キューバの春:アルフレッド・ロドリゲス&ペドリート・マルティネス『デュオローグ』によせて

日記・雑記
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昨シーズンのセ・リーグの首位打者は誰であったか?
ご記憶でしょうか。
中日ドラゴンズのダヤン・ビシエド。

2016年来日早々、3試合連続本塁打でデビュー。
昨シーズンはイチローの持つ月間最多安打48に
あと一打届かなかったものの、セ・リーグの記録を塗りかえました。
2008年5月にいかだに乗ってキューバから亡命し、
フロリダ半島に上陸したというエピソードを
ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
「キューバの至宝」と称され、彼の尊敬するプレーヤーである
オマール・リナレスは、かつてドラゴンズに在籍していました。
一度だけリナレスのプレーを生で見たことがあって
特有のフルスイングは強い印象として残っていましたが、
日本の投手の攻めに適応できず
残念ながら、往年の雄姿を日本で見せることはありませんでした。
ビシエドの来日当初の印象は、ベビーフェイスな風貌もあってか
そのリナレスと重なるものでした。
でも昨シーズンの彼は明らかに違っていました。
広角に強烈なライナーを打つ持ち味を活かし
早打ち・ボール球を振るという欠点も徐々に改善されて
家族も日本に呼び寄せ、
日本流の野球に高い適応力を発揮してくれました。

そんなことをふと語りたくなったのは
キューバ出身のミュージシャン2人によるデュオアルバム
『デュオローグ』を聞いたからでした。

ピアノ・キーボードがアルフレッド・ロドリゲス
パーカッションがペドリート・マルティネス
2人ともハバナの出身で、
ロドリゲスは、クインシー・ジョーンズに見いだされ
今やその片腕ともいわれるほどの存在なのだそうで
このアルバムのエグゼクティブプロデューサーには
クインシーの名がクレジットされています。
マルティネスは、個人的にはハーリン・ライリーのアルバム
『New Direction』での演奏が記憶に新しいところですが
あのアルバムの音楽的魅力は
彼のプレーにその多くを依拠するものであったと、今でも思っています。

このデュオアルバムの魅力は
2人の異なる個性が
互いの新たな魅力を引き出している点にあると思います。
両者とも基本的には細かく音数を刻むキューバ音楽の持ち味を活かした
その系譜上にある演奏ですが
どちらかというと重くシャープなマルティネスのパーカッションと
軽やかで明るく、色彩感豊かなロドリゲスのピアノ(キーボード)が
不思議にマッチしています。
日本盤ライナーノーツによれば
ロドリゲスの作ったメロディーラインに
マルティネスが歌詞やリズムのパターンをのせて
曲を完成するという手順で、曲作りが行われたとのこと。
このやり方は成功しているように思います。
やはりパーカッションがうまくピアノの魅力を引き出しています。
また逆にピアノのメロディーラインが
新たなパーカッションのフレーズを誘い出しているともいえそうです。
アルバムの録音は、いろいろトラックが重ねられていると思いますが
それでもなお基本的なデュオの骨組みは
よくわかるような構成となっているので、
そこは聞きどころの一つといえるでしょう。

それにしてもロドリゲスのメロディーはいいな~
デビュー当時のジャズ的なフォーマットでの演奏より
私は断然、今作のようなセンスの彼の演奏を買いたいです!
いちばんのお気に入りである
M4の「Cosas del Amor」や、M8の「Jardín Soñador」など
早春の陽光にきらきらと輝いているせせらぎを思わせるかのような、
実にフレッシュな情感を聞く者に与えてくれます。
このあたりの彼の変貌ぶりに影響を与えているのは
メンターとしての大御所の存在ではないかと
なんとなく私は推測してしまいます。

亜熱帯のキューバにいたころには、わからなかったかもしれない
「春」の感覚を、この2人が醸し出しているとしたら
アメリカに渡ったことは大成功だったといえるんじゃないか。。。
「日本野球」に開眼した同郷の選手のことを思い起こしながら
そんな思いにとらわれている私なのでした。

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