Auto-Negotiation機能が引き起こすトラブル
さて、前々回はネットワークのイメージと自動設定機能の概要について、前回はAuto-Negotiation機能について書きました。
今回は、このAuto-Negotiation機能が引き起こすトラブルの事例について書きます。
このトラブルは同様の設定を行えば必ず起こる必然的なトラブルです。そしてそのトラブルは以下の条件で起きます。
- 一方の通信モードをAuto-Negotiation機能を有効にする。
- もう一方の通信モードを全二重に固定。
具体的な一例を出すとするならば、以下のような場合ですね。(逆でも同様の結果になります。)
パソコン(Auto-Negotiation) ⇔ ハブ(10M/Full固定)
ではそのトラブルが起こる過程を見ていきましょう。
前回説明したとおり、Auto-Negotiation機能が有効にしたパソコンは、FLPという信号をハブに送ります。
しかしハブは通信モードが10M/Fullに固定されているので、FLPを受け取っても何もしません。そしてFLPを送ることもありません。
代わりに、ハブは接続されているパソコンに対して、定期的に別の信号を送ります。
自分が10Mのときは
「10Mですよー」
というNLP(Normal Link Pulse)という信号を
100Mのときは
「100Mですよー」
というアイドル信号を
それぞれ送信して、接続が正常に行われているか確認しています。
NLP信号はFLP信号と互換性があるので、NLP信号を受信したパソコンは接続した相手が10Mだと分かります。アイドル信号を受信したら100Mだと分かります。
ところがNLP信号やアイドル信号には、通信モード(Full/Half)の情報は含まれていないため、パソコンは通信モードを判別することができません。
通信モードが認識できない場合、PCは規格の古い機器を受け入れるためにより優先度の低い設定であるHalfの設定になります。
その結果、いかのようになります。
パソコン(Auto-Negotiation:10M/Half) ⇔ ハブ(固定:10M/Full)
通信モードが一致していませんよね?
- 上り下りを分けて通信する全二重通信(Full)
- 上り下りを分けずに通信する半二重通信(Half)
これは上下道の分かれた線路(Full)を電車が逆走するようなものです。当然通信は衝突し、まともに通信できません。
そして、このトラブルの一番厄介なところになりますが、このような通信モードが一致しない状況では、通信が遅くなったり、切れたりしつつも一応通信できてしまうのです。
全くつながらなくなったら、自分が設定した内容が悪いのだと、すぐに気づくことができますが、設定した直後に切断されるわけではないので、ネットワークの知識がない人は、遅くなったり切れたりしたのが、設定のせいだとは気づかないまま放置してしまいます。
すると、あとになって
「最近音や映像が途切れるなぁ…」
「ネットワークが遅いなぁ…」
なーんて思うのですが、原因がどこにあるのか分からなくなるのです。
ネットワークの知識を持っていなければ、こんなことには気づくことさえできずに、原因不明なトラブルとして、長い間苦しむことになります。
場合によっては壊れてもいないハブを
「不良品だ!」「壊れた!」
ともったいないことに捨ててしまう人もいるでしょう…。
それでももっと音を良くしたいと、通信モードを固定したいという人もいるでしょう。その気持ちは分かります。><
では、通信モードを固定して、かつ安定したネットワークを作るにはどうしたらよいのでしょうか?
次回は通信モードの固定について書きます。
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