KIMURAさんの日記で、椀方さんとのやり取りを興味深く拝読していました。そこでコメントさせて頂こうと思ったのですが、少し筋が違うので自身の日記とします。
最近、と言っても数年前から、気になっていることがあります。
それは写真やビデオ画像では、撮る時も観る時もパースペクティブ(遠近感)を強く意識するのに、「音」ではパースペクティブの意識が薄いということです。
「画像・映像」では使用するレンズにより、パースペクティブが実際より大きくなったり小さくなったりすることは常識です。望遠レンズではパースペクティブが圧縮され、広角レンズでは拡大されます。
当然ながら「音」でも使用するマイクやそのセッティング方法により、「音」のパースペクティブが大きくなったり小さくなったりします。私は録音やPAの知識を持ち合わせていないので、どうすれば自然なパースペクティブが得られるのかはよく分かりません。それでも違和感のある音源はすぐに気付きます。
最近まで、この違和感が何に由来するのか分かりませんでした。コロナ禍でビデオ会議やビデオチャットの機会が増えましたが、時々非常に周辺ノイズの大きい相手と会話することがあります。会話を記録するキーボードの音や、背景で流れるテレビの音声が、先方は気付いてもいないのに、リモート先の当方では会話に支障が出るほど気になることがあります。
おそらくスマートフォンやビデオ会議システムのマイクは、遠くの小さな音ももらさず捕捉できるように、音のパースペクティブを圧縮しているのだと思います。
ライブ音源は、会場のアンビエンスが豊富で臨場感が高い反面、時には観衆のノイズが気になるものもあります。どういうノイズが気になるかというと、大きなノイズより近くから聞こえるノイズです。おそらく多少大きくても会場でのノイズの聴こえ方と同等であれば気にならず、それがかえって臨場感を増すということもあるのではないでしょうか?
オーディオ再生では、音場が広いとか深いとか、前に出るとか後ろに引っ込むとか議論をします。音のパースペクティブを意識してからは、単なる広さ・深さや前・後ではなく、自然なパースペクティブで再生できているかということに重きを置いています。
私の音源は、20年から50年ほど前にアナログ録音されたものが大半です。もとは演奏が良いから聴いていたのですが、最近は録音も良いことに気付きました。それは、ノンリニア編集されていない自然な位相特性に加えて、音のパースペクティブも自然なものが多いからだと理解しています。
最新のマルチチャンネル音源は、リスナーを中心に後方、上方にも音場が広がるようです。その音場は、果たして何十回、何百回と聴いても違和感を感じないものなのでしょうか?一度真剣に聴いてみたいです。
音のパースペクティブは、録音の専門家の方からすれば「常識」なのかもしれませんが、ここ数年で私の「聴き方」を変えた大きな気付きです。
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のびーさん、小生もパースペクティブを不自然に感じる音源は違和感を覚えます。
でもそれは生のコンサートホールで数多く聴いてきた経験知がそうさせるのだと思います。
小生もコロナ禍でタブレット端末のビデオ会話システムを使った現場監査や視察を行いましたが、実地で現場に出向いた時には気にならなかったような機械や空調の騒音が会話を妨げるような場面に遭遇して困ったことが多々ありました。
コレはマイクの録音レベルを常に一定以上に保つよう変動させる機能が、不自然なパースペクティブに繋がっているのでしょうね?
