振り返りプログラムの「ヒストリカル音源」と「リベンジ音源」の後に歓談の昼食をすませてから、メインの「新音源」と「マラ8比較」の実施です。文章にしてみるとそれほど大きな違いは感じませんでしたが、根っこの部分での違いを感じながら実施していました。前回の「ヒジと猫の音量差は、ヴォリュームレベルで2目盛りほどの差」を目安として、音量調整はヒジが実施します。眠り猫さんの訪問記では、「コンサートのようなオーディオ オフ会」と言ってもらえたのがうれしく思いました。
第3ステージ:初試聴音源
選曲の大まかな意図は下記です。
・演奏が気に入っているもの ⑤
・以前のオフ会で疑問を残していたもの ⑥
・リクエストを受けたもの ⑦⑧
・好みの協奏曲バランス ⑨
・オペラから ⑩(眠り猫さんはオペラファンとのことですので、外せないと思いました)
・音がいいもの ⑪
ヒストリカルとリベンジからの続き番号で記載します。
⑤ミリヤム・コンツェン/ フランク ソナタ 第1楽章
昼食後は、小音量で演奏が気に入っている音源でスタートしました。フランクのソナタはお気に入りの楽曲で、数多くのCDを手持ちにしていますが、その中で「この演奏は好きだな」と思っていた音源を、猫さんに聴いてもらってご意見を伺いたいと思ったからです。
ヒジ:「フランクのソナタは好きな曲で、震災の時によく聴きました。」「人気で多くの音源がある曲ですが、これはどうですか?」
眠り猫:「いい曲をいい曲だと思わせる演奏ですね。」「いい演奏だと思います。」
ヒジ:「とても素直な演奏が好きなのです。」
眠り猫:「素直な演奏ですね。」「その意味からは、ヒストリカルのヌブーの演奏とは対照的です。」
こんな感じで、猫さんとのオフ会では「音」の話には殆どなりません。「演奏」の話になると会話は弾みます。その意味からは、私ではお相手するのに役不足を感じてしまいます。
⑥弦楽四重奏 プラジャーク / ハーゲン比較
以前のオフ会で受けたコメントがどうも腑に落ちないでいたために、同じ曲を聴いて確認してみよたいと思い選曲しました。
比較は、プラジャーク クァルテットがモーツアルト弦楽四重奏曲第15番とハーゲン クァルテットがベートーヴェン ラズモフスキー第2番です。同じ弦楽四重奏曲とは言え、楽曲が違いますので比較するような内容ではないのですが、以前のオフ会で、明快に「プラジャーク音源は好きだが、ハーゲン音源は好きでない」と言われたので、その旨を話したうえでの比較試聴です。
自分は以前のオフ会でのコメントが腑に落ちなかったので、ご意見伺いのつもりで選曲したのですが・・・猫さんは聴く前から答えは出ていると言いたげな様子です。聴き終わってから、
眠り猫:「聴くまでもないと思いました。」「ハーゲンは精緻な演奏ですが、プラジャークは情感豊かな演奏です。」「その面から、好き嫌いがハッキリと出たのです。」
自分の問いに対して、あまりにも明快で説得力のある回答でした。
ヒジ:「ですが、その聴いてもらった人はクラシックを聴く人でもないですし、自分と同じ音派の人なのですが・・・」
眠り猫:「演奏の好みの問題です。」「そうに決まっています。」
ヒジ:「結論は出ましたね。」
こんな会話でたじたじでした。
⑦ヴィバルディ四季 カルミニューラ新旧比較
この比較は、猫さんからのリクエストを受けました。左が2000年の新録音で右が1992年の旧録音です。どちらも冬の第1楽章で聴き比べをしました。自分は旧録音が好きで、「誰もが知っている、目を見張る超絶技巧の音源」として、度々オフ会にも選曲しています。
眠り猫:「どちらも戦闘機のような演奏で楽しいです。」
ヒジ:「自分は旧録音が好きで、度々オフ会にも選曲しています。」
眠り猫:「バックの演奏の違いが大きいのではないでしょうか」
ちなみに、新録音がヴェニス・バロック・オーケストラ で、旧録音がソナトーリ・デ・ラ・ジョイオーサ・マルカです。猫さんの日記から、「猫:新盤のあざといまでのやり過ぎモリモリな効果満点の演奏も大好物です。中でも夏の第三楽章だけは、戦闘機が轟音ですっ飛んでいくような新盤を選びます。」これを読んで、「ヒジ:確かに、新盤の夏の第三楽章の強烈さは聴かせる」と思いました。
⑧ツィメルマン/ ショパン ピアノ協奏曲 第1楽章
この音源は猫さんからのリクエストです。自宅でも聴いている音源を聴いてみたいということでした。演奏派の猫さんですから、気に入っている音源については好印象のようでした。ここで音派のヒジがコメントしました。
ヒジ:「この音源はピアノの真正面で聴いている感覚で、オケとのバランスが気になります。」「急にピアノの大きい音が入ったりしてビックリします。」
