先週のこと、トッパンホールでハーゲン・クァルテットを聴いて感じたこと。「美しく繊細な・・・」という好印象な面と、「音が小さくキレとインパクトに欠ける」という不満な面がありました。そもそも弦楽四重奏は、オーディオで聴いても生演奏にそれほど劣るとは感じていないため、辛口な評価となったのかもしれません。
そんな前提で今回のコンサートの感想を語れば、「生よりオーディオの方がいい」という結果となりますが、帰宅時には演奏の記憶が蘇り「鼻歌」が出たので心に刻まれたのは間違えないです。だから、安易に「オーディオの方がいい」などと言い切ってよいのか迷いましたので、復習として聴き込むことにしました。主にモーツァルトとベートーヴェンの弦楽四重奏です。
<コンサートでの演奏曲>
・モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421
・ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》
<予習していた音源>
①モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番は、プラジャーク・クァルテット / Praga Digitals SACD
・録音がよく、キレのよいサウンドが印象的な音源です。
②ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番 《ラズモフスキー第2番》は、 クイケン・クァルテット / Challenge SACD
・キレキレの演奏の優秀録音盤です。
<コンサートの感想のおさらい>
・トッパンホールの印象は、「柔らかい音色で、響きはシルキータッチな、やや混濁感がある癒しサウンド」と感じた
・ハーゲン・クァルテットは、「とにかく丁寧で美しい音を奏でるクァルテット」と感じた
・モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番での印象は下記でした。
「音が小さい」「キレがもうひとつ」「個々の音色が美しい」「4人の音色の統一感」「繊細で一糸乱れぬハーモニー」
・ベートーヴェンでは、激しい部分と穏やかな部分に大きな差があったが、ハーゲンのよさは「美しさ繊細さ」にあると思った
オーディオで予習したサウンドとの違いを感じながら生演奏を聴いたのですが、聴きなれたものが味わいやすいのが世の常です。自宅の味噌汁が一番馴染むのと同じことでしょうか?そこで、生で聴いたサウンドを思い出しながら、自宅のオーディオサウンドとじっくり比較をしてみました。
加えて、新しい材料を仕入れて対比の充実度を増しました。
新たな音源は下記です。
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番《ラズモフスキー第2番》の対比用として、同じハーゲン・クァルテットの演奏盤です。
③Hagen Quartet 30 (ハーゲン弦楽四重奏団 結成30周年記念アルバム)Myrios Classics SACD
モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番の対比として、ハーゲン・クァルテットの演奏盤です。
④ハーゲン・クァルテット / モーツァルト弦楽四重奏曲全集 DG CD
もうひとつ、ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番《ラズモフスキー第2番》の対比として、別演奏のプラジャーク・クァルテット盤です。
⑤プラジャーク・クァルテット / ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集 Praga Digitals SACD
ここからが比較した結果となります。
比較1:ハーゲン・クァルテットのベートーヴェン 《ラズモフスキー第2番》の生とオーディオの比較
③Hagen Quartet 30 (ハーゲン弦楽四重奏団 結成30周年記念アルバム)Myrios Classics SACD
・この音源で聴くハーゲンの演奏はキレがいい
・30周年記念アルバムなので、10年以上前の録音となる
・生で聴いた時点は40周年で、年齢には勝てずに演奏スタイルが大人しいものに変わって来たのだと思えた
そこで、⑤プラジャーク・クァルテット Praga Digitals盤と③Hagen Quartet 30 Myrios Classics盤との比較も実施した
・キレは同等であるが、プラジャークの粗さも感じる。プラジャークの音源は響きが多く入っており、少し遠めに聴く感覚だった
・キレと美しさの両立を果たしているのは、「ハーゲン30周年記念アルバム」と感じた
確認のために、②クイケン・クァルテット / Challenge盤も聴いてみた
・クイケン盤はキレキレの演奏でインパクトはあるが、ハーゲン盤と比べると味がない印象だった
<結果>
◇「ハーゲン30周年記念アルバム」の演奏と音であれば、先日聴いたコンサートよりオーディオ演奏の方がいいと思った。
比較2:ハーゲン・クァルテットのモーツァルト 弦楽四重奏曲第15番の生とオーディオの比較
④ハーゲン・クァルテット / モーツァルト弦楽四重奏曲全集 DG CD
・この音源で聴くハーゲンのモーツァルトもキレがない。そして、単調とは思えない優しく明るい演奏だった
・試しにほかの曲も聴いてみたが、同様にキレはないが、優しく明るい演奏だった
・このモーツァルト全集はハーゲンの20年前の演奏となる
・モーツァルトとハーゲンは同じザルツブルクの出身であり、伝統的なモーツァルトの演奏スタイルなのだろうと推測した
そこで再度、①プラジャーク・クァルテット / Praga Digitals盤を聴き直した
・キレがよく、音もよくて、我が家の味噌汁サウンドと感じた
<結果>
◇自分好みは①プラジャーク・クァルテット盤の演奏であり、生よりオーディオ演奏の方がいいと思った。
こうしてみると、トッパンホールで聴いたハーゲンの弦楽四重奏であれば、生よりオーディオの方がいいという結論となるが、「生演奏を聴いて脳裏に刻まれたのは間違えない」。これまでと同じ音源でも、オーディオで聴くことがより楽しくなったことからも、生を聴いた影響であることは間違えないと思えます。
そして、今回のような深堀な復習が出来たのもコンサートがきっかけとなっています。この復習のために、ハーゲンのSACD1枚と、ベートーヴェンとモーツァルトの各全集を買ってしまった自分にはあきれる面もありますが、生とオーディオの比較は楽しみでもあります。
鮮度で言えば、もちろん生に勝るものはないのでしょうが、歴史を紐解き蘇らせることが出来て、他の演奏と容易に比較できるオーディオは素敵ですね。長年積み上げてきたクラシックマニアでなくともこんな聴き方が出来ることに、改めて感動しました。
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