小生がよく聞くFM放送の海外コンサートライブでも、収録主体の放送局によってパースペクティブの自然さに大きく違いがあることも経験しています。
欧州の放送局なら何処も良いということはないのもあって、コレはやはり収録チームの経験知が様々なのだと思います。
良い演奏が良い録音で放送されるととても嬉しく思います。
椀方さん、レスありがとうございます。
一階席か二階席か、コンサート会場では好みの席があるように、再生音場の展開も一階席からのようだったり二階席からのようだったりします。
個人的には、少し見下げる一階席後方あたりからの音場が好みなのですが、ともすれば、もう少し離れた二階席からのような音場となり、奥に引っ込んでしまうこともあります。
それでもその音場の深さが、実際のオーケストラの配置をイメージ出来るものであれば満足です。
私も「生のコンサートホールで数多く聴いてきた経験」を再生でも求めているのだと思います。
のびーさんへ
>それは写真やビデオ画像では、撮る時も観る時もパースペクティブ(遠近感)を強く意識するのに、「音」ではパースペクティブの意識が薄いということです。・・
「音」ではパースペクティブの意識が薄い」というのはかなり高飛車な表現なので戸惑います。まあ、のびーさんにそのつもりはないのが分かりますが。
映像や画像では簡単に遠近感が分かりますが、音は見えませんし、止めて確認することも不可能ですから極めて抽象的です。
オーディオはマニアの読解力ならぬ、聴解力を必要とします。聴解力を磨くために機器を更新したり、部屋をチューニングしたり大変な苦労と散財します。その苦労話がコミュニティの面白さと感じています。
そして、その高度に積み上げられた聴解力の成果として遠近感が分かると思うのです。
画像や映像を引き合いに出す方は多いですが、違うと思います。
最近わたしは彼が誰かに雇われて送り込まれた工作員だと思うようになりました。
のびーさん、こんにちは。
「再生音のパースペクティブ」は録音サイドも難しい課題のようですね。
PWのtaketoさんの日記で「キースジョンソンが叩くシンバルの音(XLO Test & Burn-in CDより)」という日記がありました。https://community.phileweb.com/mypage/entry/4279/20210824/68215/
そこで、奥行き方向の録音の難しさとキースジョンソン博士の工夫が述べられて、実際に示されています。
一方で、再生サイドはどうでしょうか。奥行き方向の再生は、音をスピーカー後方にも回しこみ、かつスピーカーと壁との距離がないと奥行き方向の再生は難しいですね。
さて、本題の自然ななパースペクティブ再生ですが、自分が今まで聴かせてもらった中では、5.1マルチサラウンドを追い込んだお宅が一番でした。ステレオよりマルチが自然ななパースペクティブは有利かと感じました。普通のマルチは違和感があるものがほとんでしたが・・・
ヒジヤンさん
いつも興味深いコメントありがとうございます。
XLO Test & Burn-in CDは持っているので、以前、記事が紹介された時にB&Wで試しました。今のジャーマンフィジックスでも今度聴いてみます。
>自分が今まで聴かせてもらった中では、5.1マルチサラウンドを追い込んだお宅が一番でした。
やはり、良いソフトと良く調整されたマルチサラウンドの組み合わせは素晴らしいでしょうね。
私は、自身の趣味としては、音楽ソフトの素晴らしさ、機器の魅力、調整の面白さから、2チャンネル・ステレオに拘ることに決めました。マルチサラウンドは、10年前ごろまでそれなりに真剣に取り組み、数年前までフォローしてきた結果の決断です。
マルチサラウンドに取り組まれておられる方とも交流の場を持ちたいですし、私の考えも将来どのように変わるかは分かりませんが、今はそのように考えています。
のびーさんへ
もう一つ、、僕の勘違いであれば良いのですが、「自然なパースペクティブ」は音楽では無いです。すべてパースペクティブは作為的です。
ほとんど音楽はコード進行ですから音を混ぜ合わせることが重要で指揮者は苦労します。
オーディオでも美しいハーモニーを出せるか、全域で同レベル、同スピード、位相合わせに皆、躍起になっています。
「自然なパースペクティブ」があると、音が混ざらなくなるので、どこかに位相遅れがあるのか、心配になるのが普通と思いますが、いかがでしょうか。
bb7さん、
コメントありがとうございます。
週末に旅行に出ておりレスが遅くなりました。失礼致しました。
>画像や映像を引き合いに出す方は多いですが、違うと思います。
画像・映像と「音」はもちろん相違点は色々とありますが、共通点も多いと思っています。「止めて確認出来る」という点で画像・映像は取り扱いの容易さがあり、「音」を考える上で便利です。
>映像や画像では簡単に遠近感が分かりますが、音は見えませんし、止めて確認することも不可能ですから極めて抽象的です。
日常生活では、「音」がどれくらい遠くから聞こえるか、絶対的にも相対的にも無意識に感じ取っています。オーディオや音楽を楽しむ上で、何も考えず「ボーっと」聴くことも良いですが、趣味としてレベルを高めたいならば、「聴くポイント」を理解することが非常に大切だと思います。位相や周波数特性、ダイナミックレンジ等の測定可能なものに対して、音場や音色等の感覚的なものは議論の軸が(当然ながら)曖昧です。
