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咲き初めの余情:ポール・ルイスと師の対照

日記・雑記
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数日前、久しぶりの本格的な雨の中、車を走らせていました。
桜の並木道を通ったとき、雨にけぶる枝々が
なんとなく桜色がかって見えて、
気のせいとは思いながらも
「あぁもう春も近いのだな」と感じたのですが
そんな今日このごろ、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

ポール・ルイスの新作は
ほぼ同時代(19世紀初頭)に作られた
2つのピアノソナタをとりあげています。

1つはウェーバーの第2番で
もう1つはシューベルトの第9番。
ルイスはこれまでにシューベルトは数多くの録音をしていますが
ウェーバーは初めての取り組み。
おそらくはロマン派の咲き初めの美しさのようなものを
描きたいと思ったのかな~
流麗なピアノで、するすると耳に入ってきます。
前作のハイドンとくらべると、いくらか溌溂としたトーンは
抑えられていて、より中庸というか
決めるところはキメるが、
より楽曲全体の空気感に重きを置いているかのような印象を受けました。
もう少し踏み込んで言うと
空気をより響かせようというピアノなのかな。
ちょっと霞んだもやのような中でピアノが響いている感じ。。。
ある意味、すべてを描ききるのではなく
聞き手の想像力の働く余地を残している気もします。

なぜこのような書きっぷりになったかと言いますと
彼の師匠であるブレンデルのピアノとの聞き比べをしたからなのです。
特にウェーバーのピアノソナタは好対照といえるのではないでしょうか。

全編に渡って、ブレンデルの技巧が隈なく配置されていて
先にルイスのピアノを聞いていた私は
ちょっとのけぞるくらいの驚きを感じました。
時に同じ曲の演奏とは思えないほどの違いがあります。
細かい音の強弱、テンポの調整、装飾的な部分への愛好ぶり等々
アルバムのブレンデル本人の筆によるライナーノーツ同様
彼の研究熱心さ、博識ぶりがよく表れた演奏で
でもそのアイデアをよくこれだけ破綻させずにまとめているな~と
ホントに感心してしまいました。。。
満開の桜というと、おおげさかもしれませんが
いや、これは名演かもしれないと思わされました。

ルイスがこの師のピアノを聞いていないわけがない。
私は推測するのです。
だとすれば、師と同じアプローチはとるまいと。。。
で、こういう演奏になるのか~
でも、なかなかに心憎い弟子ではないですか。
ブレンデル先生はどんな顔をして、このルイスの演奏を聞くのだろう?
なんだか感想をきいてみたい気がします。

そう思いながら、今作のアルバムジャケットを見直すと
口元が見えないルイスのポートレイトも少し気になりだします。
目の表情は、どこか微笑んでいるようにも見えるし
まっすぐ前方を注視している真剣な感じにもとれる。
あえてそれを狙っているようにも見えるし
いや~自然にそうなっちゃったんだよね~という
ユーモラスな語り口の彼を想像させるような写真にも見える。
そんなあれこれを思い描いて
今晩も2人のピアノを聞いている私なのでした。

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