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音を語る

日記・雑記
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私は、家のあちこちに古いステレオサウンド誌を置いていて、ちょっとした空き時間に目を通しています。最近のものは何度も繰り返し見ることはほとんどありませんが、2005年頃までの号は今読んでも結構楽しいのです。

最近、No.150(2004年春号)を読んで、あの頃のオーディオ業界とオーディオ誌の充実ぶりにあらためて感心し、同時に最近のお粗末さに落胆しました。

日本のオーディオ全盛期は、1970年代後半から80年代だとよく言われます。確かに多くのメーカーが参入、多種多様な機器が世に出ました。オーディオ誌や評論家の陣容も充実していました。一方、今の視点からは、音場や音触(テクスチュア)対する意識が希薄で、音を語るボキャブラリーも全体的に乏しかったと思います。

No.150が出た2000年代初頭は、CDが充実、SACDもそれなりの地歩を固めた頃で、記事を読むだけで音のイメージが掴めるレベルまで音のボキャブラリーが充実してきたことが分かります。記念号で特集記事が盛り沢山なのですが、「特集:世界のハイエンドスピーカー、その多彩なる音響美」が特に興味深いです。

この特集では、時代を代表する16モデルを、菅野、傅、三浦、柳沢の4氏が同時試聴し、試聴後に座談会形式でかなり真剣な議論をしています。どのスピーカーに関する話も興味深いのですが、ジャーマン・フィジクスThe Carbon IIの記事を紹介します。私自身がジャーマン・フィジクスを所有し、理解していることもあり、評論家諸氏のコメントに大いに感心し共感しました。

こんなに長く引用して大丈夫かな?まあ、出典も明記しているし良いでしょう? 相当長いです、スミマセン。

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三浦:何だかこのスピーカーはスタジオ録音のディスクでも、指定席のいいところで聴いているライブのような感じが得られるというのは、やっぱりこの設計の大きな特徴なんですね。

傅:そう本当にライブ特有のよさのようなものがある。

菅野:このスピーカーには大きな二つの特徴があるわけです。それは無指向性だということと、それにこのDDDというユニットが持っている特有な音のテクスチュア。この二つの特徴がものすごくはっきりしている。とくに僕はDDDユニットのテクスチュア、これでなくては出せないテクスチュアに惚れ込んでいてね。今日はそれが完全に出し切れたとは言えないのだけど。

柳沢:振動板の面積が広いためかエイジングには敏感のようで、今日はややエイジング不足の感じもあったけど、でも特徴と魅力は十分に納得させてくれた。

三浦:音場型が音像型かと言ったらやっぱり音場型なんですけど...

菅野:それはもちろん音場型ですね。

柳沢:完全に音場型だけなのだけど、ただし音像が非常にいい。その情景にまず惹かれる。

三浦:音像が希薄にならないところが凄いですね。

柳沢:形がしっかりと出て、かつ中味がいい。

三浦:しかもイリュージョン的な、独特のちょっと半透明な雰囲気がありますね。

傅:指向性がまんべんなくて、周波数的なつながりだけじゃなく、指向性的なつながりもスムーズなんですね。これはこのユニットの凄いメリットですね。例えば横に動いて聴いても、そこにステレオがありますからね。つまり音に特有のライブネスがあるんです。だから活き活きしていて、本当に生々しい。

柳沢:よく音像がリアルと言うと、それを切り絵的なリアルさと思われかねないから、この再生には何か他の言い方をしなくては、と思ったりする。

菅野:実際の音像というのはそんな切り絵のようにエッジがシャープじゃないわけでね。

柳沢:でもオーディオでは、ついそれをリアルって言ってしまう。あれとは正反対で、しかも実在感があるんだから、何か他の言い方はないかとね。

三浦:このシステムの低域はコーン型ウーファーによるものなんですが、やはり無指向性のパターンで拡がっていて、上のDDDと非常によくつながっているんです。

柳沢:ともに無指向性であることと、それにDDDがピストニックモーションの発音ではなく、独特のベンディングウェイブでの発音であることが、何かいい結果を生んでいる感じがするんです。

菅野:ただ僕は、ウーファーを使わずにDDDだけで全帯域をシンプルに出している、ユニコーンというモデルのほうがもっと好きなんだけどね。

三浦:低域をバックロードホーンにしたフルレンジ型のモデルですね。

菅野:低音は多少足りないけど、あのほうがDDD特有のテクスチュアがもっと聴ける。

傅:でも、このウーファーも音の遅れを感じさせたりしないから...

