アイキャッチ画像は日記とまったく関係がありませんAntelope Audioのホームページから引用した画像です。
https://jp.antelopeaudio.com/products/10mx/
一部の方々に「中華SDトラポ」という愛称で呼ばれていますトラポ。私は勝手に「SDカード再生I2Sトランスポート」という長い名称を使っています。これの音質が良い要因を調べていて・・・一つ?成果が出たので報告します。
まず、コイツは「PCオーディオ」でもなく「ラズパイオーディオ」でもない、新しいようで古いSDカードプレーヤー。でもコレだけでは音が出ない(アナログ信号が出て来ない)のでプレーヤーとは言えません。やっぱりトラポですが強いて言えば『マイコンオーディオ』でしょうか。で、そのマイコンを最初に調べてみました。
https://www.stmcu.jp/stm32family/
基本的に 「SDカード再生I2Sトランスポート」はSTM32H7シリーズが採用されています。私の購入したのはSTM32H750でしたが、おそらく最新のものはSTM32H7b0になっているようです。
データシートを見てみます。
https://www.st.com/ja/microcontrollers-microprocessors/stm32h750vb.html
I2S、内部のPLLを使うか 又は 外部クロックを使うか 選択可能です。”audio class accuracy” という文言に胸が高鳴ります。
ところがどっこい、
肝心のマイコンの水晶クロック入力(OSC_IN)と水晶発振器は直接接続されていませんでした・・・ why?
配線を追いかけると凄い?事がわかりました。(知っている人にとっては当たり前の事かもしれませんが万年五里霧中の自分にとっては意外でした。)
水晶発振器の出力は二手に分かれて一方は直接DACのMCK(Master Clock)に導かれていました。そしてもう一方はマイコンの 16番ピンでSDカード用の?Clock入力にも入力されていました。(12番ピンのOSC_INに今は何を入力しているのか?現時点は分かりません。)
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図:クロックの流れを示した簡略図
(実際には水晶発振器は44.1k系と48.k系の2個ありまして双方のクロック出力は気持ちの悪いことに接続(ショート)されています。しかし、STAND-BYによってどちらか片方だけ発振するようにマイコン制御されているので問題ありません。STAND-BYの無い発振器では?電源投入してからの安定時間を考えると・・ずっと通電して=ずっと発振し続ける事が、音質的に必要になってくると想像されるので、2種の発振器の出力を接続してしまうという荒業は使えない事から、信号の切替器か何かを追加するなど部品点数や回路の複雑さが増すかもしれません。)
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なるほどなぁ。Master Clockは逓倍も分周もしないで水晶発振器の出力をダイレクトにDACに食べさせているし、中身はよくわからないけれどマイコンにも食わせている。なんというか外部クロックを使うスタジオみたいですよね。
音質が良いので結果オーライなんですが、なぜマイコンのクロック入力(OSC_IN)を使わなかったんだろう?データシートをみてみると水晶発振器 水晶振動子 を使いたい場合は上限が 48MHzでした。
今回製品に採用されている49.152MHz(水晶発振器)はそのポートには不適だった訳ですね 使えた訳ですが使わなかった。why? 何も知らない自分がマイコンオーディオを自作しようとしたら、100%の確率で、外部クロックを入力するために用意されたOSC_INに水晶発振器を直接接続することでしょう。。。 それを敢えてしないこの製品は、コロンブスの卵のようです。※2024/01/28一部訂正,水晶発振器はexternal sourceに含まれますので。resonatorではなくgeneratorに近い。振動子と発振器の違いですね。
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参考情報:
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RatocのHomePage、
https://www.ratocaudiolab.com/technology/03.html より一部引用
弊社の採用するS/PDIF入力処理<図2>は、Audio Streamに重畳されたクロックを使用せず、内部2基の水晶発振器によってマスタークロックが生成されます。入力されたサンプルレートに応じ44.1kHz系、48kHz系のいずれかをセレクト、忠実なマスタークロックを生成し、DACに転送されます。独自に開発されたファームウェアで実現されたこの方式を採用することで、転送時の接続環境とPLL回路に起因するジッター問題を同時に根本から解決し、低シッター再生を可能にしています。
引用ここまで
一見、上図は水晶発振器のクロックを直接DACに送っているような図になっているものの、実際には「内蔵クロック回路で正確なクロックを生成」と書いてあるように何らかの調整が加わっているようです。調整しないと上流からSPDIFで送られてくるクロックと帳尻が合わなくなって音途切れが発生(バッファアンダーラン又はバッファオーバーラン)してしまうからだと想像されます(間違っていたらゴメンナサイ!!)。「SDカード再生I2Sトランスポート」では上流からクロックは流れてこない,SDカードにデータがあるだけなので、水晶発振器の発振を直接・・・ピュアなままでDAC-ICに注入できる利点があるのかな?
