正しい再生とは。部屋とスピーカ軸外特性による不完全性

日記・雑記
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■久しぶりに記事を投稿する理由(前置き不要の方はこの項目は飛ばしてください)

みなさまお久しぶりです。Philewebでの更新は7年ぶりです。もうここで更新をするつもりはなかったのですが、最近SNS間での技術と知識の断絶がおきていると感じたので、あえてここでもう一度記事を投下してみようと思いました。

SNS間での断絶とは、要するに

・Philewebにいる人はPhilewebしかみない
・FaceBookにいる人はFaceBookしかみない
・Twitterにいる人はTwitterしかみない

ということです。他のSNSで掘り下げられている内容も、別のSNSでは未知のままということもあるようです。特に最近は検索やBlogの影響力が低下していると感じていますから、尚更かもしれません。

今回のテーマは表題のとおりです。Philewebではあまり語られていないと思われる情報と視点を提供する機会になればと思っています。(しかし概要程度です)

なおPhilewebでは記事が1週間以内に流れてしまう設計なので、あえて記事を分割して露出の機会を増やす投稿方法とさせていただきます。それでも各分割単位は単独で成立できる内容の記事にします。

■正しい再生の定義

一つの正しさは主観で語る限り定義は出来ません。主観だと最後はすべて好みになってしまいます。でも周波数フラットという基準を定めれば定義が可能になります。その正しさとは以下のような内容です。

1.軸上周波数フラットなスピーカを使う
2.軸上周波数フラットスピーカの軸上にリスナーを配置する
3.反射のない部屋

この条件を満たすとリスニングポイントで聞く音は周波数フラットです。

1と2だけではフラットの条件ではなく、部屋の反射音がある場合は諸々の理由(定在波、コムフィルタ)により周波数フラットにならないことが重要です。なのでスピーカの測定は無響室で行います。

まずはこれが基本です。

でもこの3つはなかなか実現できません。極限の低音から極限の高音まで周波数も位相もフラットで反響が0は理想ですが現実ではありません。でもこういった理想を最初に定義することは重要です。

■部屋の影響

スピーカを普通の部屋に置くと何が起きるか。それは壁からの反射音の発生です。

部屋の反射音はフラット再生を乱す邪魔者です。反射音があると周波数特性を乱しています。なぜなら反射音は時間がずれた波なので位相もずれています。だからスピーカから出た直接音と反射音は干渉して打ち消したり増幅したりします。

定在波もある意味同じようなもので、部屋の形状によって中低域の特定帯域に大きな増幅や減衰が起きるものです。低音と高音は挙動が違うのですがややこしい話になるので、部屋で起きる話として簡単に書いています。(もっと詳しいことは各自調べてください)

無響室や屋外なら反射音も定在波もないので低音も高音もスピーカの素の特性のまま聞くことができます。しかし室内は反射音も定在波もあるからフラットにならないということです。

ということは普通の部屋の場合は反射音も定在波も吸音するほどフラットに近づきます。

補足:無響は音が死ぬ(デッドだから?)という話は一旦おいてください。周波数特性フラットを実現するためには無響特性が必要で、周波数フラットが正しさの基本だという話を書きました。私は好みや感性を否定しているわけではなく、最初から好みの話になると収集がつかないのであえて除外して書いています。

■スピーカの軸外特性

部屋の反射音に加えて問題になるのがスピーカの軸外特性の話です。要するにスピーカの正面まっすぐでなく少し斜め上とか斜め下でどれくらいフラットですかということです。意外と軸上フラットなスピーカでも軸外は乱れているスピーカって多いです。

上に書いたように、部屋の反射音の影響があるとフラットな反射音であっても総合特性はフラットにならないということでしたね。

そうすると、スピーカの軸外特性がフラットからかけ離れていたら、反射音もフラットじゃないわけです。フラットじゃないのに干渉が発生しますので、リスニングポイントでの特性はかなり凸凹になってしまいます。これがスピーカ軸外特性の問題です。