三浦:僕がかけた「ケヴィン・マホガニー」のときのあのウッドベースも、リズムの刻みがよかった。

菅野:そうだねいい感じだった。

三浦:この音は柔らかいが硬いかと言われたらどっちでしょうね。僕は「シフ」のピアノなど心地良い硬さがあったように感じたのですけど。

菅野:柔らかいか硬いかに強いて分けたら、精巧な硬さがあります。このピアノの情報量はもの凄く多いですね。そしてタッチは精緻なんだけど、そのテクスチュアは硬くない。とにかくこのピアノはダントツだった。「シフ」のピアニストとしての天才ぶりが音になっていたし、これしかないという感じのテクスチュアが聴けたでしょう。

傅:カチッと出ながら聴こえ方は硬くない。私にとっては説明しにくい音です。例えば、エッジを利かせていないのに精密感がきれいに出ますね。とても緻密に。それから菅野先生が言われたテクスチュア。耳当たりは柔らかいのだけど凄くリアルでスピード感があるんです。

菅野:スピードはあります。それはDDDの1つの特徴でもあるから。

傅:普通スピードっていうとカチンカチンっていう感じじゃないですか。それとは全然違いますね。これは面白い。

柳沢:僕はライブ録音を聞いてみたいと思って「フォン・オッター」の歌をかけてみたけど、そのライブ感の中での声のよさ。それから菅野さんがならした「ホルツマイアー」もそうなんだけど、あの声の人肌感が独特の魅力なんだ。

菅野:そうそう。割合に至近距離で聴く人間の声にすごく近い。もう、口腔の中の...

柳沢:ええ、口の中のこもり感が出てきてね。

菅野:そういうのが全部出てくるんだ。

三浦:ある種の潤いもある感じなんですが。 柳沢:潤いはあるさ。人肌感があるんだから。

菅野:傅さんが、説明しにくい音と言ったけど、凄く分かる。表現しにくいね。

傅:説明しにくいです。 それと100Hzからちょっと上をDDD一発でカバーするというメリットも大きい。楽器や声って、どうしても帯域によって伸び縮みするじゃないですか。音像が上下に。それが全くないんです。僕がかけた「ジュリア・フォーダム」って女性はゴスペルの歌い方だから胸を鳴らすんです。だから普通のマルチウェイスピーカーでは、音声がスーッと上がったり下がったりする場合があるけど。

菅野:それから、このスピーカ-はライブな部屋で聴くと凄くいい効果が出るんだ。

柳沢:そうだろうね。ライブな部屋の特徴を効果的に活かすのも無指向性の魅力だから。

菅野:まるで変わっちゃって、本当にいい雰囲気になるんです。

傅:聴かせ方が、気持ちいいわけですか。

菅野:そういうことなんだね。

柳沢:あるいは、そういうライブな部屋で効果を出して楽しむのが、このスピーカーの最も価値のある使い方と言えるかもしれない。特有の空気感のようなものがもともとあるのだから、それをもっと効果的にね。 傅:ああ、それは言えそうですね。

菅野:だからある意味では、オーディオをちょっと離れて絶対感覚的に言うと、この音はあまりスピーカー的ではないんだな。

柳沢:そう、スピーカー的ではない。それはまたオーディオ的ではないとも言えるんだ。誤解されると困るんだけどね。

菅野:そうなんだ。僕がずっと育ってきたオーディオ歴の中で、やっぱり無意識にスピーカーの音に切り替えて聴いてきたと思う。それはいい意味でも悪い意味でもね。ところがこのスピーカーはその切り替えを必ずしも必要としない。

三浦:なるほど。

菅野:特に僕はさっきのピアノでそう感じたわけです。

柳沢:僕もピアノで感じたのだけど、傅さんがスピード感って話をしたね。普通、オーディオでスピード感というと、ピアノのタッチの立ち上がりなどのよさを言う。でもそれは、スピーカーの振動板の立ち上がりがいいっていうイメージで言ってしまう。いや、実際にそう感じさせるわけです。ところがこのスピーカーで感じる立ち上がりのよさは、振動板を意識させない、空気の立ち上がりなんです。

菅野:そう、マスレス(無質量)みたいなね。マスレス的レスポンス。

三浦:それがベンディングウェイブのメリットなのでしょうね。

柳沢:簡単にメカニズムと結びつけて言うのが好きでないけど、結局はそれと無指向性の成果かもしれない。そして、こういうのが目の前からスピーカーが消えると言う表現にふさわしい音かと...振動板の動きを意識させないのだからね。 でも、そうなってみるとこれが妙にオーディオ的ではないと思ったりするのを、どう考えるべきか。

菅野:結局、これからオーディオにとっても、いろいろ考えさせる内容を持った、きわめて興味深いスピーカーということだね。

傅:その通りだと思いますね 。

  • 「ケヴィン・マホガニー」 You got what it takes : Kevin Mahogany
  • 「シフ」 Andras Schiff in Concert – Robert Schumann : András Schiff
  • 「フォン・オッター」 Schubert Lieder : Anne Sofie von Otter, Thomas Quasthoff
  • 「ジュリア・フォーダム」 Julia Fordham : Julia Fordham

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如何でしょうか? 最近のオーディオ誌の音質記事と比較すると、相当レベルの高い良い議論だと思うのですが...

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