その10では、佐渡裕氏が音楽監督を務める、ウィーン トーンキュンストラー管弦楽団のウィーン公演と日本公演の二つについて書くことにしました。二つの公演は佐渡裕氏が音楽監督を実施した10年間の集大成として、ウィーンでの公演と日本での公演を同じ演目でツアーをしたものです。個人的には、ウィーン通いをしていた時に知り合った友人の竹中さん(トーンキュンストラー第2ヴァイオリン奏者)が演奏するため、両方の公演を聴きに行きました。演目が、オーディオ沼に嵌り込むきっかけとなった”マーラー交響曲 第5番”だったため引き寄せられるように向かったのです。
コンサートは午後からだったので、朝はアパートでゆっくりとしてからケルントナー通りを巡り、シュテファン大聖堂まで来ました。
ケルントナー周辺をぶらぶらした後で、行きなれた店でランチをしてからムジークフェラインに向かいます。
<ウィーン公演>
チケットはいち早く、昨年の9月にゲットしました。それでも、トーンキュンストラーのムジークフェライン公演は人気が高く、一般予約がスタートした時には空きが少なく、ゲット出来たのは3列目右ブロックの通路横でした。ムジークフェラインはステージが高く、段々畑状となっているため圧迫感が強いです。ステージに近いため音は迫力満点なのですが、目の前にオーケストラが迫っているため演奏する様子は把握しにくいです。ですがカテゴリ5の48ユーロですから、まずまずな座席確保が出来たと思います。
5月4日ムジークフェライン大ホール ウィーン・トーンキュンストラー公演
<演奏>
指揮:佐渡裕
ピアノ:反田恭平
オーケストラ:トーンキュンストラー管弦楽団
<演奏曲>
モーツァルト ピアノ協奏曲第23番
マーラー 交響曲第5番
このようなステージの真近から聴きましたが、音が回り込んで来ますので見た目よりは自然に聞こえます。ステージから右寄りにいても主旋律を奏でる第1ヴァイオリンもよく聞こえましたし、音への不満はなく、音楽を聴く視点では全く問題なかったです。ただし、視界がこんな感じなので、演奏する姿を見たい趣向には適さないと思いました。
モーツァルト ピアノ協奏曲第23番では、この位置でも聴いてもピアノとオーケストラのバランスはオーディオで聴くくらいのバランスでしたので、違和感は全くありません。マーラー交響曲第5番でも、オーケストラの演奏がふわっと浮かび上がり、まるでホールの中央か2階席で聴いているような感覚に聴こえて来たので驚きました。好きな楽曲に引き寄せられるように聴き入り、終演時には大きな声で「ブラボー!」と叫んでいました。
ソリストの反田恭平氏の人気は、前々日のユジャ・ワンと比べるとそれほどではなかったのですが、アンコールにシューマンの献呈を弾くと大きな盛り上がりをみせていました。指揮の佐渡裕氏は、10年間トーンキュンストラーの音楽監督を務めて来ただけあってか、終演後の拍手も大きかったです。
ウィーン公演の5日後には、日本公演のツアーが始まりました。音楽監督の終焉を機に、佐渡氏の母国である日本での3回目のツアーのスタートです。私は最終日のすみだトリフォニー公演を聴きに行きました。同じ演奏者の同じ演目ですが、ホールの違い、聴く場所の違いなどを感じて来ましたので、差異を感じた部分を中心にピックアップしたいと思います。
<日本公演>
ホールはすみだトリフォニーホールです。このチケットは、会員登録を実施して発売日の開始時間に競うように予約しました。それにしても日本でのチケット予約競争は熾烈ですね。あらかじめ準備して予約開始時間と同時にWeb予約をしたのですが、ログインした時にはすでに狙いの席は埋まっていました。そんなタイミングで確保したのは、3階ステージ近くの右バルコニー席です。
3階席と言っても、ステージに近づくにつれて下がって来るホールの造りのため、一般的なホールの2階席相当の高さかと思います。オーケストラの見え方は、弦楽器群から打楽器群まで一望出来るので、演奏者の様子はよくわかります。当初の狙いは、2階バルコニー席の前方でしたが、結果的にどちらが好みに合うのかは聴いてみないとわからない感覚でした。
5月19日すみだトリフォニー大ホール ウィーン・トーンキュンストラー公演
<演奏>
指揮:佐渡裕
ピアノ:反田恭平
オーケストラ:トーンキュンストラー管弦楽団
<演奏曲>
モーツァルト ピアノ協奏曲第23番
マーラー 交響曲第5番
ムジークフェラインで聴いた時とは大きく変わる座席位置です。オーケストラ真近くで観上げるように聴いたムジークフェラインに対して、少し離れた位置から見下げるようなすみだトリフォニーでした。演奏者と演目は同じです。ですが、不思議と聴こえ方の大きな違いは感じませんでした。
モーツァルト ピアノ協奏曲第23番では、ピアノをよく聴きたいと思って選んだ、トリフォニーの右バルコニー席だったのですが、感覚的には見上げるようなムジークフェラインの座席から聴く方がクリアに聞こえて好ましく感じました。マーラー 交響曲第5番では、どちらのホールでも、オーケストラの演奏がふわっと浮かび上がる感覚で、遜色は感じなかったです。もちろん、ムジークフェラインの方が音量が大きく、迫力はあったのですが、聞こえ方は大きく変わらないと言うのが印象的でした。すみだトリフォニーホールでは、震災後のチャリティ公演で同じマラ5を最前列で聴いたことがありましたが、この時はよい印象がなかったので、ホールと座席位置と聴こえ方で、大きく感じ方や音が変わると思った二つの公演でした。
演奏面では、ウィーン公演も日本公演も同様な印象で、2週間ほど前にウィーンで聴いたのと同じ演目と演奏でしたが、大満足で聴くことが出来ました。これならわざわざウィーンに聴きに行かなくてもよいのではないかと思ったほどです。指揮の佐渡氏もピアニストの反田氏も日本での人気はウィーンとは違いますね。協奏曲も交響曲も大喝采で幕を閉じました。
ここまで ホクホク:10 ガックリ:6
ムジークフェラインで協奏曲が終わった後で、ピアノの足を外し、横倒しにして運ぶ様子の写真がありましたので、参考まで添付しておきます。
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