現在の市販のSPなら軸上周波数フラットなスピーカがほとんどですけど、軸外の周波数特性が乱れていたら結局室内のリスニングポイントでは全然周波数フラットではない可能性が極めて高いということです。これは明らかに理想から遠い状態です。

この軸外特性って膨大なデータになります。通常はひと目で良し悪しを測ることは出来ません。しかしスピノラマというまとめ方が出てきました。それは軸外特性を一目で確認できる単一のグラフ化したものです。Preference Ratingはさらにそれを一次元的に落とし込んだ数値です。

データの正確性は、多点の元データ>スピノラマ>Preference Ratingの順番で細部の情報が見えなくなりますが、わかりやすさは逆にPreference Rating>スピノラマ>多点の元データ、となります。

このスピノラマについて掘り下げるとこれだけで記事になってしまうので、私の過去記事から紹介させてください。

・現代のスピーカ測定指標、スピノラマの妥当性をチェック
https://innocent-key.com/wordpress/?page_id=16849
時間のある人はリンク先もぜひ読んでください。かなり長い記事です。ここでは簡単にまとめます。

・スピノラマとは、従来の測定に代わる、一つのグラフで見やすくわかりやすい、しかも統計的裏付けのある測定指標
・軸上特性以外もスムーズかつフラットな程よい
・低音が伸びるほどよい
・ブラインドテストの統計データで、有意差があると示された

このようなものです。重要なのは統計としてもはや個人の好みではなく裏付けがある一つの指標になったということですね。ここでは積極的に語られることはあまりなさそうな内容ですけど、今後業界サイドではスピーカの測定指標として重要な位置づけになる可能性は高いと思います。

■Philewebで関連しそうな話があります

スピノラマに関係しそうな話は平行置きです。たまに平行置きが最高だとか、リスナーにまっすぐ向けるべきとか諸説ありますが、個人的にはどちらが本当に合理的なのかちゃんとした理由は理解していませんでした。なんとなくメーカーの推奨に従っていただけでした。

しかし実はスピーカの設計によってこの2つのどちらが正しいおき方かは変わります。スピーカの軸外特性と部屋の特性の相性次第です。簡単にいえば、

・リスニングウィンドウが軸上よりもフラットなスピーカなら平行置きに近いおき方で、極端な吸音はせず聞くのが望ましい
・軸上がフラットで軸外が乱れているスピーカならリスナーにまっすぐ向けたセッティングで、部屋の反射音はできるだけ吸音が望ましい

となります。リスニングウィンドウとは、軸上、垂直方向±10度、水平方向±10度、20度、30度のスピーカーの周波数特性の平均値です。スピノラマを意識した設計のスピーカだと軸上よりもリスニングウィンドウがフラットなスピーカがあります。この場合真っすぐよりやや平行気味に置くのがより周波数フラットな体験になるということです。

このようにリスニングポイントで周波数フラット体験をする、という理想視点からみるとスピーカによってセッティングの正解の方向性が見えてきます。

もちろん最初からフラット再生度外視ならこのようなことをする必要はありませんが、少なくとも録音を再現するという目的ならある程度のフラット再生の意識、どこをとってどこを諦める、あえて捨てるなどの判断と基準が大事なのではないでしょうか。

もちろん各自にそれを強制はしません。測定せず根拠もなく位相フラットであると主張するのも各自の自由だと思っています。

■部屋と定位のはなし

ようやく部屋と定位の話です。最近話題の360度音源の話と少しだけ関連性が出てきます。ちなみに私が最初に360度定位で驚いたのはこの方の環境でした。

富山県Iさんの超絶定位システム
https://innocent-key.com/wordpress/?p=11159

続きは部屋の話の予定です。SPと部屋をどう対策するべきかの話。ぜんぶ既存ノウハウなのですが、知識の断絶回避のために次回まとめたいと思います。

■参考

最新スピーカー測定技術「スピノラマ」
http://www.audifill.com/essay/eng/0_09.html
私の記事よりスピノラマ自体の説明はわかりやすいかもしれません。あわせてどうぞ。

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