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ヒジヤン邸訪問記(2024/11 再訪編)その3

日記・雑記
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その1はこちら。
その2はこちら。

さてランチを終えたら後半戦です。

といっても、「課題音源の再生のためにどのように調整するか」というお題があった前半とは違って、後半は互いに聴きたい音源、お気に入りの音源をピックアップしての鑑賞会です。

つまりは「オーディオ」ではなく「音楽」の鑑賞会です。
クラオタの私向けの企画!
嬉しいですねぇ。

このオフ会のしばらく後、ヒジヤンさんは「オーディオ オフ会のようなコンサート」にいらしたそうですが、逆にこちらは「コンサートのようなオーディオ オフ会」と言えるのかもしれません(笑)

お品書き:
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第2ラウンド:第2回新音源
⑦ミリヤム・コンツェン/フランク ヴァイオリン・ソナタ 第1楽章 ①
⑧弦楽四重奏 ブラジャーク/ハーゲン比較 Praga レーベル/Myrios Classics レーベル
⑨ヴィヴァルディ 四季 カルミニューラ新旧比較 冬比較
⑩ツィメルマン/ショパン ピアノ協奏曲 第1楽章 ①
⑪ハイドン ホルン協奏曲 第1楽章 ①
⑫ オペラ トゥーランドット トゥーランドット姫登場後(第2幕) 2-2~
⑬ビゼー 交響曲 第1楽章①
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個々の盤についてコメントしていきます。

 

⑦ミリヤム・コンツェン

ARTE NOVA(現OHMS)レーベルが日本に紹介された際に見かけて当時気になったCDですが、そのまま機会が無く、今回初めて試聴。

とても素直なヴァイオリン。丁寧な演奏ですが窮屈さは無く、とても伸びやかな演奏。若干20歳でこの演奏というのがすごい。
ドイツのヴァイオリニストですがどこか中央アジアっぽい風貌だなぁと思っていたら、後で調べたところなんと母親が日本人とのこと。
どちらかというとヴァイオリンをフューチャーしているCDなので、ピアノの音はやや遠めではあるが、伴奏も上記のようなコンツェンの演奏方向と良く合ったバランスの取れたもの。
聴いていて、演奏の良し悪しや演奏者の個性に気を取られずにひたすら「良い曲だなぁ」と思わせる素敵なCDでした。
現在ベルリン芸術大学の教授をされているそうで、Youtubeで比較的最近の演奏動画を観たところ、曲そのものに語らせるような癖のない伸びやかな演奏スタイルは相変わらずで、ドイツ国内を中心に活躍中のようです。

 

⑧弦楽四重奏 ブラジャークSQ/ハーゲンSQの比較

これはヒジヤンさんから私へのお題で「以前のオフ会でゲストと自分の好みが逆になった盤で、どう思うか」との質問を頂きました。

ヒジヤンさんはハーゲンSQを好み、ゲストはプラジャークSQを好んだ、とのこと。

2枚のCDをざっと見た瞬間に大凡その原因の予想はついており、実際に音を聴いて答え合わせしたらやはりその通り、というものでした。

プラジャークは現代のSQらしい機能性をもちつつも、豊かな響きや愉悦の中に音楽性を成立させようとするアプローチ。勝手な印象ですが、東欧・チェコ系のSQはこういった響きの豊かさを前面に出すタイプが多い気がします。
ハーゲンはひたすら楽譜に鋭く切り込み、甘さを除いて純粋に音を極めていくことで曲のコアを浮かび上がらせようとするアプローチ。他の弦楽四重奏団ですと、例えばディオティマSQなんかはこちらのアプローチ寄りかと思います。近現代の作品を得意とする団体はこのタイプが多い印象です。

どちらが良い・悪いというわけではなくて、完全に、曲を実体化させる際の表現方法の違いとそれに対する聴き手の好みの問題だと思います。
一般的にはプラジャークSQのアプローチのほうがメジャーで好まれるでしょうし、一方ヒジヤンさんがハーゲンSQのほうを好むのも納得です。ヒジヤン邸のオーディオの音もそのような嗜好が反映されている気がします。

ちなみに私はどちらのアプローチも好きです。

 

⑨ヴィヴァルディ 四季 カルミニューラ新旧比較 冬比較

これは前回訪問時に、CDラックに並んでいたのを見付けていたのでリクエストしたもの。
単純に「これらの演奏が好きだから」です。オーディオ要素は完全に無視した選択です(笑)


やはり好きな演奏を良い音で聴くのは楽しいですね!
ヒジヤン亭は音のキレが良いので、こういったバリバリ弾きまくる弦の演奏は映えるためなおさらです。
演奏としては新旧両盤ともそれぞれの良さがあって好きです。
全体的には、より軽やかで自然、かつアレンジが自在な旧盤のほうに手が伸びますが、新盤のあざといまでのやり過ぎモリモリな効果満点の演奏も大好物です。
中でも夏の第三楽章だけは、戦闘機が轟音ですっ飛んでいくような新盤を選びます。

