直すべきか、買い替えるべきか、「それが問題だ!」―10年寿命説?費用対効果考

日記・雑記
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皆さんは、お使いのAV機器が不調になった時、修理に出すタイプでしょうか、それとも買い替えるタイプでしょうか?どちらにするかは、製造後何年経っているのか、や修理代の金額、そしてなによりもその製品に対する「思い入れ」の強さ、などの変数があるかと思います。

私は就職して数年たって地方回りから東京に戻った頃、ボーナスを握りしめて(笑)、1000M用の新たなプリメインアンプを買おうと秋葉原に行き、いろいろと試聴させていただいた結果、アキュフェーズの400シリーズの数年落ちの中古品に最終的に決めたことがあります。その時の店員さん(確かテレオン)の決め台詞が、「アキュは故障していなくてもメインテナンス補修をいつまでもしてくれる数少ないメーカーです。これを買ってメインテナンスに出せば、新品同様になって戻ってきます」でした(笑)。それをまともに信じた青年(笑)は、手元に届くなりすぐにアキュフェーズに電話。

「新品の性能に戻すにはいくらかかりますか?」

「出荷時の性能を取り戻すのは無理です。どんなにパーツを交換しても例えば10年前の製品の場合、新品時のせいぜい90%ぐらいまでにしか性能を取り戻せません」

・・・・・アキュフェーズのエンジニアは正直なんだと思いました(笑=ただしこれは30年以上前の、電話でのやり取りです。現在のアキュの正式見解は異なる可能性があります)。「20万円出してくれたら新品同様にしてお返しします!」といわれたら、素人の私は払っていただろうし、戻ってきた製品が本当に新品同様の音を出しているかどうかなんてわかるわけがないのに(笑)。結局10万円弱コースぐらいのメインテナンスをお願いした記憶があります。送付用の箱まで送ってきてくださり、噂通り、対応は完璧でした。ただし、この時のやり取りから、私は「<メインテナンス>では(パーツをグレードアップしたり回路を変更したりする<改造>なら別かも?)工場出荷時の性能は<絶対に取り戻せない>」ことを知り、それ以来、<改造>などする知識・能力のない文系人間の私は、10年選手以上の中古品購入は絶対に避け、基本的には新品(またそれに近い品質のもの)だけを購入するようになりました。

こうした経験を経て、今回、たまたま4種類のAV機器の不調・不満が同時期に発生し、それぞれ修理・買い替え・入れ替えという異なる対応をしましたので、それらの判断を分けたのは何だったのかを備忘録風に整理してみました。
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<ケース1:サブウーファー不調>
対象製品
Fostex CW250A ¥110,250(税込) 発売:2010年11月中旬
←発売直後に、新品購入。最初は1台だけ購入したが、音が気に入ったので続けて2台追加購入し、計3台保有。

症状
電源を入れても、しばらくボリュームが小さく、またノイズも入る。後ろのパネルのスイッチ類(ボリュームツマミや位相反転スイッチなど)をいじると好転する。

診断・見積もり
スイッチ類の経年劣化による接触不良。背面パネルのスイッチ類全取り換えが必要。

修理代 
12,540円/1台 3台分計37,620円 (本体価格の、約11%)

対応
元々、SWのシステムアップをいつかはやりたいとは思っていたので、当初はこの機会に買い替えるつもりであったが、ほぼ同時にプロジェクターも故障してしまい、しかもそれが買い替え必然となり(後述)結構な予算を取られたため、SWの方は結局、修理を依頼した。他の2台はまだ目立った症状は出ていなかったが、同時期の製品のため、Fostexと相談し、部品在庫が残っているうちにメインテナンス補修として同様の交換を実施依頼した。

この間、Fostexのカスタマーサービスとは何度かメールのやり取りをし(この対応は非常に良心的)、「スピーカーなどは目に見える劣化が無くとも通常10年経過しますと初期性能から大きく劣化します。その変化は少しずつ進行しますので認識しにくい事が多く、可動部分の樹脂の硬化、ウレタン系部品の加水分解などにより特性が得られません」とはっきり書かれたメールをいただいた。それでも、「今回の修理代金相当でサブウーハー新規ご購入可能製品のグレードを比較いたしますと明らかにCW250Aを修理してお使いいただくほうが質的に良好だと考えられます」とのことで、今回、修理を依頼することに決めた。結果として、心なしか(笑)、前より音が弾むような気がする。ノイズフロアも下がったような気が(笑)。
ただ、Fostexからは、「10年以上ですと電源入れない場合でも各部品が寿命です。対処しても劣化は防げません」と書いてこられたので、次に不調が出た場合は、<これ以上の延命措置はせずに順次買い替える>ことにしようと思っている。[:image1:]

