新規会員登録の際、X(旧Twitter)のフォローやメッセージをご確認頂けず、登録保留の方もいらっしゃいますので、Xへログイン頂きご確認をお願いします。

入交邸潜入記−さらなるセッティングアドバイスとプロのご自宅の音体験

日記・雑記
Sponsored Link

実はひょんなきっかけで、WOWOW技術局エクゼクティブ・クリエイターで、日本のAuro-3D録音の第一人者のお一人である、入交氏のお宅にお邪魔してしまいました。過日、拙宅にお見えになった際に、Discをお忘れになられ、ご自宅が私の伊豆の別宅から東京に戻る途上にあるため、伊豆から東京への帰りにお寄りしてお届けにあがったのです。

再会してすぐ、「Online会議と会議の隙間時間が空いているので、ちょっと聴いていかれますか?」と言われたら、NOと言うはずはありません(笑)。ただ予期していなかったので、手土産も持たず、オフ会用Reference音源も持たずに突然上がり込ませていただきました(汗)。

ベランダから熱海の海が見渡せるリゾートマンション最上階のお部屋で、まずは入交さん自ら丁寧にドリップしていただいた、とても味わい深いコーヒーをいただきました。何でも、山梨は都留市にある、全国のコーヒー職人が飲みに来るという、知る人ぞ知るお店の豆を取り寄せておられるとのことで、こういうところにも職人というかエンジニア気質が伺えます(笑)。

コーヒーをいただきながら、前回拙宅にていただいたアドバイスに従い、セッティングの見直しを始めている最中の私は、いくつか実践上の疑問があったので伺ってみました。

1. LRとサラウンドSPの位置関係について
定位感に関しては、人間は前からの音には敏感で、横や後ろからの音には鈍感である。いうまでもなく、一般にスピーカー間の開き角が狭いほど定位感ははっきりするが、60度を超えると人間の耳では定位感が薄れることが知られている。Cが使える環境であれば、LCRは30度ずつ開き角をとるのがベストで、LRからさらに60度開いた位置(=90度)にサラウンドを置く。前述の通り、それ以上開くとLRとSLR間の定位感が曖昧になってくる。サラウンドをLRから60度未満に置けば(いわゆる「かないまる式」)定位感はしっかりしてくるので、後ろからの直接音が無いようなタイプの音楽再生の場合は、その方が良い場合も多いだろう。ただ、サラウンドバックがない場合、または5.1ch再生をする場合で、特に映画音響によくある、後ろから驚かせるような効果を狙う音を正しく再生するには、サラウンドの位置は90度以上開いている必要がある。

2. サラウンドバック・サラウンドハイトの位置について
人間は後ろの音の定位感は鈍感であるため、この両者についてはAuro-3Dで定義されているほどの厳格な位置(開き角度、仰角とも)でなくてもよい。

3. ハイトスピーカー群のスピーカーについて
Auro-3Dによる音楽再生の場合は、基音はフロアのスピーカー群で出し、ハイトスピーカー群にはアンビエント音を振ってあるので、ある程度音色が揃っているものであれば、特にサラウンドハイトやVOGは、必ずしも同じSP、同じブランド・シリーズのものである必要はない(その方がBetterであることは言うまでもないが)。

4. センターSP(ハイト含む)の形状について
私はAuro-3Dは音楽再生に適したフォーマットと考えているので、センターSPは重要で不可欠なものであると考えている。前述したように、LRが60度開いているとすると、Cが入ることでSP間の角度が30度となり、人間が音像定位に敏感なフロントに、より正確に各種音像を配置することができる。オーケストラで言えば、例えば、6台ある第一バイオリンの一台一台を個別に定位させることが可能になる。これがLRだけだと、「第一バイオリン群」としか表現できない。そしてこのような正確な前方の定位感を表現するためには、センタースピーカーにLRと同じものを使わなければダメである。そして前回も申し上げたように、センターだけバッフル面を横長とするような設置法は、音楽用としては使えない。バッフル面の影響で音波の広がり方が異なってくるので、LC間、CR間の音像定位が正しく形成されないからである。各メーカーが出しているセンタースピーカーが横置きの形状となっているのは、スクリーンやテレビモニターをLRの間に置く使い方を想定せざるを得ないからで、各メーカーも音楽再生用としてはふさわしい形状でないことはよく理解しているが、映画の場合はセリフを明確にするという機能があるので、映画用の「必要悪」としてやむを得ず作っているだけである。こうしたユーザーの利用形態を理解している映画音響を制作するエンジニアは、スタジオのセンターSPにこの「必要悪」のSPを入れている場合もある。

