日記のタイトルは、
1988~1992季刊「ステレオサウンド」誌に
『ぼくとジムランの酒とバラの日々』というタイトルで連載された記事の
単行本です。知らない人はいないであろう菅原正二氏です。
恐らく別方向で有名なショップ「プロケーブル」の
営業?の方向性に影響を与えたのは菅原氏の記事だろうと推測しています。
■スピーカーの能率
■スピーカーケーブルの焦点合わせ
ジャズ喫茶「ベイシー」の選択、
COUNT6[26]「スピーカーケーブル狂騒曲」から一部分だけご紹介。
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ただ、ケーブルの”長さ”であるが、短い方がいいと聞いたので、二〇年前の開店する前に、一度、プレーヤー、アンプ類を全部、スピーカーの至近距離にセットして最短距離で実験をしてみた。
アンプにもよるし、スピーカーにもよるだろうが、「別に」という音だった。それより、むしろタイトでスケール感に欠ける音がして、ぼくの好むルーズでスケールの大きい音がしなかったのを憶えている。
それで、現実的にはスピーカーから離れた位置で仕事をしたいのだし、適当に、必要なだけ引っ張ったら、まあ、結構イケル音がした。
~中略~
最初に断ったら何も書くことがなくなるからだが、さらに図々しく書くと、スピーカーケーブルは、わずか数ミリつめただけでも音は変わる。OTLアンプの宿命なのか、ジムランのアンプの、よくいえばデリケートさなのか、さらにそれを感じ取って音に出すジムランのハイエフィシェンシー(高能率)スピーカーの凄さなのかは知らないけれども、パワーアンプの出力端子に差し込む、約五ミリのビニールカバーをひっこ抜いただけで音の変化が感知されるのだ。だから、気持ちはわかるが、調子のいい時は何年間でも線の新しい部分を出したりすることは、止めた方がよい。
ぼくは、この”数ミリ”に取りつかれて何年間か、左手の人差し指をギザギザにして暮らした。ニッパーを使わずに、カッターを使って左手の人差し指の腹の上でビニールケーブルを転がすからである。切り目を入れたビニールカバーは真っすぐ抜かずに、ひねりを入れて抜くのがお利口さんだ。芯線を指で直にひねると手垢や汗でサビを早めるからだ。
~後略~
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ジャズ喫茶「ベイシー」の選択、
COUNT3[11]「JBLプロジェクトK2登場!」から一部分だけご紹介。
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JBLのプロジェクトK2という、同社の最新作のスピーカーであるが、「ステレオサウンド」の紹介記事を眺めていたら、久しぶりにそそられるものがあって、一度聴いてみたいという気にさせられた。
そそのかされたことのひとつに、このスピーカーシステムの”高能率化”、というのがあった。
ジム・ランシングのスピーカーというものは、そもそもが、0.001ワットでも馬鹿デカイ音がしますヨ、というのがセールスポイントでもあったので、六〇年代以降の能率をギセイにしたようなスピーカーは、ちょっとどうも、とぼくは思っていた。
スピーカーの能率は、高い方がいいに決まっている。
「楽器」の音が、少しの力で大きな音がするようにハナから出来ているという点を見習いたい。
それとこれとは話が別だと思う人は別な道を歩めばいい。
楽器の音は、いくら大きな音がしたからといって、”力”はそんなにかかってはいない。
「ドラム」にしてからに、名人の手にかかった場合、軽く叩いてあの音だ!
ピアノは、どんな”力持ち”が叩いたところで鍵盤の運動量は世界共通で、たかだか一センチ程度しか動かない。
ヴァイオリン、チェロに至っては馬のシッポの毛でこするだけだ。でも物凄く良く”鳴る”。
”鳴る”音を”力”と勘違いして認識すとトンチンカンなことが起こる。
オーディオでもっとも難しいもののひとつは、音の”性格”を強くしないで、大きな音を出すことだろう。
真剣に考えると、これは凄く難しい。音は”パワー”だといいはる人がいたら、林に入って日がな一日セミの声を聴くがいい。悟るか悟らないか、セミの声は相当に大きく、ウルサいが、セミにそんなに”パワー”があるかしら??
