昨日、NHK BSの『クラシック俱楽部』で放映されたロザンネ・フィリッペンスの無伴奏ヴァイオリン・リサイタルがとっても良かったんで、今晩はその感想文のお披露目です。
彼女が組んだ弦楽アンサンブルによるハイドンのヴァイオリン協奏曲などのライヴ映像をご紹介する日記を、少し前に書きました。
https://philm-community.com/wer782ci/user/diary/2024/04/15/24841/
その際に演奏家としての彼女を「勝気なテクニシャン」と評した私でしたが、「テクニシャン」は変わらずですが、「オープンマインドな」っていう形容詞を加えたくなりました。。。
おそらく今回のリサイタルは、彼女がアットホームに開催しているサロンの延長線上にあるもので、曲目紹介をハンドマイク片手に彼女自身が聴衆にしている姿が元々のサロンのムードをなんとはなしに伝えてくれています。
またその話しぶりには彼女の人柄が表れていて
「こういう意図で選んだ曲だから、それはわかっておいてくださいな。でも堅苦しいものじゃないから愉しんでね」って感じのコメントで、音楽を共有する愉しみをオープンマインドな気持ちで伝えてくれているような気がして、私には好ましく映りました。
率直に言って、なかなかにチャーミングな人だな~と思いました。
こういう人柄のひとに「こういうのやってみたいんだけど、協力してくれない?」って頼まれると、断れないっていうか「やるやる!」って言いたくなる雰囲気があるな~っていう感じです。。。
演奏は。。。っていうと、贅沢な技巧が凝らされた楽曲がラインナップに並んでいます。バッハの無伴奏バイオリン・パルティータ第2番に始まり、エネスコのルーマニア様式の歌、イザイの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番「バラード」、クライスラーのレシタティーヴとスケルツォ作品6。
特にエネスコの曲以降は、ロマをはじめとした民族音楽的なダンス基調の曲が続き、そこに今回のサロンのテーマが感じ取れます。
それと無伴奏ヴァイオリンの演奏会っていうと、確かに技巧的な曲の演奏が並びがちではありますが、それがともするとピリピリした緊張感を強いる感じになったり、演奏者の目いっぱいな感じが伝わってきたりしがちで、そういうのはちょっとな~と思っていた私ですが、そこらへんはロザンネさんはうまくさばいていたな~という印象。
どの曲もスケール感があって、余裕のようなものを感じさせると同時に、やはりお人柄ってことでしょうか、おしゃべりや食事の合間を埋めるようなコミュニカティヴなサロンの雰囲気も伝わってくる演奏会でした。
そういう見方でみていたせいでしょうが、バッハの「シャコンヌ」は私がこれまで聞いてきた演奏のなかではいちばん軽やかに響きました。。。あんまり思い入れたっぷりに浸る感じではなく、純音楽的な愉しみを感じさせてくれる、でもそんなに分析的でもない、なめらかなタッチとでも言いましょうか。。。
こういう一言でまとめるのは語弊があるかもしれないですが
開かれた演奏、でも贅沢な演奏
っていう印象でした。
聞いているうちに、だんだんファウストやムローヴァなんかとは、また違った新しいバッハの弾き手なんじゃないかとさえ思えてきました。。。
私の勝手な妄想では、「歌心」っていう意味では、むしろエネスコの弟子でもあるギトリスなんかの面影を感じさせてくれました。
つまり彼女のヴァイオリンは、意外に複雑な要素から成り立っているところがありそうな気がしてきたのでした。。。
今後、彼女がオーガナイザーとしての才能もますます発揮させつつ、演奏家としてどんな足跡を残していくのか非常に興味深く、愉しみな気がした演奏会の映像でした。
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