<ケース2:プロジェクター不調>
対象製品
JVC DLA-X75R ¥892,500(税込) 発売:2012年11月下旬
←発売直後に、新品購入。

症状
映像が出てから数分経過すると、青緑の縦縞が画面全体に約10センチ間隔ぐらいで発生する。一度発生すると消えることはない。リモコンの操作に対する反応が鈍い。

診断
オプチカルブロック交換、基板交換

修理代見積もり
572,900円(本体価格の、約64%)

対応
買い替え→JVC DLA-V9R ¥2,100,000(税込) 発売:2018年10月下旬
←購入キャンセルによる新古品を購入=1,200,000円(新品価格に対し、約57%)

このケースは、購入後約10年経過している商品の修理に、その購入時価格の6割以上をかける価値があるか、という問題である。もしこれが「親の形見」とか、「世界で3台しかない珍品」とかなら、修理する価値はあると思うが、「完動品」と謳っている同機種の中古品がAVACあたりで半年ぐらいの保証が付いて20万円ぐらいで売られている。しかも、先のFostexとのやり取りでもあったように、「10年経過」したこの製品は各パーツの「寿命が尽きている」と見るべきで、一度修理をしてもすぐにまた別の箇所が故障する可能性は高いといえる(同じ個所の故障でない限り保証再修理は受けられない)。しかも、アキュフェーズのエンジニアの言うように今回60万円をかけてもオリジナルの性能の9割未満しか戻らず、さらにこの10年間の技術革新を考慮すれば、現時点でこの金額で買える新製品の方が恐らく総合的には性能が良いであろう。
ゆえに、60万円近いおカネを出して修理をする合理性がないと判断(もう少し安ければ修理でもう1,2年しのぎたかったが・・・)。

実は次買うなら同じビクターで最新型のレーザータイプのものを買おうと密かに心に決めていたのだが、「今注文しても納品が夏以降になる」との情報が入ったので今回はレーザーの新製品はあきらめ、即納品で探すことに。ちょうど、とあるインストーラー業者が、取り付け直前に客にドタキャンされたV9Rを持て余していて、すでに開封してしまっていたため未使用品(メーカー保証付き)にもかかわらず、比較的安く入手することができた。[:image2:]

<ケース3:SACDプレーヤー機能の不満>
対象製品
LUXMAN D-06 ¥525,000(税込) 発売:2009年3月
←発売3年後に、新品購入(2012モデル)。

不満点
現状の不満点として、①USB-DACやネットワークプレーヤーとして使用できない②ストリーミングサービスが利用できないーの2点があった。

対応
東京の書斎用に昨年購入したものと入れ替え→Marantz SACD 30n ¥327,800円(税込)
(前製品に対し、約62%の価格)

このLuxmanのSA/CDプレーヤーももう10年になるので先のエンジニア目線で言えば「製品寿命は尽きている」のだろうが、動作や音に問題はなく、なによりラックスマンらしい音が気に入っていて愛用している。専ら、OCTAVEのプリメイン経由でAmator IIIを鳴らすときだけに使用していたが、USBもLANも無いので、やはりソースがSA/CDに限定されてしまうという難点に対し、徐々に不満を募らせていた。
一方、昨年、DAC・ネットワークプレーヤーとしても使え、Amazon Musicも聴けるプレーヤーとして東京の書斎で購入したMarantz SACD 30nだが、その年末にArcamのSA30を購入したことでネットワークプレーヤー機能が重複。しかも今年に入りApple 4K TV端末を書斎に導入したためストリーミングミュージックもApple MusicがAVシステムの方で聴けるようになり、SACD 30nの存在価値がSA/CDプレーヤー機能だけとなっていた。同じSA/CDプレーヤーとしてなら音質はD-06にアドバンテージがあると感じていたが、先日書斎のアンプを替えたときに改めて30nを<真剣聴き>して(普段はBGM利用=笑)、このSA/CDの音が意外にマランツらしからぬ(?)、骨太の音が出ていること(オリジナルDACらしい)に気がついた。そこでこの際、伊豆における2ch再生時の多少の音質の低下には目を瞑って(笑)、<機能面の伊豆と東京の平準化>を狙って、二つのSA/CDプレーヤーの入れ替えを決断。

