Dirac ART(Active Room Treatment)は、すべてのスピーカーとサブウーファーを協調動作させ、部屋そのものの音響特性を“制御する”技術です。
ここでは、実際にDenon/Marantz製AVアンプでARTを導入する際の手順と、私の経験をもとにした注意点をまとめました。
準備
測定マイクは UMIK-1 が推奨されています。REWとの相性も良好です。
校正ファイルが用意されたスピーカー測定用マイクであれば、他の製品でも問題ありません。
USB端子からの給電が不十分な場合、測定エラーが発生して進めないことがあります。
短く質の良いケーブルを使用してください。長くする必要がある場合は、セルフパワーUSBハブで給電を補強します。
測定マイクを選び、校正ファイル(90度)をロードします。マイクは上向きで測定するのが推奨です。
測定は9箇所で行います。最初の1箇所以外は大まかで構いません。マイクは手で持たず、スタンドを使用してください。
調整
ターゲットカーブは“作る”ものではなく、自然にそうなるものという考え方で良いと思います。
高域まで補正するのは私は好みません。過剰補正は指向性の違和感を生むことがあります。
300Hz前後までの補正で十分です。全チャンネルをDiracの「カーテン」で制限してください。
スピーカー自体が完璧でない場合、私はDiracのターゲットカーブで無理に補正せず、MiniDSPなどでPEQ調整しています。
どうしても高音など耳障りでEQが使えない環境の場合は、全帯域補正+ターゲットカーブ調整を使うか、
いっそスピーカーを窓から投げ捨てて、心地よい音のスピーカーに変えましょう。
サブウーファー・グループ設定
性能が似通っていれば同じグループでOKです。性能差が大きい場合はグループを分けてください。
性能が非常に高いサブウーファーでは、サポートレンジの左のチェックボックスをオンにすると、
インフラベースオプションが有効になり、20Hz以下の再生が可能になります。
ARTの動作範囲は20Hzまでなので、20Hz付近に乱れが出ることがありますが、大きな問題ではありません。
各サブウーファーのサポートレンジの下限は聴感で調整してください。
サポートレンジの下限が動かせない場合、他でその帯域が使われているためです。
うまいことやってください。
サブウーファーが無い場合は、最も性能の高いメインスピーカーのペアをサブウーファー代わりにサポートスピーカーとして出張させて下さい。サポートレンジの上限は80Hzに設定し、下限は調整してください。サブウーファーを使用する場合は、上限150Hzまで使用可能です。
LFEグループ設定
サブウーファーの全てのサポートグループをオンにします。
必要に応じてメインスピーカーをサポートに追加します。
1つずつオン・オフしてスロットに書き出し、REWでLFEスイープを再生して問題が無いか確認します。
検証が難しい場合は、デフォルト設定のままで問題ありません。
メインスピーカー調整
私はサポートスピーカーを控えめに設定するのが好みなので、その方法で説明します。
Group 1 (L/R)、同じサポートスピーカーのGroup 1を有効にすると左右で相互にサポートします。
サブウーファーは全てのサポートを有効にしてOKです。
それ以外のスピーカーは、デフォルトで多くのサポートがオンになっていますが、オフにします。
Group 2(センター)のように対になるスピーカーがない場合、全てのサブウーファーのみ有効にします。
Group 3以降は対のスピーカーがある場合、Group 1 のように、対が無い場合Group 2のように設定します。
ターゲットカーブ調整
全チャンネルに同じ低音ターゲットカーブを適用します。
+2 / +3 / +4 など複数パターンをスロットに保存し、最も心地よいものを選びます。
一度カスタムカーブを作って保存しておくと、一括ロードが可能で、全チャンネルを一度に変更できて便利です。
3スロット保存できるので、低音だけ異なる設定を用意しておくと、ソース・音量・気分で切り替えられておすすめです。
Enjoy your ART. 🎶
サポートレベルやサポートレンジは自由に調整できます。
サポートスピーカーのオンオフも気軽に試してみてください。
こだわりたい人は……ようこそ沼へ。(私はやりませんがw)




コメント ※編集/削除は管理者のみ
kawausoさん、
少し遅レスですけど、4連報でのDirac Live ARTのレポート有難うございます。
ついにデノマラにARTが導入できるようになったことは、DracLiveファンとしては嬉しい限りです。少し残念なのは、拙宅のMonoprice HTP-1にはまだ導入予定が無いことですね。テストはしているとの話がウェブではありますので、そのうち導入可能になることを楽しみにしています。
2chファン(オーディオの正統派の方々)には補正はご法度なのかもしれませんが、このレポートにあるように2chにも効果的なARTのような画期的なものが出てくる時代になると、2chファンの中にも、AVプリを入れてARTを使う方々が出てくるかもしれませんね!
拙宅ではDirac Live DLBCで周波数のフルレンジで補正しています。低音のみの補正もARTを入れると良いのかもしれないので、ARTが導入で来た際には試してみます。それと、測定のマイクをスタンドなどで固定する方法は、私も絶対お勧めです。
JBLのエヴェレストの補正後残響特性は、補正した低音も素晴らしいけど、それに匹敵する元々の中高域の特性も素晴らしいですね!
Tomyさん
AVSを見ると、アルファ版のテスターもいるようだし、HTP-1でもそのうちARTが使えるようになりそうな雰囲気ですね。ただ、正式リリースまではもう少しかかりそうです。
今回のARTでは、異なる性能のサブウーファーをメインスピーカーも含めて見事に統合してしまったことに本当に驚かされました。さらに驚いたのは、3台のサブウーファーを1台に減らしても、少し雰囲気が変わるぐらいで、音質が低下したとは殆ど感じられなかった点です。Tomyさん、もしかすると追加サブへの投資は必要ないかもしれません。チャンネル数の悩みも解決するかも(笑)。使えるようになったら、ぜひ実験してみてください。
S9900の中高域は本当に気に入っていますね。MiniDSPでPEQを使用できるようにしましたが、普段はトーンコントロール的に−1 dBのシェルフを入れているだけです。
以前に、KEFとJBLのどちらが良いかお話しましたが。――まさに“フランス料理が好きか、懐石料理が好きか”の違いのようなもので、どちらも完成された味わいだと思います。