CDの録音レベルと録音クオリティの関係

日記・雑記
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時々生ピアノの録音をすることがあります。
主にクラシック曲です。
デジタル録音して依頼者にお渡しするために最後にCDに編集するのですが、その時に気がつくことがあります。
それは多くの市販のCDに比べて私の録音は録音レベルが低いということです。
つまり、再生時に同じヴォリューム位置にして聴くと私が録ったCDの方が音が小さい。
もちろん曲によってダイナミックレンジが違うので同じ曲もしくは同じような曲での比較なのですが。

私の録音はコンプレッサーを一切使用しません。最大のピークがCDの規定の0dBを越えないように最後のマスタリングで調整するだけです。
ピアノの場合はフォルテシモの強い打鍵によるピークが全体の1ヶ所あってそれ以外はかなり低いレベルが続く様な曲もあるわけですが、その瞬間的なピークもつぶさないよう大事にしています。
ピークをつぶさないようにするためには平均的な再生レベルはどうしても低くなります。

市販のCDにはコンプレッサーをかけてダイナミックレンジを狭めた録音が少なからずあるのではないかというのが私の疑問です。その結果、録音レベルが高くなっているのではないかと…。

アナログ・ディスクの場合には録音レベルが大きいレコードが優秀録音とされてきました。よい録音はカートリッジの針が追従できるぎりぎりまで溝の振幅を大きくするようにカッティングレベルを調整するからです。カッティング時にエンジニアが職人芸でカッティング・ヘッドの送り速度の調整を行い、大音量の部分の手前で送りスピードを上げて大きな振幅の溝でも隣の溝と干渉しないようになんていう作業をしたようです。
大きい振幅で大きな出力を得ることでS/Nを稼ごうというわけです。
溝の振幅が大きいのですから当然ながらそんな優秀録音のディスクの録音時間は
短くなります。だからレコードを買うときに録音時間が長いと詰め込んでいて録音はあまり良くなさそうなどと目星をつけたものです。

ところがCDの場合には収納できるデータ量は決まっているし、最大のピーク・レベルも決まっているので、ダイナミックレンジの大きい録音、つまりピークの大きい録音の平均再生時の音はダイナミックレンジの狭い録音よりも低くなります。
コンプレッサーをかけてピークの音のレベルを下げるとダイナミックレンジは狭くなり録音の平均音量は高くなるのです。
ですからアナログ時代と違ってデジタルの場合録音レベルが高いということはコンプレッサーがかけられてダイナミックレンジを圧縮された録音になっている可能性があるわけです。

アナログ時代はたぶん今よりももっとコンプレッサーを多用していたと思います。アナログ録音ではピアニシモはテープヒスやスクラッチノイズに汚されてしまうので、S/Nを稼ぐために全体の録音レベルを上げておきたいと考えたからです。
そのためにピークを圧縮することが必要だったのです。

デジタル時代になって、S/Nを気にすることがなくなってもコンプレッサーが使われるのは、再生側の環境を考慮してのことかもしれません。ピアニシモまでちゃんと聴こえるようにヴォリューム設定するとフォルテシモで大音量になって環境的に再生が無理とかミニコンポのような小さなシステムではスピーカーが破たんする場合もあるでしょう。逆にフォルテに合わせるとピアニシモが聴こえなくなる。
というわけでコンプレッサーが使われるのではないかと思われます。
特にヴァイオリン・コンチェルトやソロヴァイオリンをフィーチャーした楽曲ではコンプレッサーを使ったかまたはそうでないとしてもヴァイオリンの音量を大きくしたと思われる例を見ます。

AVアンプでは「ダイナミック・ボリューム」みたいな名前のダイナミックレンジ圧縮機能があります。これは爆発音などの大音量の効果音を抑えセリフを聴こえやすくする機能で、大音量再生が難しいお茶の間で映画を見るときなどに使われます。音楽CDでもこれと同じ目的でコンプレッサーが使われることがあるのだと思います。

ただ、再生側のダイナミックレンジが充分ある、つまりある程度の大音量も可能な場合にはコンプレッサーがかかっているとどうしてもフォルテシモでガツンと来ない物足りなさ、違和感を感じることになります。
一般的にはダイナミックレンジが大きいはずの曲なのに録音レベルが高いCDではコンプレッサーの使用が疑われます。
それでも録音レベルが明らかに高くてコンプレッサー使用が疑わしいのにダイナミックレンジの不足を感じさせない不思議な録音もあります。録音エンジニアのマジックでうまくだまされているのかもしれませんが、それはそれで素直にだまされる方が幸せのように思います。

で、前置きが長大になりましたが(前置きだったんです…笑)、私が今まで聴いた中で録音レベルがすごく低いCDを2枚挙げておこうと思います。
レーベルは2枚ともCHANDOS、イングランドのレコード会社ですが私はCHANDOS録音はこの2枚しか持っていません。(^^;)
2枚ともダイナミックレンジは広大です。

[:image1:]

田部京子さんのドビュッシーの「版画」のCDです。
これはGRFさんのお宅で聴かせていただいて思わず引き込まれる演奏とピアノの響きの美しさに魅せられて購入しました。
最初の曲、Reverie(夢)は弱音で始まり、静かに終わるので普通のピアノ曲のヴォリューム設定で聴き始めると音の小ささにビックリすると思います。(笑)
でも、ここでヴォリュームを上げ過ぎるとトラック15の「喜びの島」で爆音になるかもしれないのでお気を付けください。
録音レベルは普通のCDより10dB近く低いかもしれません。
演奏のダイナミックレンジも非常に大きいからなのだと思います

[:image2:]

アンドリュー・デイビス指揮のBBCフィルのホルスト「惑星」、SACDです。
「惑星」はトラック10からですが、これは田部さんのCDと違って最初の火星が派手なのでこれに恐れをなしてヴォリュームを抑えめに設定すると弱音の曲で聴こえにくくなるかもしれません。
火星は爆音に近いレベルまでヴォリュームを上げるのが正解かも…(笑)
このSACDの録音レベルの低さは確か前にもネット上でも話題になったことがあったと思います。

実はCHANDOSについて私はあまり情報を持っていませんので、他のCDをお持ちの方がいらっしゃいましたら感想をいただけるとうれしいです。

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