 

⑩ツィメルマン/ショパン ピアノ協奏曲 第1楽章 ①

これも前回訪問時に見つけてリクエストしたもの。
こちらも有名な盤ですね。ピアニストのツィンマーマンが、このプロジェクトのためにパトロンを募り、オーケストラを作り、みっちりと徹底的にリハーサルをした上で、弾き振りで世界ツアー&録音を行った、という渾身の一作です。
聴いたのは久々だったのですが、色々な発見がありました。
特に録音。ピアノの音の大きさや響きの録り方がいつものドイツ・グラモフォンっぽくないです。
具体的には、ピアノのバランスがかなり大きめ、かつピアノ本体から客席に向かって放射される響きをかなり控えめにしている。おそらくですが、弾き振りするピアニスト(=作曲家のショパン自身でもあります)に直接聴こえている音を志向したのかな、と。
ツィンマーマンはかなりこだわる人なので、この録音の方向性も彼の意向が入っているのではないかと想像しています。

 

⑪ハイドン ホルン協奏曲 第1楽章


気心の知れたプレイヤー同士(同じオーケストラの首席がソリストで、しかも指揮者なし)の演奏のためか、オーケストラもソリストも同質というか、完全に同じ方向を向いており、どこを切り取っても全く違和感が無い演奏。
協奏曲というと、ソリスト・指揮者・オケのぶつかり合い、その化学反応がどうなるのか、といった観点で聴くことが多いのですが、一切の衝突無く全て流麗に整った演奏というものも良いですね。

 

⑫ オペラ トゥーランドット トゥーランドット姫登場後(第2幕) 2-2~

実演の舞台では絶対にこのようには聴こえないが、純粋にヴァーチャルな体験として楽しむには無類に面白い、映画的な演奏。
ソリスト、合唱、オケのバランス、方向、距離感などなど徹底的にコントロールされており、録音芸術というワードがぴったり。
実はカラヤンはこの録音セッションでしかトゥーランドットを振ったことが無い(レパートリーに入っておらず、公演記録は一度も無い)、という特異な演奏でもあります。逆に、だからこそヴァーチャルに作り込むことができたのかもしれません。

 

⑬ビゼー 交響曲 第1楽章①

高音質で有名なハイティンク盤。
初めて聴きましたが、楽器の質感のリアルさ、自然なホールトーン、トゥッティ部分でも混濁しないクリアさなど、高音質録音と言われるのも納得です。

演奏は The 中庸 で、びっくりするくらいバランスが取れており、この演奏スタイルも高音質に一役買っていると思われます。

ただ・・・極めてバランスの良い、とても立派でマイルドな演奏・・・ゆえに、曲の弱さがくっきりと見えてかなり退屈です。
え、こんなにつまらない曲だったっけ?と思うくらい。
例えば、プレートルが指揮した盤(バンベルク交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団)だと、弾けるようなエネルギーやカラフルさ瑞々しさによって、若書きゆえの曲の弱さをカバーしてくれるので物足りなさを感じさせないのですが・・・。
 
(続く)

コメント ※編集/削除は管理者のみ

  1. 眠り猫さん、「コンサートのようなオーディオ オフ会」の表現はいいですね。うれしくなります。

    演奏派の猫さんでしたので、新しい音源は演奏面に注力したプログラムとしました。この面を察知してもらえたことは喜ばしいことです。
    ⑧の弦楽四重奏の比較では、演奏派の猫さんならでは視点での解析に納得しましたし、ツィメルマンのショパンの録音に対する分析も猫さんならではでしたね。
    トゥーランドットの音源に対する見方は、ほとんどオペラを観ない自分には理解が難しいコメントです。
    ビゼー 交響曲は、音も演奏もよいのだけれど、曲がつまらない点は同意でした。音の良さをアピールしたくなるオーディオマニアのサガが強く出ていました。この曲だけは、音量も自分の音量でしたし・・・

    ラストはマーラー交響曲第8番の話ですね。ご自身で聴きに行かれたコンサートの録音と優秀録音盤の比較試聴です。こちらも楽しみにしています。

    • ヒジヤンさん、コメントありがとうございます。

      改めて思い返してみても、やはり私はオーディオ的な音ではなく演奏を中心に聴いているんだなぁと実感しますし、そこに合わせてオーディオのオフ会としてはだいぶ毛色の違った形にして頂いたので楽しかったです。
      同時に、いつもと違う環境で聴くと同じ音源でも異なった視点で気付くこともあり、これもまた興味深いです。

      残りはマーラーだけなので、もうあと一息、頑張って書き切りたいところです。

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