲って来ました。「いい音だから心地よくて眠くなるのか?」と考えながら聴いていたのですが、第3楽章の途中からウトウトとしてしまい、第4楽章が終わったところで目が覚め拍手をしました。
「いい音で聴いていたのに、なんで眠くなったんだろう?」
そんなことが気になったので、帰宅後はお気に入りの三つの音源と比較しながら復習します。
①プリンツ&ウィーン室内合奏団盤 DENON UHQCD
②ハーゲン弦楽四重奏団&イェルク・ヴィトマン盤 Myrios Classics SACD
③モラゲス&プラジャーク四重奏団盤 PragaDigitals SACD
予習の段階で感じは、音の良さから下記の順で好みと感じていました。
②ハーゲン盤 > ③プラジャーク盤 > ①プリンツ盤
・一番音がいいと感じていた②ハーゲン盤から聴き始めたのですが、音はいいのですが長く聴いていると飽きてくる感覚でした。全曲通して聴けませんでした。
・そこで、音が歪っぽいと感じていた①プリンツ盤に切り替えてみたのですが、こちらの方が聴くのが楽しいではないですか。最後まで通して聴いてしまいました。
・③プラジャーク盤はどうだろうと思い聴いてみると、これは音もよくて聴くのも楽しかったです。
演奏の好みですね。5分くらい聴くなら、音がいい音源を気に入るのですが、全曲通して聴くなら演奏の好みの要素が高まって来ます。
演奏で評価するなら下記と感じました。
①プリンツ盤 > ③プラジャーク盤 > ②ハーゲン盤 > サルビアで聴いた生演奏
・プリンツ盤は抑揚やテンポの揺らし方が絶妙で聴いているものを飽きさせない
・プラジャーク盤はクラリネットと弦楽四重奏が競い合うように奏でるので刺激的
・ハーゲン盤は抑揚もテンポの揺らしもあるのだが、まとまりすぎていてどうも自分には馴染まない
・サルビアで聴いた生演奏は、上記と比較すると単調。だから長く聴いていると飽きてしまったのだろう
◆音の良さと演奏の好みはかなり微妙だと感じました。
これまで、古くからのオーディオマニアが「フルトヴェングラーが一番」などと言っているのを聞くと、「あんなに音が悪くて雑音だらけなのに何がいいのか?」と理解できないでいましたが、聴き馴染んだ演奏であることも加味して、そ人にはあの演奏が一番なのだろうと、ようやく理解出来た気がします。
音楽を聴くにも、「音の良さ」「演奏の好み」そして「聴き馴染み」、これらの関係も興味深いと思いました。これからも自分好みの1枚探しと私の演奏を求めて彷徨って行こうと思います。
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