音場は近年のステレオ再生で非常に大切なポイントで、広さ、深さ、中心位置が別個に議論・表現されているものの、それを全体として捉える「パースペクティブ」は、あまり議論されていないようなので日記にした次第です。
>「自然なパースペクティブ」があると、音が混ざらなくなるので、どこかに位相遅れがあるのか、心配になるのが普通と思いますが、いかがでしょうか。
位相遅れ等々がどのようにパースペクティブに効くのかよく分からないので、それは私には議論出来ません。「音の混ざり」に関しては、その程度・具合がキモだと思っています。
また例えを持ち出して申し訳ありませんが、音楽のハーモニーは料理に似たところがあって、個々の素材の味がどの程度残っていて峻別可能なのが良いかは、大切な評価ポイントです。その答えは料理ごとに違うというのは議論を待たないと思います。
要するに塊のように完全に混ざった方が良い音楽もあるのでしょうが、多くの音楽は適度に分離していてパースペクティブが分かりやすいのが良い再生だと思います。
のびーさんへ
同じ楽器や合唱では完全に混ざり合いますが、種類の違う楽器や音の高さの違う合唱の場合、それぞれ音像が立ち位置で浮かび上がります。
同じ音量、同じテンポと同じリズムであれば横一線に並びます。この横一線が位相が合っている状態と思っています。
そして、ジャズなら誰かソロパートが前へ出てアドリブをすると、前後の遠近感が生じます。国内盤ならクラシックでもメインの演奏者が常時前に出ていますから明確に前後の遠近感が分かります。
完全に録音で管理されていますので「自然のパースペクティブ」はあり得ないと感じています。
ただ、SPのタイプが異なると違う感じがあるのかもしれませんね。
のびーさんへ
>位相や周波数特性、ダイナミックレンジ等の測定可能なものに対して、音場や音色等の感覚的なものは議論の軸が(当然ながら)曖昧です。
のびーさんは日頃輸入盤が多いと感じました。輸入盤は国内盤より遠い音で後ろの方の席で聴いている感じです。ですから、ピントが全体的にやや甘めなので画像の遠近感と似ていると、。
国内盤は普通のS席から前、なのでピントはすべてジャストフォーカスで、遠近感は音像の大小ですから画像のイメージは浮かんできませんでした。(笑)
のびーさんへ
今回のお終いとして、
生演奏の音場も録音後の編集段階でのモニタリングは普通のSPでやっていますので、位相ズレの無い音、音場を聴くには普通のSPで聴くのがベストと思います。
また、のびーさんのDDDのSPは生演奏の音場を模した理想的な方式であります。ですが、録音が普通のSP向けに加工されていますので、生演奏の記憶に基づいて、パネルなどを工夫して、音、音場を再加工するのが良いのではと、。音場の再加工は普通のSPでは不可能ですから、やりがいがあると思います。
bb7さん、レスありがとうございます。
>生演奏の音場も録音後の編集段階でのモニタリングは普通のSPでやっていますので、位相ズレの無い音、音場を聴くには普通のSPで聴くのがベストと思います。
私もずっとそのように思っていました。それが今では、どのようなSPでモニタリングされているかは関係なく、DDDユニットは音場の再現性に優れていると考えています。
それは、私が聴く音源が比較的録音時期の古いものが多く、制作過程で位相をむやみに弄っていないからかもしれません。
オーディオは、大部分がサイエンスですからなるべく理屈で考えようとしますが、分からないことだらけです。例えば、SPをほんの数ミリ、いや1ミリ動かしただけで音場感が大きく変化し、一度ピントが合うと、聴取位置を数十センチ動かしても音像・音場が変化しないというような現象は、どう考えても上手く説明出来ません。
この感覚的な領域の知見はなかなか蓄積されないのですが、そこがオーディオの面白いところでもあります。
>録音が普通のSP向けに加工されていますので、生演奏の記憶に基づいて、パネルなどを工夫して、音、音場を再加工するのが良いのではと、
パネルは、一次反射や低い天井を疑似的に高くするなど、部屋の響きを整えるために少し使用していますが、これで音場の再加工・再構築を狙っていません。自然な響きの部屋であれば私の期待するレベルの再生が十分可能であることは、何人かの達人のお宅を伺って確認しています。
実は自分も同じような選択の歩みをしていまして、興味深く再度のレスから失礼します。
自分は、「2006年のAVフェスタ」でビクターが開発中の「呼吸球スピーカー」という無指向性スピーカーに魅せられて、2年ほど発売を待ちました。立体感が素晴らしいと思ったからです。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/20060914/victor.htm
待っても出て来ないので、ジャーマンフィジックスのDDDも考えたのですが、私は大音量派なので合わないと思い、B&Wに行きました。
その後、オフ会などやるようになり追い込んだマルチサラウンドの立体感に魅せられたのですが、音源が圧倒的にステレオが多いことと部屋が狭いことからステレオで進むことに決めました。
ですが、これまでの流れから「ステレオでマルチに挑戦する」ということが、自分の再生技術における課題として来ました。だから、B&Wとジャーマンフィジックスの違いに興味津々です。
◆XLO Test & Burn-in CDをB&Wで聴いたときの記憶と、ジャーマンフィジックスで聴いた感触でどのように違うか知りたいです。
お時間のある時にでも聴いた結果と違い(印象でかまいません)を教えて下さい。