面倒ごとが一息ついたので聴きに行ってきました。東京交響楽団の東京オペラシティコンサートホールでの定期演奏会です。動機は、生演奏を楽しむこともありますが、オペラシティのバルコニー席の音を確認したかったのです。
<確認したかったこと>
東京オペラシティはステージ裏のP席で聴く音がよいと感じていました。ならば同じ高さに設置された、最近お気に入りの2階席のバルコニー席の音はどうかの確認を実施
バルコニー席の件は以前から気にはなっていたのですが、中々タイミングが合わずに来ていました。そんな折に救済サイトに割引のチケットが出ていたので飛びつきました。座席位置は、2階席左バルコニー1列のステージ横です。
聴いた結果を結論から整理すると、音の明瞭度、響きの聞こえ方などはステージ横のバルコニー席もとても良いのですが、弦楽器に比べて管楽器の聞こえ方が目立ちすぎるため、バランス的にはP席の方が好ましい、と思いました。
東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ 第141回
指揮:トンチエ・ツァン
ヴィオラ:ティモシー・リダウト
演奏曲
1、J.S.バッハ/マーラー編:管弦楽組曲 第3番より「アリア」
2、ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
3、ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 op.68
感想を交えながら左バルコニー席の音を記録しておきます。
1、J.S.バッハ/マーラー編:管弦楽組曲 第3番より「アリア」
聴きなれたバッハの「G線上のアリア」です。オルフェウスのカノンを調整用の音源としていることもあり、度々聴いている曲です。しかしながらマーラー編ということでしたので、興味津々で聴いていました。演奏が始まり耳を傾けると、いつもと同様な弦楽合奏の穏やかなメロディが流れてきます。「同じだ」と思いながら聴いていると、通奏低音がコントラバスとハープで奏でられていることに気づきました。オルフェウス盤では、コントラバスとチェンバロです。ですが、どちらもコントラバスはピッツィカートで演奏されていますので、全く違和感はなかったです。と言いますか、違いがよくわからなかったというのが率直な感想です。
聴こえ方は、明瞭でやわらかな音がふわっと聞こえる感覚で、このままずっと聴いていたいと感じながら浸っていました。30名規模の小編成での演奏でしたが、全く不満はなかったです。オペラシティのステージ回りの席の音の良い面が際立っていると思いました。
2、ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
この曲は聴いたことがない曲だったので、直前に少しだけ予習して来ました。そんな印象と比較すると、主役であるはずのヴィオラ ソロが目立たないのです。暗めに奏でる5弦合奏にソロが切り込んで欲しいのですが、オーケストラの弦楽合奏に押されてしまう感覚でした。さらに管楽器軍が合奏すると、主役は完全に管楽器となります。協奏曲はこの席は合わないと思いました。ヴィオラ協奏曲ですからなおさらです。協奏曲が合わない点はP席も同様ですね。
ソロを弾いたティモシー・リダウトは終演後に2曲のアンコールを実施しました。ひとつはヒンディミット ヴィオラソナタ第4楽章で超絶技巧の披露です。もうひとつは、バッハ パルティータ2番 サラバンドです。こちらはしっとりと聴かせる曲で、演奏の多様性を示してくれました。ソロ演奏の聴こえ方はまずまずでした。
3、ブラームス:交響曲 第1番
この曲では、さすがにスケールの大きな演奏を聴かせてくれました。音量も最大で90dBくらいまで上がり迫力満点です。しかしながらヴィオラ協奏曲と同様に、管楽器とティンパニーが目立つ感覚で弦楽器が活きないのです。音量ばかりでなく、音の鮮度も管楽器が際立ちます。P席では、普段聴いている配置と逆に聴こえることが気にならないわけではないのですが、音の良さがカバーして全体としてよさを引き立てますが、オペラシティのステージ横のバルコニーでは、バランスの違和感を音の良さでカバーしきれないと思いました。
<コンサート後のオーディオとの比較>
・コンサート後のオーディオでの復習タイムを楽しみにしています。そんな面からも昼公演が好きなのです。
J.S.バッハ/マーラー編:管弦楽組曲 第3番より「アリア」
比較音源:オルフェウス室内管弦楽団/パッヘルベルのカノン/バロック名曲集 DG CD
生で聴いた音よりも明瞭でカチッとした感覚でした。生の鮮度が高く、ふわっとした感覚もよかったですし、オーディオのひとつひとつの音の解像度が高い感覚もよくて、甲乙つけがたいと思いました。どちらも心地よいです。
ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
比較音源:イラン・ヴォルコフ&BBCスコティッシュ交響楽団/ヴィオラ交響曲集 Hyperion CD
