がんばれ!アナイス:Anaïs Reno『Live at PizzaExpress in London』

日記・雑記
日記・雑記
Sponsored Link

ここ数日、梅雨のはしりというんでしょうか
かなり蒸し蒸しした気候に変わってきて
来るべき猛暑に備え、バテないからだづくりをしておかないとな~
などと思っている今日この頃ですが
みなさんお健やかにお過ごしでしょうか。

今晩は、生意気なことばっかり言う娘がちょっと大人になって
親父とも普通に話してくれるようになったとき
「そりゃあやっぱりうれしいわな」と思うんじゃないかと
そんな妄想をたくましくしたアルバムをご紹介します(笑)

アナイス・レノは8歳でステージデビュー、
16歳でエメット・コーエンを迎え、彼のトリオで
エリントンとストレイホーンの作品を歌ったデビュー作を録音
現在20歳のジャズシンガーです。
そしてつい最近、ロンドンのピザ・エクスプレス・ジャズ・クラブでの
ライブを収めたアルバムをリリースしたところです。

「Anaïs Reno – Live at PizzaExpress in London」
https://www.youtube.com/playlist?list=PLFhRILFkJ_Lgbevg1dx28UhZYydloQTFB

やや硬質だけど、つやもある歌は上手いと思います。
でも同時代の大物たち、
たとえばダイアナ・クラールとかカサンドラ・ウイルソンとかのように
一聴してはっきりわかるこの人の歌声はこうなんだっていう
大きな特徴があるかというと
ケレン味の少ない素直すぎるくらいの歌声で
父親が元オペラ歌手ということもあり
声楽のレッスンも受けているので
一度アリアくらい歌ってほしい感じさえします。
ジャズという括りでいえば
声を張ったときは、ちょっとリンダ・ロンシュタットが
ネルソン・リドルと組んで出したアルバムの時に似ていなくもない。
また若いころ(1940年代)のペギー・リーを私は愛好していますが
そんな雰囲気もあるし、
ジョー・スタッフォードの「Jo + Jazz」なんかの
やはり癖の少ない歌唱法を思い起こしたりもしました。。。

でも、この娘はこの歌い方でワン&オンリーを目指せばいいのかな
と今は感じています。
端正な歌いぶりをもっと磨いて
現代的なS&SWっぽい歌い方のジャズシンガー
みたいな道を切り開いていくってことかな~と。

このライヴアルバムでも、
たとえばコール・ポーターの「It’s De-Lovely」や「At Long Last Love」
なんかは、もっとスインギーに歌うこともできるんだろうけど
朗々と歌い上げる感じの方が印象として強く伝わってきます。
あえてテンポを上げないで、歌唱をじっくり聞かせるって感じでしょうか。

じゃあ、そんな親父目線の物言いに対して
彼女自身は自分の歌手としての在り方について
どのように考えているか?
この最新アルバムに寄せた彼女自身のライナーノーツをのぞいてみると
その冒頭でこんなことを言ってます。

「私が歌う曲に関しては、ジャズであること、何らかの暗さを帯びていること、
そして私の日常生活をすべて包み込むものであること、そうでなければ
私の芸術的エネルギーには値しないという特別な考え方がある」。

なんかちょっと生意気な感じしません?
「私はジャズを歌うために生まれてきた特別な存在なの。
それの何が問題かしら?」的な。。。
それほどの歌手か?っていうツッコミはあえていれずに
もう少し読み進めると、その物言いは反転してしまいます。

「今、19歳の(かなり年をとった!)私は、今日聴きたいと思う曲を見て、
かつての私の態度を笑う。(中略)このような極端なものを手放すことは、
最近の私の人間的成長において重要な役割を果たした。
自分のアイデンティティを、自分で決めた理想に賭けるのはあまりにも簡単で、
それに異議を唱えるような考えに対しては、
それを武器として振りかざしてしまう」。

19歳の娘に「かなり年をとった」っていわれるのもあれなんですが
それだけ大人になったとアピールしたいのでしょう。
このアルバムではビリー・ジョエルの「And So it Goes」を
カヴァーしています。
以前の彼女であったら、あり得ない選曲だったのでしょうし
この大人の情愛の機微を若いながらも年齢なりの情感をこめて歌う姿は、
逆に初々しい感動があります。
猫背気味の姿勢で歌うその姿や
ほんとは内省的でシャイな人柄なのだろうなと思わせるしぐさなども
かえって好感を呼ぶ要素となっている気さえしてきます。
もうちょっと彼女の発言におつきあいを。。。

「ジャズの基本は、他のミュージシャンに対して心を開き、
積極的に反応することにある。
ジャズの根幹は、音楽そのものだけでなく、
他のミュージシャンに対してもオープンであり、
反応的であろうとする意志に基づいていることを考えると、
さまざまな可能性を探求するためのこの自己許容は、
演奏環境、特にライブ・レコーディングにおいては極めて重要である」。

「自己許容」、つまり「理想はあきらめたわけじゃない」という宣言ですね。
親父としては「うん、そうだね、がんばれ!」くらいしか言わないんだろうな~
でもこの時点で、私自身、そういう彼女の志の高い歌声に
幾分かは魅了されていることにも気づくのです。。。

そんなわけで、このアルバムの45回転2枚組のLPを入手し
ここ最近のヘビロテとなっている私ですが
デビューアルバムもエメット・コーエントリオを中心とするバッキングにのせて
張りのある歌声を聞かせてくれていて、おすすめなんであります。

コメント ※編集/削除は管理者のみ

  1. ゲオルグさん、こんにちは。

    >声を張ったときは、ちょっとリンダ・ロンシュタットが
    ネルソン・リドルと組んで出したアルバムの時に似ていなくもない。

     リンダ・ロンシュタット嬢がネルソン・リドルと組んだ作品を全て持っているので、今回、興味深く拝見しました。機会があったら入手し聴いてみたいと思います。

     素敵なコンテンツのご紹介ありがとうございました。

    • たかけんさん
      レスありがとうございます!

      はじめまして、ですよね。いつもディスクや名器紹介、そしてバイク旅のレポートなど愉しく拝見しています。特に「あまちゃん」ロケ地をめぐる旅はとても印象に残ってます。私も前後して、BSで朝、再放送を録画してたのしみ始めていましたので。いまでもちょくちょく食事の時にとりためたものを見返しているぐらいです。

      リンダ・ロンシュタットとの対比は、相当主観的なもので、リンク先のYouTubeを見て頂いて確かめてくだされば幸いです。。。でもリンダさんほど押し出しは強くなくとも、ストレートに歌い上げようとするところは、真っ先に思い浮かんだのですね。よくあるお色気ウイスパー系もすきですが、こういう感じもいいな~と改めて思った次第です。

タイトルとURLをコピーしました