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yanasoftさんより 少し引用
引用ここまで
追記ここから(自分で動画を撮って紹介しようかと思いましたが、たかじん様がi2sのジッターを動画で見せてくれていましたので紹介します。水晶発振器を使わないPLLなSPDIFは遣う気にならないですね。。。)
追記ここまで
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更に追記ここから
上記サイトから引用 ここから
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10年かけてわかったのは、
(1)ジッターの無いデジタル音源の音は、音量を上げてもうるささが全くなく、各楽器や空間の立体感が凄い
(2)DACユニットのデジタル回路の改善には、デジタル電源の改善とMCLK(DACチップの基本クロック)の改善が最重要であること
(3)MCLKの改善には外部マスタークロック(ワードクロック)を使ったシステム全体の同期化が必須であること
これを乗り越えて初めてデジタルオーディオは本来のオーディオの世界(オーディオ道)の入り口に立てる。
さて、本来のオーディオ道に戻って、次に何をしたいか?
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ここまで
現在から振り返ると(1)〜(3)の課題は『SDカード再生I2Sトランスポート』によって解決出来ていますので、その音質はpuredigital様の説を裏付ける結果ともなっています。
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2024/02/02追記:
最近のTEACの戦略が上記の同期そのもので驚きましたよ。スタジオだけじゃなく一般家庭で10MHz同期を使うようになるとは・・・今日まで気が付きませんでした。クロックジェネレーターから、CDトランスポートとDACのそれぞれにクロック供給。
なんだかTEACのステマみたくなってますけど、違いますからね(笑)
2024/02/02追記ここまで
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コメント ※編集/削除は管理者のみ
Nightさん、
いつも詳しい技術解説ありがとうございます。
純粋に音質面に注目すると、この「SDカード再生I2Sトランスポート」は相当良く出来ているのですね。そうと分かると、クロック、電源、筐体をオーディオ的に奢ってみたくなります。
とりあえず、もう一つ注文しました。
のびーさん コメントありがとうございます
そうなんです。吊るし?というか素のままで音が良いのですよね。電池駆動したらもうそれだけでOKな気もします。(日記の水晶発振器は話のネタでやっているだけです。1個500円なら遊んでもイイか・・・的な。)
日記に書くまでもない事ですがこの製品案外凝ってます。銅箔も厚いですしスイッチング電源のICも500kHzという速度でスイッチング。ノイズ対策用の外付け部品の小型化を実現しています。水晶発振器のパスコン配置も教科書通り電源ピンの傍で、違うのは容量が0.01μFではなく0.1μFであるところ。これは発振周波数で電源が振られる事を嫌ったからかもしれません。下図に示すように0.01μFでは50MHzの消費電流の揺れに対して心許ないです。なので、余り手を入れるところが無くて・・・そこが逆の意味で、もどかしい。。。
こんにちは。
アンプでは、回路、部品、実装技術の3つが大きな要素と言われています。ここに球や半導体、あるいは電源の重要性など・・・
同じように考えてみると、SDプレーヤーの回路設計(クロックを含めたタイミングなども)、部品、実装技術になるのはないかと思っています。この中では回路設計が何といってもキーで、メーカーはコンパクトで安価なプレーヤーを作ったら結果的に音がよかったが本当のところなのでは。
USBコンバーターでもいまだに改良されているところをみると、そう簡単なお話ではない気がします。クロックのジッターは音質の中心ではないでしょうが、関連しているのでしょうね。
マイペースさん コメントありがとうございます
マイペースさんが「I2Sトランスポート」の音質を『偶然の産物』とされるのと違い、私は必然性を感じています。日記にあるように?パスコン一つにも意味があると感じて、これ以上どう改良しようか?思いあぐねるところでして。もっとも、私は電気の素人なので、個人の勝手な思い込みかもしれませんが。。。
ただ、私が敢えて「中華」という名称表現を避けているのは「中華SDトラポ」には何か低品質や偽物などある種の馬鹿にしたような空気を感じてしまうからです。私が勝手に「SDカード再生I2Sトランスポート」という長い名称を使うのには、そういう開発者へのリスペクトを表したい想いから。だってそうじゃないですか?良いものは良い。
安かろう悪かろうのイメージのある「中華」と「SDカード再生I2Sトランスポート」を一緒にしたくない・・てん.