5. 前方の6台のSPの重要性について
2chや5.1chソースをAuro-Maticという技術を使って「Auro-3D化」すると低域が増強される感じがすると思うが、これはAuro-3D(Matic)は低域をブーストしているからではなく、前方からの「平面波」を創出できているからである。通常、一台一台のSPは球面波と呼ばれる音波を形成し、特に低域は後ろに回り込む性質が強いために、SP前面における低域のパワーはかなり減衰している。これに対し、Auro-3Dが前方に6台(LCR上下)のSPを規定しているのは、SP間の音波の相互干渉作用を利用して、低域から高域までの「平面波」を作り出し、低域のパワーを後方へ逃がさないことを狙っているからである。ATMOSではセンターハイトがないため、この「平面波」を完璧には作ることができていない。またセンターレスでファントム運用している場合も同様である。前方に正しく6台が設置されていれば、SWなど無くても、十分な(超)低音を出せる点が、Auro-3Dの音響的特徴の一つである。ゆえにここがAuro-3Dの肝だと私は考えている。

とまあ、このようなお話を、コーヒーをいただきながら(もちろん、その後の音楽を聴きながらも五月雨式に伺ったのであるが、読者の利便を考え、先にひとまとめにした)伺った後で、さて、お楽しみの入交邸のサウンドである。

まず、この写真を見ていただくとお分かりのように、実はここはリビング兼仕事場になっています。いくつかのアルバムなどは、「スタジオに行かずにほとんどここで仕上げた」そうです。窓の外の海を見ながらの音響制作の仕事、いかにも綺麗でたおやかな音になりそうですよね(笑)。

<写真>[:image2:]

お部屋は普通のマンションで、特段の工事はしておられないそう。天井の高さも2.5M弱ぐらいで、ごく普通です。床は音響用の吸音カーペットをフローリングの上に敷いておられ、リビングの広さは、20畳ほどだとおもいますが、後方に続き部屋になっている和室があり、その襖をすべて取り払って空間を同じにしているので、もう少し広い感じです。電源なども特段の工事はしておられず、パワーアンプなどもやや古い(笑)AVアンプのパワー部を利用するなど、Philewebの猛者の方々からみれば、拍子抜けするようなシステムかもしれません(汗)。

しかし、Auro-3Dを編集するプロのこだわりはスピーカーにあります(もちろん、プロ用のミキシング機器・録音機器などは山のように右サイドにありますが、写真は遠慮=企業秘密?)。

まず、フロア層には、LCRを含めた7台のGenelecのパワードモニタースピーカー(2Way)とSW1台。もちろんすべて縦おき配置です(笑)。
<写真>[:image1:]
さらに、Eclipseの「目玉のおやじ」の500シリーズを同じくフロア層に7台、ハイトが5台、トップに1台(これだけは一回り小さかったです)。
<写真>[:image3:]
フロア層の7台は、スイッチ一つで切り替えることができ、f特の広いGenelecと、フルレンジで位相が完璧に揃っているEclipseとで、音質チェックには前者を、音場チェックには後者を使うそうです。さすがプロですね。

何曲か、聴かせていただきました。音源は入交さんが録音・編集されたAuro-3Dソフトばかりで、一部市販のものもありましたが、ここで聴かせていただいたのはすべてマスタリング音源のため、市販のものより断然クオリティが高いのです。Auroでは、市販のものは11chまでは96Khz、13chは48Khzのサンプリング周波数が事実上の上限になっているそうです。おそらくBDやダウンロード販売する時のファイルサイズの問題からの上限設定だろうと思うのですが、フォーマット的には192Khzでも制作できるため、マスタリング音源は、13ch・192Khzで作られているそうです(これ、売ってくれないかなあ・・・民生用のAVプリでは再生不可?)。

