Linn Accurate DSとFidelix Caprice

日記・雑記
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前回予告したDACチップWM8741導入の経緯と比較について書きたいと思います。

■Fidelix Capriceについて

私はFidelix Capriceを比較的初期に購入しておりまして、長い間使用してきました。Capriceは最新のES9018搭載機であったこと、各部の構成もディスクリートオペアンプやオリジナルレギュレータ、周波数精度ではなく低ジッタに特化したクロック内蔵、などと構成を見る限りほとんどこれ以上改善するような隙もなく価格も現実的でしたからすぐに購入を決定しました。

実際にCapriceの音はそれまでのDA10より明らかにクオリティについて優れていましたから概ね不満はない状態でした。概ねといいますのはCaprice唯一の問題点として、内蔵のプリ出力部とヘッドフォン出力部が貧弱なことです。しかしこれについては外部に自作のヘッドフォン兼プリアンプを構築することで十分補うことが出来ましたから問題はありませんでした。

実際ここから先の機材はなかなか求める機能と性能が揃っていなかったり大変高価なこともあって、DAC部についてだけならばCapriceは私にとって最終到達地かなと思っていたのです。

■Linn Accurate DS (WM8741)との出会い

DACチップであるWM8741を意識するきっかけとなったのはLinn Accurate DSです。ちょうどCapriceとDAC部以外ほぼ同条件にて比較する機会がありまして、音の違いをよく比較することが出来ました。

それは個人的にかなりの衝撃でした。おそらく美音系になるのでしょうが、それでありつつ分離や質感を犠牲にしない、十分に高精度であることを感じさせる音です。特に分離や奥行きはいままで聞いたどんな音よりも良く(良すぎて実際よりも強調されているのではという気もします。どうやってそのようなことをやっているのかは不明ですが、そのように聴かせてしまう)、Capriceがそれまでの最高と思っていた私の現実を超える、ありえない音でした。

AccurateDSは古いソースを聞いても、飛び交う砂粒がソースの粗をキレイに見せて(隠して)くれます。しかし新しい録音であってもそれが邪魔にならない、はっきり見通せるのでむしろ心地良い音です。この両立は非常に難しいことだろうとすぐに思いました。音について簡潔に表現をするならば、非常に細かい粒子、砂粒が目の前に飛び込んでくるような音です。それでいて平面的ではなく立体的であり、広く奥まで見通せるわけです。

これはまさに芸術的なバランス、仕上がりに感じられました。「これがハイエンドブランドの実力か」と痛感した瞬間です。この上にKrimaxDSがあるわけですからとんでもないです。自分自身の知見の狭さを思い知ります。

■よくある美音機材のイメージ

それまで美音といえば国産の大手でよくあるキラキラ、もっさりという先入観がありました。厚化粧、味付け過剰でパッと聞きはよいのですが、実際には見通しが悪くいかにもオーディオ的なこってりサウンドというイメージで、決して高性能な音とは両立しないのが大まかなイメージです。

その時実際に同様の環境で某国産大手機材も比較しましたが、美音と言うにはキラキラ成分の粒が大きすぎる(比較してしまうと砂ではなく砂利)、すべての音にその成分がまとわりついてくる等、仕上げの大雑把さが目立ち比較ができるレベルにはありませんでした。

すごく悪く書いてしまいましたが比較さえしなければそれなりの仕上げなのだと思います。でも上を知ってしまったのでとても下品に感じられついつい厳しくなってしまいます。

■Capriceはソースの粗探しになる

Capriceは基本的には良くも悪くも優等生で忠実、ソースの粗もそのまま聞かせてくるキャラです。Fidelixのディスクリートオペアンプは高忠実というキャラではありませんが、ES9018の特性でしょうか、AccurateDSと比較したら非常に主張は控えめで薄味です。

おそらく性能だけならばCapriceのほうが優れているはずです。StereophileでKrimax DSの測定値を見ても優秀ではありますがTHDなどは飛び抜けて優れているわけではないからです。ですからこれは測定値以外の何らかの要素が絡んでいるとしか思えません。(オペアンプの比較の記事で書いたように、測定とは関係ない音の個性が存在する。原因は謎)

正直高品質の録音だけを聞くならばCapriceでも問題はないかもしれません。しかし実際には音源にはそうでないものも多く存在します。古いソースだったり、エンジニアの実力不足や録音編集現場の予算不足等による、高音質とはいえないような仕上がりの音源です。

Capriceではそのような音源に一定の説得力と音楽性をもたせ、上手に聞かせてくれるようなことは基本的にないわけです。これでは音楽を楽しむと言うよりもソースの粗探しになってしまいます。制作側としてはそういうのも悪くはありませんが、多くの音楽を別け隔てなく楽しめるのは明らかにAccurateDSなわけです。これは趣味としてのオーディオ機器に求められる資質だと思いました。

■おわりに

長くなりましたが、WM8741に惹かれたのはLinn DSが採用しているという点が発端です。Webページの紹介をみているとノウハウと技術レベルの差がありすぎますし同じようなものは絶対に作れそうにない(オリジナルフィルタや8層基板設計等)ですが、測定ではない何かがある、その好奇心が自分自身をDAC制作へと向かわせました。

次回は自作DACについてもう少し踏み込んであれこれ書ければと思います。

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