感想で書いたように生ではバランスがもう一つだったので、オーディオで聴くと落ち着きます。ただし、オーディオでは冒頭のコントラバスがあり得ないような大きな音量で入っていて気になりました。協奏曲は、生で聴くバランスとオーディオで聴くバランスがかけ離れているケースが多々あるため悩ましく思います。
ブラームス:交響曲 第1番
比較音源:イヴァン・フィッシャー&ブダペスト祝祭管弦楽団/ブラームス:交響曲 第1番 CHANNEL CLASSICS SACD
生のスケールの大きさが際立っていました。総奏時の音数もオーディオは生には敵いません。他方で、聴こえ方のバランスはオーディオが優位でした。総合では、交響曲はまだまだ生には敵わないと思いました。自宅のオーディオでさらにスケールを上げるためには、部屋の広さがボトルネックとなります。
オペラシティのステージ横のサウンド確認をテーマとして聴きましたが、こうしてひとつひとつを紐解いていくのも面白いと思いました。
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ヒジヤンさん、こんにちは。
オペラシティのステージ横バルコニーの音響はどうなんだろうと思っていたので、興味深く読みました。
オペラシティは(全体的な音響はともかくとして)視界の悪さや遠さ、見切れの多さはピカイチ、その割にどのオケもチケットは高め、というしょーもないホールだと思ってます(笑)
P席は確保が難しいですが、ステージ周りのバルコニーもある程度似たような感じでマシなのでは?と思ってましたが、やはりそれなりにバランスの偏りが出るのですね。
検証頂きありがとうございます。
眠り猫さん、コメントありがとうございます。
>オペラシティは視界の悪さや遠さ、見切れの多さはピカイチ、その割にどのオケもチケットは高め、というしょーもないホールだと思ってます
何か良くない思い出があるようですね。
自分は最初にオペラシティで聴いたのが、ウィーン旅行の後に、ウィーン少年合唱団の来日公演を懐かしむ気持ちで足を運んだのが最初でした。単に王宮礼拝堂で聴いた懐かしさからでしたので、最安席のP席を選びました。
ところが、合唱団が前を向いて歌っているのに、まるでこちらに向かって歌っているように聞こえて驚きました。しかも、王宮礼拝堂よりも音がいいと感じたのです。さらに、S席は7Kだったのですが、P席は1Kでした。こんなに音がいいのに、こんなに安いなんて・・・と感動しました。
それからというもの、オペラシティのP席は音がよくて、値段が安いので大変お得と思うようになりました。10数年前の話です。ですが、最近はP席の価格が上がっているように感じて、お得感を感じなくなっています。以前はP席が一番安い価格設定だったのに、最近は値上がりしているようですね。他のホールでもP席のランクが上がっているように感じています。
そんな思い出があったので、ステージ横のバルコニーはどうだろう?と興味を持っていました。結果は、音は悪くないですがバランスがもう一つ、だから今後は選ばないと思います。ステージ先端より客席寄りでしたらバランスも悪くないと思いますが、S席になってしまいますよね。
過去の体験から認識が形成されていく、わかりやすい事例かと思います。
眠り猫さんのオペラシティでのしょーもない体験はどんな感じだったのでしょうか?興味があります。
ヒジヤンさん、こんばんは。
>眠り猫さんのオペラシティでのしょーもない体験はどんな感じだったのでしょうか?興味があります。
オペラシティでは長所と短所がはっきりしているホールだと思っており、自分の鑑賞スタンスからは明確に長所<短所です。
長所としては、高い三角天井のおかげで教会のように残響が綺麗によく響き、多少アレな演奏でも下駄を履かせたようにマトモに活き活きと聴こえるのと、上から降ってくる音のおかげか概ねどの席でも音は良い(席によってのバラ付きが少ない)、という点です。
短所としては、1階席の傾斜の緩さ、2階・3階の正面席のステージからの遠さ、各階の両サイドバルコニー席の見切れの多さ及び椅子のステージへの角度の不足、などです。
私はステージで何が起こっているのかを「観たい」ので、どのホールでも2階以上のバルコニー席を取ることが多いのですが、その観点からするとオペラシティは最悪です。
かと言って1階席だと傾斜が緩いので前方の客の頭が邪魔なこともあり、また正面バルコニーは距離がありすぎて面白くない、という。
そんな席でもS席扱いですし、よほど気になるプログラムでもない限り、もはやオペラシティには行かないことにしています。
(一方で隣の新国立劇場は、観劇含めて頻繁に行きます。そっちは大劇場・中劇場・小劇場いずれも特徴があって好きです。)
ヒジヤンさんが仰るとおりP席が確保できれば良いと思うのですが、在京オケの定期公演ではほぼほぼ定期会員が席を押さえており、入手は至難の業ですので。。。
眠り猫さん、おはようございます。
なるほど、猫さんの座席選びのポイントと優先事項がよくわかりました。ご自身の指向が明快なのでわかりやすかったです。
コンサートでも「聴く」と「観る」のバランスは大事ですね。自分も「観る」の割合が徐々に増えてきています。後はココに「価格」の要素が入ってくるので、選択が悩ましくなって来ます。