さて、試聴。そりゃ、まあ、ウチとは差があるわな(イジけるワタシ=爆)。

やはりGenelecと「目玉のおやじ」の組み合わせの方が、音楽的・オーディオ的な快感はより得られます。中低音が充実しているというのは、オーディオ的にはMustですものね。しかもそれが先にお話を伺った「平面波」として迫ってくるので、はっきり言ってウチの方がいいスピーカー、いいアンプを使っているのですが(SWも4台もあるし=笑)、勝るとも劣らない迫力です。圧倒的にウチより上回っているなあ、と思ったのが、上下とも「目玉のおやじ」にしたときの空間感で、広がりと定位。特に音が散りばめられていない空間の静けさの表現は、夜空の星を眺めているときの、星と星の間の、漆黒の闇のようなイメージです。これはまさしく、先に教えていただいた文法通りにセッティングされているスピーカー位置(バッフル面の少ない形状も)と、原理的に位相が狂いようのないフルレンジSPが13台というシステム構成の賜物でしょう。

ほとんどがオリジナル音源だったのですが、二つだけ、拙宅でも再生したことのある音源を聴かせていただきましたので、もう少し具体的に書くと:

<南佳孝 『Dear My Generation』の中の、「柔らかな雨」>

これはいうまでもなく入交さんが録音エンジニアとして関わられたアルバムで、e-onkyoのダウンロード販売では、5.1chソフトとして売られていますが、実は「隠れAuro-3D」となっており、Auro-3Dとしては96Khz/9chとデコードされます(ただし前述のようにここでお聴かせいただいたのは、マスターの192Khz/13ch 版)

この曲は、センターのみにボーカルが入っています。こういう録音は5.1chも含め非常に少ないのですが、LRによるファントムセンター定位とは実体感は比べ物になりません。そこに「口」が一つだけありますから。これはモノラルレコードを楽しんでおられる方なら、よくご存知のことと思います。ではなぜ、市販のマルチソフトにはこのような録音のものがほとんどないのかと伺うと、「先に述べたように、一般のマルチシステムは、センターがLRとは異なるSPを使っているのが普通で、音色が違うことが多いのを録音エンジニアが知っているから」だそうです。つまり本当はCにだけ音声を入れた方が実体感のあるボーカルサウンドになるのに、それを再生する側の多くがセンターレスか、横置きセンタースピーカー(しかも往々にして、LRがバスレフなのに、Cだけ密閉というセットも少なくないです。これではたとえ同じユニットを使っていたとしても、音色が違ってきてしまいますね)なので、多くのエンジニアは、「100点」を諦めて「80点」を狙うため、Cに積極的に音を入れないのだそうです。私のようにLCRを苦労して(汗)、同じもので揃えている者にとっては残念なお話でした(泣)。

<Nakura Makoto 『Bach Parallels』の中の、「Passacaglia in C Minor, BWV 582 for six percussionists」>

これも同様にe-onkyoで販売されている、入交さん制作の「隠れAuro-3Dソフト」です。

この曲は、Genelec+目玉の親父ペアより、目玉の親父Onlyの方が断然良かったです(先の南さんのボーカル曲は、Genelecが入っている方が、肉感的な感じがよく出ており、「音楽」として好ましかったが)。マリンバの響きが空間(教会録音でしょうか?)にこだまして、得も言われぬハーモニーを醸し出す曲なのですが、やはりこのような空間感が重要な要素となる曲は、完璧に位相が揃っているシステムのほうが広がりとともに、くっきり感も同時に出せて、優れていますね。

いやあ、これが、ムジークの超強力・ハイレゾ同軸型モニターSP13台によって、100%本気の配置(先のスタジオ見学の際は、80%… )をされたWOWOWスタジオでは、どのような音で鳴るのか、今から来月に予定されているプライベートなスタジオ見学が楽しみで楽しみで仕方ありません(笑)。

最後に、この場をお借りして、入交さんにお礼を申し上げます。先日は、そしてまた今度も、さらに次の機会も、ありがとうございました。最近、すっかりAuro-3Dづいてしまって、ようやく、「Auro-3D友の会会長(自称=笑)」に多少は相応しい覚悟が出てまいりました(爆)。ここまで来たら、まあ、行けるところまで行ってみますので(汗)、今後ともご指導よろしくお願いします。

コメント ※編集/削除は管理者のみ

タイトルとURLをコピーしました