ラディカルさと通俗性のはざま – “Map to the Treasure: Reimagining Laura Nyro”

日記・雑記
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今晩は、CDレビューにチャレンジしてみようと思います。
レビューするのは、つい先日リリースされたばかりの
“Map to the Treasure: Reimagining Laura Nyro”です。

曲目とフューチャーされているアーティストは

1. New York Tendaberry – featuring Renee Fleming & Yo – Yo Ma
2. The Confession – featuring Becca Stephens
3. Map To The Treasure – featuring Lisa Fischer
4. Upstairs By A Chinese Lamp – featuring Esperanza Spaulding & Wayne Shorter
5. Been On A Train – featuring Rickie Lee Jones & Chris Potter
6. Stoned Soul Picnic – featuring Ledisi
7. Gibsom Street – featuring Susan Tedeschi & Steve Wilson
8. Save The Country – featuring Shawn Colvin & Chris Botti
9. To A Child – featuring Dianne Reeves
10. And When I Die – featuring Alison Krauss & Jerry Douglas

試聴はこちらでどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00N7H1JIU/ref=mu_dm_alb_dp

Amazonの紹介によると
「ニューヨークが生んだ女性シンガー・ソングライター、ローラ・ニーロの
トリビュート・アルバム。1997年49歳というローラの早すぎる死から17年を経た、現在の音楽界で活躍する女性シンガーとジャンルを超えた名匠たちが集い、ローラのヒット・ナンバーをジャズ・アレンジで再創造した意欲作。強烈な個性と知性で鮮やかに時代をかけぬけたローラの魅力に魂を奪われる1枚」。
とあります。

全曲ビリー・チャイルズ率いるカルテットが演奏していますが
ストリングスが入ったり、ゲストミュージシャンの演奏が
フューチャーされたりしています。
そのなかで印象的だったのは、
クリス・ボッティのトランペットと
ジェリー・ダグラスのドブロの演奏でした。
また全曲ちがったヴォーカリストとなっていますが
6曲目の Stoned Soul Picnic (Ledisiのヴォーカル)から
7曲目の Gibsom Street(Susan Tedeschiのヴォーカル)の感じが
個人的には気に入りました。
この2曲だけはメドレー的なつなぎとなっていまして
10曲目のAlison Krauss & Jerry Douglasによる And When I Dieとともに
このアルバムの聞きどころといえるものになっています。

こういうアプローチのアルバムで、記憶に新しいのは
2007年のハービー・ハンコックによるジョニ・ミッチェルへのトリビュートが
ありますが、そのアルバムをプロデュースしていたラリー・クラインが
このアルバムもプロデュースしています。
ビリー・チャイルズとラリー・クラインは古い音楽仲間だそうで
アルバムの曲目解説の裏ジャケットには若かりし日(1975年)の2人の写真が掲載されています。
ハービーのアルバムは、私も大好きで、本国アメリカでは
グラミーの最優秀アルバム賞を受賞しました。
彼は、ビリー・チャイルズの師匠筋にあたる人物で
プレイスタイルにも大きな影響を与えています。

たとえば2000年のビリ-・チャイルズ・トリオ
『ベッドタイム・ストーリー』というアルバムでは
ハービーの曲を6曲も演奏しています。
有名な「処女航海」を聞くと、
フレディ・ハバートとジョージ・コールマンの
二重奏が入ってくるところまでは
ほぼ完璧なコピーというアレンジになっています。
そのアルバムのamazonのレビュー(五郎兵衛・風来坊さん)が
とても興味深いので少し引用します。

「とても柔らかいタッチのBillyのPianoが心地よい。
ちょっとクラシック音楽的なところもあるBillyの演奏は
3曲目のStingの名曲Fragileとも相性が良い。
でも、Billyの本領発揮は全体の6曲(2.4.5.6.8.10)を占める
Herbie Hancockの曲であろう。
本家よりちょっと柔らかく演奏する印象を受けるが、
とても「聴かせる」演奏という印象を受けた。
かつての相棒Chris BottiがMilesより大衆的な演奏をするのと
同じ傾向であると思う。
曲は激しい演奏のものはないが、ミディアムテンポの
Easy Listeningとしても聴けるものである。
アドリブ・メロディともパーフェクトな出来で、
このバランス感覚の巧みさはさすがである。
BillyはHerbieを師として仰いでいるという。
Chrisとの出会いは必然によるものであったのだろうか」。

私がこのレビューのなるほどそうだな~と思った点は
ビリー・チャイルズのピアノの意図しているかどうかはわからない
大衆性を指摘しているところです。
おそらく技巧的には、もっとアバンギャルドなソロも弾けるのでしょうが
それを選択しないセンスといったらよいのか
職人気質ともまたちがう品のよさみたいなものでしょうか。
上記のレビューワーの方の卓見は、クリス・ボッティのトランペットにも
それを感じ取っておられるところで、
このローラ・ニーロのトリビュート・アルバムでよいソロを
聞かせてくれている彼のトランペットも、
ラディカルに振り切れない節度を備えています。

この印象が、このトリビュート・アルバムでも全体のトーンを象徴している
感じがするのです。
むろんトリビュートという性格上の配慮もあるかとは思いますが
けっこうアレンジがアグレッシブで演奏が熱を帯びるところはあっても
どこかラディカルにはみ出さない抑制が働いている演奏なのです。
それがなかなかに味わい深い効果を生み出しています。

(続く)

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