制作サイドから見た24bitの意義

日記・雑記
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コメント欄にてビットレートの意義についての話題が出ましたので、先にビットレートの必要性についての話を記載したいと思います。

個人的には24bitの意義は制作現場でのニーズが大きいとおもっています。アナログで録音、編集するならばこのような問題は起きませんが、デジタルでの編集環境においてADの24bit化は重要だと思います。その理由をこれから書いていきます。

一つの例えとして、ある単一楽器をレコーディングでAD変換してからダイナミクス処理をする際に、16bit(65536段階)から処理するのと24bit(16777216段階)から処理するのでは数値上は大きな差があります。

そもそも整数16bitは領域が狭く、0dBフルの波形であれば65536段階で表現できますが、-6dBするたびに情報量が半分になってしまいます。レコーディングの生データは音割れを防ぐために通常やや低めの音量で録音しますから、-20-40dBのあたりに波形が存在することも珍しくはないです。これが-60dBですとわずか64段階(65536の1/1024)で表現することになってしまいます。音量が下がると16bitでは弱音の表現力がとたんに失われていくわけです。

-24dB 4096段階
-30dB 2048段階
-36dB 1024段階
-42dB 512段階
-48dB 256段階
-54dB 128段階
-60dB 64段階
-66dB 32段階
-72dB 16段階
-78dB 8段階
-84dB 4段階
-90dB 2段階
-96dB 1段階

上のように16bit=96dBです。0dBからみてこれ以下の信号は表現できません。そして16bitでは非常に低いレベルの波形は荒い階段状の情報しか持てないということです。あとからの増幅が大きいほど階段が目立ちやすいということになります。

録音データが16bitでなおかつ音量レベルが低かった場合、あとから音量を上げるとこれがそのまま粗となって出てきます。実際の編集段階では32bit浮動小数点による演算等、16bitよりもかなり高いビットレートで処理をしますが、この段階で情報量が元に戻ることはないです。しかも楽曲は必ずしも単一楽器のみで成立するわけではないので、全パートで編集作業をするとトータルで劣化が積み重なり最終的に無視できない結果となります。デジタル編集では各楽器について音量をコンプ処理(圧縮)しながら編集、Mix処理をするので大抵は何度も演算をします。

録音の元データが16bit(65536段階)では、入れるべき器のCDが16bitであったとしても十分とはいえないのはこのような理由からです。これが24bit素材であれば同じ音量でも256倍の情報量がありますから十分余裕があります。24bitならば-48dBの音量で16bitの0dBと同じ情報量を持ってるわけです。これなら録音レベルが多少低くても、編集で劣化が目立ちにくいですし、16bitの器に入れる際に粗は殆ど見えません。

CDのマスタリングで音量を0dB付近にリミッター処理をする意味合いとして、耳の等ラウドネス曲線による聴感上のトリック(音が大きいとワイドレンジに聞こえる耳自体の特性)を利用するというのが一般的なメリットですが、16bitでの情報量を維持するためにやっているという解釈もできるかなとおもっています。もちろんやり過ぎは抑揚を奪うので良くないですが。

以上はデジタルでの編集のお話です。アナログであればこのようなデジタル劣化は起きませんから、ProToolsの登場によってほぼデジタルで処理するようになるより以前は、フルアナログでレコーディングからミキシング、エフェクト処理、マスタリングまで行なって、最後にADで16bitに変換していたほうが良い結果だったのではと推測します。アナログ特有の劣化があったとしても、良い機材を使用することで無駄に情報量が失われることもなかったのではと思います。

ちなみにフルデジタル編集ではアナログ特有の劣化(引き回すたびにノイズが入る、機材を通すたびに音が変化/劣化する、録音するたびに音が変わる)が起きないですから、デジタルが主流となった以降は全てデジタル領域で編集することが利便性も高く予算も低く抑えられますから、かなり増えたように思われます。しかし現在はデジタルのみで制作してしまう問題点も指摘され、デジタルとアナログの融合、両者のいいとこ取りをしようというのが制作現場では起きているように思われます。デジタルの利点は確保しつつも、必要なシーンではアナログをうまく使って狙った色付けを行ったり、ということです。

■実際のサンプル

44.1kHz24bitWav > Caprice > RME9632Analogで録音

このような接続で、24bitと16bitを録音し、それぞれ同様のエフェクト処理(WAVES CLA-76 > L3-16によるマキシマイズ)をした16bitWavファイルを次に置きます。単一素材のみでの試験なので僅かしか違いはないですが、実際に違いを比較してみてください。

http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/test/test24.wav
http://movieplanet.dyndns.org/~Innocent_Key/data/yohine/test/test16.wav

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