ホール中に響き渡る歌声、原体験から求めてしまうものがあります。ですが簡単に得られないから原体験なのでしょう。
コロナ禍では控えられてきた合唱のコンサートもようやく解禁となりました。生演奏で、ホール中に広がる歌声を全身に浴びながら聴くと、震えがくるほどの感動を味わいます。ですがこんなシーンに出会えるのは稀なことですね。自分の原体験と言える経験は、ウィーンの教会で聴いたモーツァルトのレクイエムでした。
教会の響きの中で聴くレクイエムは、編成こそ小さかったのですが響き渡る歌声に身を震わせながら聴いていた記憶が残っています。
昨日聴いたのは、東京芸術劇場で行われた二期会と読響のモツレクです。
座ったのは、1階席8列目の右寄りでした。
演奏は悪くなかったです。上岡さんの音楽性、ソリストの歌声、丁寧にハモる合唱、どれもよかったと思います。ですが・・・
モツレクの編成は、女声20名、男声20名、ソリスト4名、オーケストラはヴァイオリン8、ヴィオラ6、チェロ4、コントラバス3と二管でした。楽譜通りの一般的な編成かと思いますが、響きの少ない大ホールでは自分が座る席に歌声は響いて来なかったです。音量を測ってみると、50dBから70数dBで80dBを超えることはなかったです。この値は、サルビア音楽ホールで聴く弦楽四重奏よりも小さいです。
商業ベースで考えたら仕方がないことかと思います。人件費は高いですしね。有名なバイロイト音楽祭ですら、資金面から「合唱団の数を大幅削減」のニュースがありました。合唱団の数を134名から80名に減らすとのことです。二期会のレクイエムでは、この半数の40名で、会場のキャパは同じ2000名クラスです。80名に減らすことで、音楽のクオリティが心配されているのですから、これ以上は語る必要もなさそうですね。
合唱はオーディオ再生においても難易度が高い曲となります。歌声を部屋中に響き渡らせるのは、簡単ではないですね。ですが、オーディオでは一旦部屋中に響き渡る音響を手にしてしまえば、後は(編成の大きさは)ボリュームで選び放題です。更に、原体験を味わっていれば感動の再生も容易です。帰宅後は、オーディオで存分に楽しみました。個人的モツレクの決定盤、「テオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナ αレーベル CD」 です。
日本のコンサートホールでホール中に響き渡る合唱を味わったのは、複数の合唱団が集まり100名以上の編成での演奏を聴いた時のことくらいしか思い浮かばないです。そんなコンサートに、この先出会えるのかもわかりませんし、生で味わえない感動を味わうオーディオもあるものです。こうして考えると、「合唱はオーディオで聴くのが吉」と言わざるを得ないかなと思いました。
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ヒジヤンさん、こんばんは。
グランドスラムです。
やはり、「合唱はオーディオで聴くのが吉」なんでしょうねえ。
ヒジヤンさんの記事を拝読して、自分が若かりし頃に所属していた合唱部の音源がYouTubeに上がっていたのを思い出して聴いてみました。
「ゆうやけの歌」(https://www.youtube.com/watch?v=_8TRnx3NnOE)
当時私は1年生で正しい発声方法も分からずに、上級生につられて何とか歌っていたのでしょうねえ。同じテノールだった星洋二さんは藝大から二期会のオペラ歌手ですし佐藤雄一さんは国立音大から指揮者です。ピアノ伴奏の佐藤正浩さんも藝大から指揮者ですし、バリトンの石原貴之さんも会津で「オペラ白虎」の制作統括として活躍するなど、今考えると、一つの合唱部からこんなにプロの音楽家を輩出するそうそうたるメンバーだったのですね。
当時の大会の審査員を務めていた作曲者の湯山昭氏が、この演奏を聴いて「決定版」と言ったほどですから、高校の部全国1位とコンクール大賞(全部門を通しての1位)をとったのも当然のことなんでしょう(笑)
演奏が終わって我々が退場しても、指揮者の先生が戻ってこないので不思議に思っていたのですが、カーテンコールがあって再度登壇したとのこと。全日本合唱コンクールでカーテンコールがあったのは、後にも先にもこの1回だけだそうです。
その頃、毎日合唱練習をしていたころの体験が今の自分のオーディオに影響を与えていることは多分にあると思います。70名以上の男声合唱団が広いとは言えない音楽室で一堂に会して練習するわけですから、全体練習の時の音量や音圧はかなりなものがあると思います。
その体験が、マルチチャンネル再生やドルビーアトモスやAuro-3Dといったイマーシブ再生へと結びついていったのかもしれませんね。
昔の思い出話でした(笑)
グランドスラムさん、おはようございます。
合唱をやられていたのですね。生の演奏をやっていると、「至近距離で聴く」「小さな空間で聴く」など、通常のホールで聴くのとまったく違うので、「商業ベースのコンサートは物足りない」との感触はよくわかります。
>その体験が、マルチチャンネル再生やドルビーアトモスやAuro-3Dといったイマーシブ再生へと結びついていったのかもしれませんね。
マルチチャンネルやイマーシブは音場系の再生に有利でオーディオ再生の物足りなさを補ってくれますね。一方で、オーディオの物足りなさの「音の濃さ」「音像のボディ感」などはモノラルや2chの方が優位と感じていまして、痛し痒しです。
これは音を広げれば音が薄くなり、音を集中させれば音が濃くなるという原理原則に従うものなので、当然と言えば当然ですね。
音場を求める人はマルチスピーカーが合い、音像を求める人はモノラルや2chが合うということかもしれないと思いました。
両立させるなら、マルチスピーカーで音波をきちりと整えることかと思いますが、2chで空間を再現すべく音波を整えるのとどちらが効率的か、頭の整理がつかないでいます。
グランドスラムさんが、音場と音像の両立を果たされるのを楽しみにしています。