眠り猫:「この音源は、ツィメルマンがオーケストラを編成しツアーをしたときの録音です。」「きっと、ピアニストの位置で聴こえる感覚で編集されているのだと思います。」
なるほど、と思いながら次に進みました。
⑨ハイドン/ホルン協奏曲 第1楽章
この曲は、協奏曲を聴く時に「ソロとオケの好みの音量バランス」という面から選曲しました。⑧のツィメルマンのピアノ協奏曲に対するアンチテーゼの位置づけです。これに対しての猫さんのコメントは、「ホルンが響き過ぎる?」だったような気がします。自分がツィメルマンの「ピアノがソリッド過ぎる」と感じることと対比すると、人の感じ方は様々であることがわかりますね。この感じ方の違いの理由もオフ会が終了する頃にはわかってきたような気がしました。
⑩オペラ トゥーランドットから トゥーランドット姫登場後
オペラ好きの猫さんですから、オペラの音源は外せないと思い選曲しました。絶世の美女だが氷のように冷たい心を持つトゥーランドット姫を一目見るなりその美しさに魅せられた王子カラフと姫のやり取りと群衆のコーラスの対比が面白いシーンです。オペラ好きの猫さんなので、まずまず気に入っていただけたようでした。ただ、猫さんの日記でのコメント「実演の舞台では絶対にこのようには聴こえないが、純粋にヴァーチャルな体験として楽しむには無類に面白い、映画的な演奏」については、「・・・ウ~ン、よくわからない」と思いました。そう言えば、10年ほど前にオペラ好きの方とオフ会をした時にも、「実演のオペラは、(オケピットがステージの下にあるので)こんな風には聞こえない」と言われたことが思い出されます。
⑪ビゼー / 交響曲 第1楽章
新音源のフィナーレとして華やかにしめたかったので、豪快な曲としました。音量も、ここまでは猫さんに合わせて、「自分より二目盛りほど絞った音量」としていたのですが、最後は自分の音量で鳴らしました。
眠り猫:「この音源は、優秀録音ですよね。」
ヒジ:「よくご存じですね。演奏派の猫さんは知らないだろうと思っていました。」
眠り猫:「いえ、旧ファイルウエッブで紹介されていたので覚えていました。」
ヒジ:「録音がよくて、演奏もよいのですが、曲が繰り返しばかりで面白くないです。」
眠り猫:「初期のシューベルトの曲みたいです。」
会話はどこまでも「クラオタモード」だったでしょうか。
番外編としては、猫さんからのリクエストで、ご自身が聴きに行ったN響記念公演のマラ8の試聴です。対比するものがあった方がわかりやすいと思い、前回に聴いてもらったMTTのマラ8との比較試聴の実施としました。
ここでは猫さんに聴いてもらった後で、ヒジも同様にセンターに座っての比較試聴をします。
眠り猫:「この日の演奏は、ソリストがオケの後ろに配置されていて特殊な並び方でした。」こんなコメントだった気がします。
ヒジ:「N響音源は平面的で好みに合いません。」「ですが、自分が聴きに行った公演の音源は宝ですね。」
こんな会話でしめとなりました。
オフ会の試聴が終わった後で、本日の結果を並べてもらいました。
最近の恒例としている、「印象別の音源並べ」です。個々と全体的な印象を聞きながら、その位置づけを並べてもらうのは後で見てもわかりやすいです。今回は眠り猫さんの曲ごとの感想をじっくりと聞いていましたので、腑に落ちないものはないです。視点や趣向が異なる人に聴いてもらってご意見を伺うのは、自分の視野が広がるきっかけとなりますね。
そして、音量についての話の深堀も実施しました。要約すると、猫さんは「オーディオのように狭い場所で聴くと、耳に音が重なりダメージがある。コンサートのような広い場所では問題ない。単に音量レベルの問題ではないです。」とのことでした。これに対してヒジは「広い場所だと身体に感じる音が物足りない。コンサートでも出来るだけ小さな空間のシューボックス型のホールが好みです。」このような会話から考えると、「猫さんは耳で聴くタイプ」で「ヒジは身体で聴くタイプ」と区分けが出来そうだと思いました。このように置いてみると、これまでいろいろな人との会話や好みについての話をして疑問に感じていた糸がほぐれる「目から鱗が落ちるようなオフ会」でした。
ーおわりー
<参考:眠り猫さんの日記>
コメント ※編集/削除は管理者のみ
ヒジヤンさん、こんばんは。
オフ会後期、アップありがとうございます。
>こんな感じで、猫さんとのオフ会では「音」の話には殆どなりません。「演奏」の話になると会話は弾みます。
ふふふ、確かにそうですね。
前半の「ヒストリカルとリベンジ」で試して頂いた音場感の実験「ヒストリカル音源の部で面白かったと言いますか、ガクッと来たのが~」のくだりなんて最たるものでした。私は1つの演奏を100回聴くよりも100人100種の演奏を聴くほうが好きな人間ですので、やはりアンテナの向く方向性の違いは大きかったです。
