11月25日の兵庫県立芸術文化センターで開催されたツィメルマンのピアノリサイタル。
ツィメルマンはポーランド生まれ。
1975年にショパン国際ピアノコンクールに史上最年少の18歳で優勝して以来、数々のオケとの競演やリサイタルをこなしている、小生とはいわば同世代のピアニストである。
2010年のショパンイヤーの際には日本でオールショパンプログラムでツァーを行ったのだが、その時は日程が合わず聴きにいくことができなかった。
そんなわけで、今回のリサイタルは大変楽しみにしていたコンサートだった。
プログラムは当初のオール・ドビュッシーから変更されていた。
先ずは、ドビュッシー:版画から
1.パゴダ
2.グラナダの夕べ
3.雨の庭
ドビュッシー:前奏曲集 第1集より
2. 帆
12.吟遊詩人
6. 雪の上の足跡
8. 亜麻色の髪の乙女
10.沈める寺
7. 西風の見たもの
休憩を挟んで
シマノフスキ:3 つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」より)
最後に
ブラームス:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰へ短調 作品 2
リサイタルに先立ち、異例なことにツィメルマンからのメッセージが読み上げられた。
それによると、最近の演奏会において、客席での違法な行為による録音録画がなされ、しかも、それがユーチューブに投稿されて、世界中に発信されたという。
詳しい理由の説明はなかったが、そのことによりツィメルマンは契約先(レーベル?)から契約違反があったとして契約打切りの通告を受け、違法行為を行った投稿者と契約先との3者での訴訟問題を抱えていることが明らかにされた。
最後に「演奏家が安心して演奏活動ができる環境が守られるよう、聴衆の皆様のご協力をお願いします」と、メッセージは締めくくられた。
昨今のデジタル電子機器の進歩により、大げさな機器を持ち込まなくても、それこそiPhonひとつで鮮明な画像と音声が、ネットに簡単に投稿できる時代になっているからこそ、今まで考えられなかったような問題が発生しているのだろうが、このような問題が演奏会場の裏で起こっているから、演奏家の肖像権に配慮した開演前や終了後の場内撮影さえ、厳しく取り締まられる窮屈な時代になったのだと改めて考えさせられる出来事だった。
さて、肝心の演奏会であるが、黒のタキシードを身にまとったツィメルマンがステージに現れると、「追っかけ」らしきファンが両手を高々と上げて拍手をする姿があった。
日本にも活動拠点を設けて頻繁に来日公演をしている成果があるのだろう。
ピアノ上に演奏曲目の楽譜を広げ、助手を置かず自身でめくりながら演奏に没頭する姿。
音色は透明でありがながら温かみがあり、ドビュッシーの複雑な音楽構成を音符の一つ一つに意味があるかのように弾きわけていく。
先日ダン・タイ・ソンがアンコールで弾いたドビュッシーとはまったく違う、骨格がしっかりした演奏である。
その印象は、後半のプログラム、シマノフスキとブラームスでより鮮明になった。
ショパンを弾き振りしたピアコンの録音が素晴らしかったが、ブラームスをこれだけ深く滋味深く聴かせてくれるとは。
新たな発見を強く印象付けた演奏会であった。
今度はシューマンを弾くのを聞いてみたい。
そう思いながら、クリスマスイルミネーションに輝く会場を後にした。
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