結果として、Amator IIIでは今まで聴くことができなかったストリーミングの音源や、聴くのが面倒であったNASの音源に簡単にアクセスできるようになり、「便利」になったことだけは間違いない。SA/CDの音は、Marantzに替えて高域は華やかさが増し、低域に関してはLuxの深みのあるふくよかな音から、弾むような力強い塊感のある低音に変わった。これはJazzなどでは好ましい変化だが、チェロなんかだとLuxの方が個人的には好みだ。また残念ながらボーカルの口は少々大きくなった(伊豆の本命はマルチの再生なので、2chシステムは所詮サブという言い訳もある=汗)。いうまでもなく、今後グレードアップすべきポイントではあるが、今回かなり出費がかさみ、さすがに「打ち出の小づち」もないので当面はこれで我慢しようと思う(笑)。[:image3:]

<ケース4:マルチチャンネルパワーアンプ不満>
対象製品
YAMAHA MX-A5200 ¥336,000(税込) 発売:2018年12月中旬
←発売直後に新品購入

不満点・経緯
かつて8805と組み合わせていた時には感じなかったが、AVプリをISP MK2に代えるためにAVACで試聴させてもらった時の、同じStormのマルチチャンネルパワーアンプとの組み合わせの精緻で音離れのよい音がずっと耳に残っていた。ただし、このヤマハのアンプは製造後まだ4年ほどなので、初期性能よりは劣化しているであろうが、まだ「製品寿命」ではないため、すぐの買い替えは真剣には検討していなかった。
その後、グランドスラム邸でのAuro3Dの試聴(拙日記「イマーシブ)(3D)オーディオとルームアコースティックの関係考-グランドスラム邸再訪を機に」
参照)を経て、LCRのSonetto VIIIのパワーアンプを強化(1台のSPに対し2台4ch分のSTA-9を投入)、さらにマルチではサラウンドとして使用しているAmator IIIのパワーアンプも同じく強化(Octave)したことで、音色的に、1階のフロアのベースの5chの音と、それ以外のSPの音の間に違和感(特に力感・迫力の差)があるように感じ始めていた。特に2Fのスピーカー群は、グランドスラム邸での経験(B&W805)から、「上部のSP群は高域が冴えている方が空間表現に優れるのでは?」という印象を持っていた。拙宅の場合、2Fスピーカー群7台は新築時に作りつけてしまっているのでケーブルも含めて取り換えは難しいため、このSP群の音を変えるにはプリAnd/Orパワーアンプの変更しかないと常々考えていた。

かつて、Storm のAVプリを購入した際に組み合わせて試聴した同じStormのマルチチャンネルパワーアンプは、その清明・鮮烈さにおいて、手持ちのMX-A5200との違いを実感したが、今回は、予定外のプロジェクターを購入したばかりだったので、金額的に二の足を踏んでいた。

PA16 MK2  ¥1,430,000円(税込) 発売:2020年9月

対応
買い替え→PA16 Elite ¥1,650,000円(税込) 発売:2018年8月
←展示品を購入=648,000円 (新品価格に対し、約39%)

そんな中、Storm の輸入代理店のNASPECより、新型の16chマルチパワーアンプである、PA16 MK2の自宅試聴をさせてもらえることとなり、同時に、偶然にも、同製品の旧モデルの展示品の棚卸セールがあるとの情報が入ったので、両方とも伊豆の拙宅に取り寄せて比較試聴をすることにした。旧モデルとはいえ、ショップ販売なのでメーカー保証はフルに付く。8chモデルは新旧製品で機能的な差がある(ブリッジ接続の可・不可)が、この16chモデルは発売時期が新旧で2年しか違わないこともあって同じPascal社のD級アンプ技術を採用し、カタログ上の主要諸元のデータには全く差がない。しかもなぜか定価は旧モデルの方が20万円強高い(つまり現行モデルの方が<廉価版>ということになる)。加えて「展示品」ということで定価の約6割引きという値引き率の大きさも魅力だった。