↑スマホの操作ミスで意図せず途中投稿してしまったようです。管理人さん、DMしませんが削除するタイミングがもしあれば、削除お願いします m(_ _)m
マイペースさん コメントありがとうございます
マイペースさんが「I2Sトランスポート」の音質を『偶然の産物』とされるのと違い、私は必然性を感じています。日記にあるように?パスコン一つにも意味があると感じて、これ以上どう改良しようか?思いあぐねるところでして。もっとも、私は電気の素人なので、個人の勝手な思い込みかもしれませんが。。。
ただ、私が敢えて「中華」という名称表現を避けているのは「中華SDトラポ」には何か低品質や偽物などある種の馬鹿にしたような空気を感じてしまうからです。私が勝手に「SDカード再生I2Sトランスポート」という長い名称を使うのには、そういう開発者へのリスペクトを表したい想いから。だってそうじゃないですか?良いものは良い。
かつての安い労働賃金で無理やり作られたよう、きたない半田付けの製品ではありません。自動化された生産ラインで製造されたものに見えます。Topping D10というUSB-DACから中国製の製品へのイメージを私は改めました。音質が凄く良いとは感じませんがその製造品質に驚いたからです。
長々と書きましたのは、マイペースさんと私とでは製品に対する意見が異なるという事でして、それは良いとか悪いという次元の話ではないので気を悪くされないで下さい。各人、それぞれ違う意見を持つのは良い事ですし、それそれを敵だだ味方だと戦争の如く発展してしまう状況は地獄でしかありません。そういう意味でPhil-Mコミュニティは異なる意見も静かに認め合う、あるいは認めなくても攻撃しないで静観するオトナの寄り場だなと、地獄の界隈を見ながら思うのでした。
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Nightさんが書かれていることを自身の理解のために整理しました。
デジタルファイルプレーヤーを高音質化する要素として:
オーディオ的な音質改善策
①回路技術
②信号経路の短縮・簡略化(表面実装部品、IC化など)
③高品質配線(厚銅箔基板、高品質ケーブルなど)
④良質の電源(リニア電源、バッテリー電源など)
⑤機械的な対策(シャーシ構造、インシュレーターなど)
デジタル特有の音質改善策
⑥OS、プレーヤーソフトの軽量化(プロセスカット、処理分散など)
⑦伝送方式の改善(伝送プロトコル、伝送経路など)
⑧クロック(高品質化、ローカル化、統合など)
と纏めます。マイスペースさんの仰る部品と実装技術は②③に含まれると考えました。
①は良く分かりませんがNightさんもマイペースさんも高評価
②はほぼ完璧
③もほぼ完璧
④はLifePO4バッテリーで十分。可能ならクロック部分の電源分離。
⑤これは完全にユーザー任せ
⑥これも完璧、PCベースやRasPiベースでは太刀打ち不可
⑦そもそも音源からI2S出力まで1枚の基板上で、ネットワークも接続ケーブルも不要
⑧デフォルトでも結構良いが改善の余地あり
やはり④電源、⑤筐体、⑧クロックを対策すれば、音質だけをみれば無敵のプレーヤーとなりそうです。
のびーさん コメントありがとうございます
当るか当たらずか、SDカード再生I2Sトランスポートのクロックについて。世間ではDAC側にクロックを置いてそちらをマスターとしてラズパイなど?信号送り出しのトランスポートをスレーブとする構成を採ったりしますよね。その逆も然りなんですが、SDカード再生I2Sトランスポートを機能別に分解してみると、クロックは『クロックジェネレーター』であり、『トランスポート』(マイコン)も、外部の『DAC』も ″ダイレクトに″ この ″生の″ クロック供給を受けています。言わば、『トラポ』 も 外部の『DAC』も 両方ともが ″スレーブ″ という構成になるんですよね?。これはスタジオ以外では見られないものなんではないかと(nightwish_daisukiのリサーチ不足かも?)。
リサーチ不足でした。CDトランスポートと、DACの双方に10MHz入力を備えて同期させるのはTEACの最近の製品群でした。。。スタジオどころか15万円前後の価格帯で外部クロック入力できるようになっていたのには気付いていませんでした。スミマセン。もしかして最近の流行??? 本文にも写真追加しました。