それにしてもミリヤム・コンツェンのフランクは良かったです。震災の時によく聴いた、という話は実に納得でした。
>これに対しての猫さんのコメントは、「ホルンが響き過ぎる?」だったような気がします。
ハイドンのホルン協奏曲については、確か、たまたまそのときの耳の位置だと一部の音域に余計な響き(部屋?家具?)が乗ってしまった、ということだったかと記憶しています。
椅子に深くもたれていたのを、起き上がって前の方に耳の位置を変えたら改善しました。
>「猫さんは耳で聴くタイプ」で「ヒジは身体で聴くタイプ」と区分けが出来そうだと思いました。
帰りの車内で聞いてこれはなるほどなぁと思いました。
確かに、私は身体へ感じる音(物理的な振動や圧)を求めていないです。
あくまで関心があるのは、プレイヤーが曲に対してどのようにアプローチし、その場にいる人(他のプレイヤーだけでなく観客含む)がお互いにどう影響し合って、
その結果どんな演奏が出てくるのか、そしてそれを(その時の自身の体調や気分含めて)自らがどのように受容するのか、という点です。
これは間違いなく「耳で聴くタイプ」ですね。
眠り猫さん、コメントありがとうございます。
目から鱗の件、おかげさまで更に理解が深まったように思いました。今回の「目から鱗が落ちたような」と記載した一番のポイントが、「耳で聴くタイプ」と「身体で聴くタイプ」とした部分です。
眠り猫さん(コメントからの引用)
<<私は身体へ感じる音(物理的な振動や圧)を求めていないです。あくまで関心があるのは、プレイヤーが曲に対してどのようにアプローチし、その場にいる人(他のプレイヤーだけでなく観客含む)がお互いにどう影響し合って、その結果どんな演奏が出てくるのか、そしてそれを(その時の自身の体調や気分含めて)自らがどのように受容するのか、という点です。これは間違いなく「耳で聴くタイプ」ですね。>>
対比してヒジの音楽の聴き方を記載してみます。
<<自分が音楽を聴くときに求めるものは、「気持ちいい」「心地よい」「興奮する」などの音楽を聴いたときにおこる「身体的・精神的な変化」です。この変化を起こす要素として大事なのが「音」なのです。だから、好きな曲は同じ音源ばかり聴いてしまう傾向があり、猫さんが言われる『1つの演奏を100回聴くよりも100人100種の演奏を聴くほうが好きな人間です』の反対側に位置しています。こんな点が「身体で聴くタイプ」と言えると思いました。>>
このような違いを知ることはとても有意義ですね。これまでに疑問に感じてきたことへの理解が一気に進んだ気がしています。このような違いは、とかく「どちらが良い・悪い」の話になったりしますが、基準を生演奏に置いているという共通点があるためか、「なるほど、そう言うことなんですね」と思い、自分の趣向にも取り入れたくなるという、「自身の幅を広げる」きっかけに繋がったと思います。猫さんにとっても有意義な点があるとよいのですが・・・
大変勉強になりました。ありがとうございました。
ヒジヤンさん、こんにちは。
>自分の趣向にも取り入れたくなるという、「自身の幅を広げる」きっかけに繋がったと思います。猫さんにとっても有意義な点があるとよいのですが・・・
2回のオフ会はとても有意義でした!
少しだけお話ししましたが、オフ会をきっかけに自分の嗜好が明確に認識出来てオーディオ的な方向性が決まった、ということがまずあります。迷いがあった部分がふっ切れたというか。
もう一つ、生演奏についてはオケの次シーズンのチケットは最前列やそれに近い位置を確保してみました。振動や圧を浴びる=身体で聴く、を集中的にやってみようかなと。
好きな指揮者の任期満了シーズンなので間近で観たいのと、行けない場合のチケット処分が楽、という裏事情もありますが(笑)
たぶんミューザでお見掛けすると思いますので、その際は宜しくお願い致します。
眠り猫さん、おはようございます。
オフ会を有意義と感じていただけたようで安心しました。
ミューザ川崎で顔を合わせる場面が多々ありそうですね。特にサマーミューザは、この時期はココでしかコンサートはないと思いますので確定的です。
昨年のサマーミューザで一緒になった、眠り猫さん同等かそれ以上のクラシック音楽通の方は、どのホールでも「最前列中央一本決め」と言われていました。この方のブログを拝見すると、猫さんやヒジともまた違った趣向や音楽の聴き方をお持ちのようです。更なる視野の広がりを得るチャンスかもしれないと思いました。
音楽の味わい方談議をするのも楽しそうですね。今後ともよろしくお願いいたします。