パワーアンプは元々スピーカーと並んで、オーディオ機器の中では技術革新の速度が比較的遅い製品分野といわれている(ただし、これは10年前の「新品」と今の「新品」を比較した場合の話。製造後の年月がかなり経過している中古の場合は、今回スピーカーメーカーのFostexが「通常10年経過しますと初期性能から大きく劣化」していると言い切っているのは記憶に留めたい)通り、新旧モデルの性能差・音質差については、二名によるブラインド比較試聴の結果、PA16 Elite とPA16 MK2との間に、それほどの差がなかった(ブラインド試聴実験にご協力いただいた、K&Kさんに感謝します。詳細については機会があれば後ほど稿を改めたい)。カタログやHPにも新旧の「違い」についての記述が一切ない(というより、HPのPA16に関する説明文は、EliteとMK2に関しては一言一句たりとも変わっていない。そのままコピペしている=笑)ので、念のため、輸入代理店のNaspecに「ブラインド比較試聴してみたのだが、明確な差が分からなかった。新旧モデルで改良点や機能面での違いがあれば教えて欲しい」と問い合わせてみたところ、折り返しの返事に明確な改善点の説明はなく、「自分は新旧を比較試聴していないので、分からない。最後はご自身の試聴結果で判断して」(大意)というような返答であった(笑)。よって、すぐにマニュアル的に回答できるような機能的な大きな改良があったわけではない(あれば当然メーカー側から新型のアピールポイントとしてプレゼンを受けていて即答できるはず)とみて、私とK&Kさん二人の印象では聴感上の音質的な差も少ないことから旧モデルの展示品でもこの価格であればかなりお買い得と最終判断した。[:image5:][:image4:]

ヤマハのアナログアンプから入れ替えた音質面の印象(ただし、このマルチパワーアンプがドライブしているのは、マルチの基本の5ch以外のSP群)だが、音楽ソースはもう少し聴き込んでから判断したいと思うが、手っ取り早くはっきりとした違いが分かるのは映画音響。例えば、『ゼロ・グラビティ』冒頭の宇宙遊泳シーンでは、ヤマハに比して、空間上の動的音像定位が明確に。『ブレードランナー2049』では、雨の音、波の音、銃声などのリアリティが増す。やはり狙い通り、2FのSP群をドライブするパワーアンプを変更して特に高域のクオリティを上げることで、全体的に空気が澄んで、「ハイレゾ感」あふれる音になった。しかし、このそこまで大きくはない「差異」(K&Kさんは<人間>Dirac Live=位相調整の効果の方が大きいとおっしゃっていた)に、この金額の追加投資が見合っていると考えるかどうかは個人差があるだろうが、私自身は今回の変更の判断に満足している。ちょうど、今月末にグランドスラムさんが拙宅にお見えになる予定になっているので、拙宅の空間の音響にどのような印象を持たれるか(ただし、残念ながら彼は「Before」を知らないが。Before /Afterを体験されたのは今のところ、K&Kさんのみ)。

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以上が、この春の伊豆の拙宅のシステムのシャッフルの経緯です。元々「この春にはパワーアンプかSWをテコ入れしようかなあ」と考えていて、おこずかいを溜めていたのですが(笑)、SWとプロジェクターの不調という予定外の現象が出て、結局SWの修理、SACDプレーヤーの入れ替え、プロジェクターとマルチチャンネルパワーアンプの買い替えとなりました。

これらは、アンプを除いていずれも<10年選手>でしたので、「ゆでガエル」のロジックで自分では気がつかないうちに確実に性能劣化をしていたはずです。上述したアキュフェーズやFostexのエンジニアのコメントもあり、自分的には、スピーカー以外はまあ、10年を超えるとそろそろかな、というイメージを持っていますので、買い替え適期だったと思っています。逆に言えば、今回買いそろえたものは、あと10年は無故障で楽しませてくれるといいなと願っています。

みなさんは、どのような基準で修理・買い替えを判断しておられますでしょうか?

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