能率の低いスピーカーは、アンプから送られた強い力にしか反応しないから測定不能に近い信号は、まあ、なかったことにしていただきたい、といった鳴り方でお茶をにごしてしまうのではないか? シラケるわけだ。
で、”K2”であるが・・・・・。
ロングヴォイスコイルを止めて、ショートヴォイスコイルに改めたとか、コーン紙をカーブをD130に似せて(?)浅くしたとか、各所に明らかな反省の色がうかがえる。
それに、法外な値段をつけておきながら2ウェイでまとめた度胸を買おう。
ジムランの原点ともいうべき”001”システムは、D130と175DLHの2ウェイであった。
しばらくして、製品化されたK2がようやく一組届いたという電話をもらったぼくは、「ステレオサウンド」の視聴室に聴きに行った。
「ステレオサウンド」の若い編集者O君というのは気仙沼出身で、高校生の頃から「ベイシー」に通っていた好青年である。スジも、いい。オーケストラの指揮もやる。
ぼくの行ったその日は、昼から「大型スピーカーシステムの視聴会」で彼氏はクタクタ。
夜にそれが終わると全部片づけて、ぼくのためだけにK2のセッティングを休む間もなく開始した。開始するにあたって、気が散るから外に出ててくれというので、ぼくは浅沼予史宏君(オーディオ評論家)らと近所の六本木交差点付近の焼肉屋で待機することにした。ただ待機するのも何だから焼肉を喰った。焼肉を喰ったらビールが飲みたくなった。ビールを飲んだらオーディオ談義に花が咲き、O君のことをすっかり忘れて二時間も経った。待機にもホドがあると思って、
「そろそろ、O君いいかな?」
とぼくがいうと、
「ボチボチでしょう・・・・・」
と朝沼君は少しも急がない。
視聴室に舞い戻ると、待ちくたびれて寝てしまったのではないかと思われたO君、どっこいギンギンでまだ調整に余念がない。
時計の針は夜中の一二時を回っていたが、
「ボチボチ行きましょうか・・・・・」
と朝沼君がO君にゆっくりと合図を出す。
レコードプレーヤーに、ぼくはリン・ソンデックのLP12を所望したのだが、朝沼・O君の両君が大変気に入っているロクサン/ザクシーズを是非聴いてほしいというので、それが用意されていた。カートリッジはシュアーのV15/TYPEⅢで、スタイラス(針)はぼくが「ベイシー」で使用中のものをひっこ抜いて持参した。他にあと二本、友人の伊藤八十八君が、
「取っておきのを・・・・・」
といって嬉しそうに持って来てくれた。
ぼくの持参した二〇枚ほどのレコードの中には、彼の制作したものも何枚か入っていた。
やがて、リー・モーガンの『キャンディー』がK2から鳴り出した。割と情けない音だったのでヴォリュウムを上げると、プツンとパワーアンプの保護回路が作動して切れた。
K2は、トータルインピーダンスが3オームしかなく、低インピーダンスに弱いアンプはまず使えない模様。「ステレオサウンド」の視聴室の隣の物置には、売るほど物が山積みされているから少々のことは平気である。ゼイタクさせてもらって、最終的にはスレッショルドのA級モノーラルアンプが安定したドライブをしてくれた。K2はアンプにも金が掛かりそ。
~中略~
夜中の三時もいい加減過ぎた頃、オシマイに、スチューダーのCDプレーヤーの音を聴いてみたいとぼくがいったのが間違いの元だった。朝沼君が選曲してかけたのであるが、信じ難い音響エネルギーが、コンパクトなK2から吐き出された!!
強烈な音の放射であったが、CDはウーファーを壊さない。
K2のコーン紙は大騒ぎもしないで、もちろんスピーカーシステム全体もいたって静かなたたずまいで涼しい顔をしてすまして立っているかのようで、それは不思議な光景であった。
美しく仕上げられた、極めてコンパクトなスピーカーシステムから、ステージに山積みされたPAスピーカー群から出ているような強烈なサウンドが飛び出してくるだ!!
これはもう、好きだの嫌いだのいわせない一種の快感であり、JBLの血統の凄さをまざまざと見せつけられて「感心」してしまった。
<音>はやっぱり”パワー”か!?
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スピーカーをハイパワーで飛ばすのも、
アンプのプロテクションが作動するのも、
普通なんですね(^^
少し前に購入したmarantz AVアンプ NR1711 は
スピーカー未接続でボリュームを最大近くにまで上げていくと
一瞬不安定になって次の瞬間スピーカープロテクションが作動します。
Fostexのサブウーファー CW-250Dも、
ウーファーがサランネットを突き破って飛び出す前に
ちゃんとプロテクションが働いて沈黙します。安心。
ジャズ喫茶「ベイシー」の選択 は
電子版(Kindle)も販売されています。
面白そうだと思ったら購入してみて下さい。
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