ミューザ川崎か?横浜みなとみらいか?の対決に決着を付けるべく、フェスタサマーミューザKAWASAKI2023の新日フィル公演にいって来ました。
数年前に、ミューザ川崎に軍配を上げて以来、横浜みなとみらいには足を運ばなくなっていたのですが、久しぶりにみなとみらいホールで聴いたところ低音の響きに驚きました。もしや、みなとみらいホールの1年半に及ぶ大規模改修によって、自分好みの音に変貌したのではないか?と頭に浮かんだからです。今年の5月から幾度となく、みなとみらいホールとミューザ川崎のサウンド確認をしてきました。当然のことながら、ホールの音は座る位置で変わります。そこで、相対した位置で聴き比べることで判断しようと言う試みです。
みなとみらいでは、ステージ近傍のa)前方、b)右サイド上方、c)左サイド上方の3か所で聴きました。ミューザ川崎では、b)右サイド上方で聴いています。過去にミューザ川崎で聴いて来た感触からは、c)左サイド上方が好みに合うことは考えられないので、今回のa)前方(1階席7列センター)を聴けば決着が付けられると考えたのです。
聴きに来たのは、サマーフェスタの新日フィル公演です。
指揮:広上淳一(井上道義氏が病気のための代役だが、井上氏の考えを踏襲したとのこと)
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
<演奏曲>
①ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 Op. 68
②ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67
<視聴位置>
・1階席7列目センター
この公演でもプレコンサートが実施されました。モーツアルトのディヴェルティメント他の弦楽五重奏です。大ホールで演奏される室内楽ですから、音量が小さいのはやむを得ないですね。弦楽器の各パートの首席演奏者によるものでしたが、目に留まったのが第2ヴァイオリンでした。この話は本題とはそれますので、付録として後で書こうと思います。
プレコンサート後の休憩が終わり、メインに入りました。ベートヴェンの交響曲二つですが、今回の演奏の趣向がとても興味深いものでした。①第6番「田園」は5弦6型(ヴァイオリン6本)で演奏し、②第5番「運命」は5弦16型(ヴァイオリン16本)で演奏するというのです。3倍近い編成の大きさの違いです。こんな編成の違いで同じ時に行う演奏は聴いたことがありません。
①ベートーヴェン:交響曲第6番 「田園」 感動度☆☆☆☆☆
大ホールにこの編成では、さすがに物足りなかったです。作曲された当時はこの規模で演奏されたのでしょうが、これだけ広いホールでは音が散ってしまうようで響いてきません。気合を入れて聴いていたつもりでしたが、楽章が進むにつれて集中が途切れて、瞼が閉じそうになるのをこらえながら聴いていました。嵐のシーンでは、管楽器群が追加メンバーとして参加しましたが激しさを感じ難かったです。
②ベートーヴェン:交響曲第5番 「運命」 感動度★☆☆☆☆
「田園」と比較して大きな編成で、ステージいっぱいに広がるオーケストラ群に圧倒されます。ですが、冒頭の「ジャジャジャジャーン」が思いのほか身体に来ません。音量の大きさはあり、音が空間に大きく広がり演奏の大きさは感じるのですが、身体に響いて来ないんですね。中間の演奏では、さすがの大編成で大きな広がりと力強さを感じ、ベートヴェンのよさを堪能しました。ですが、ベートヴェンが多用するppからfffへの立ち上がりが物足りません。ここがポイントという場面での力やキレが不足してしまうんですね。新日本フィルの実力と言ってしまえばそれまでですが、多少音が荒れたとしても力いっぱいの立ち上げを示して欲しかったです。両翼型の配置も影響していたのかもしれません。
<オーディオとの比較>
比較音源は、サイモンラトル&ベルリンフィルのベートヴェン交響曲全集からです。やはりベルリンフィルの演奏の力は大きいですね。
・「田園」では、ホール大きさに対する編成は致し方ないにせよ、嵐のシーンの激しさが違います。オーディオ再生では、静かな田園の情景の場面から、嵐のシーンになると音量を絞りたくなるようなダイナミックレンジと激しさを感じるのですが、今回の生では感じられませんでした。
・「運命」では、これだけ大きな編成での演奏でしたが、冒頭のインパクトはオーディオが上です。中間部の大きな広がりはオーディオでは出ないですが、pからfffへの立ち上がりはオーディオが上です。演奏に不満を感じてしまったのは、オーディオで聴く演奏との違いからなのだろうと思いました。
コンサートで、編成の大きさによる音楽の聞え方の違いを聴いたので、帰宅後に普段よりも大きな音量で聴き直してみると、生演奏よりもオーディオの方がベートヴェンのよさが出せると思いました。やはり自在に音量が調整できるオーディオのご利益ですね。16本も弦楽器群を用意しても出せない力強さがリモコンを押すだけで出せてしまうオーディオのありがたみを再認識しました。さらに、ベルリンフィルの演奏も瞬間に呼び出せてしまうのですから素敵です。
さて、今回の目的は「ミューザか?みなとみらいか?の対決に決着を付ける」ことでした。ここまでの感想で結論は見えているようです。
・プレコンサートで感じた第1印象の、「よい響きだがクリアさが不足している」「音の広がりがあるも、凝縮された濃さが足りない」が全体を示していました。みなとみらいの方が音がクリアで凝縮されて聴こえます。
・「田園」で感じた物足りなさも、「運命」での力強さも、みなとみらいホールでの演奏だったらもう少し違ったように思います。まして、ホールが楽友協会黄金のホールだったら、嵐の激しさも、仰け反るような力強さも感じたのだろうと思えました。
・でも、音の立ち上がりの鋭さや激しさは演奏の力ですね。ベルリンフィルと新日フィルの力の違いを感じてしまいました。もしかして、今回の企画主である正指揮者の井上道義氏が振っていたらもう少し違ったのかもしれません。
・以上、「響きの心地よさよりも、音のクリアさを」「広がりよりも力強さを」求めてしまう自分には、みなとみらいホールの方が相性がいいようです。
・数回に及ぶミューザ川崎と横浜みなとみらいのホール音響の比較での決着がつきました。
・今年の秋に多数来日する海外オーケストラのコンサートは、ウィーンフィルのみなとみらい公演を狙うことにします。
<付録>
プレコンサートの第2ヴァイオリンに惹かれました。クラシック音楽もエンタメですね。
調べてみると、20年間の渡米生活に終止符を打って帰国した”丹羽紗絵”さんでした。
米国で室内楽のプロ活動をしていたとのこと、2022年に日本に戻り国内での演奏活動をすることにした様子です。第1ヴァイオリンとチェロとの合わせのやり取り、笑顔での演奏がとても魅力的だったので、さっそくFBからメッセージを入れました。
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ヒジヤンさん、こんばんは
どちらのホールも聞いたことはありませんが、比較的新しく近代的なホールですよね。楽友協会は大変古い建築なので、クラッシックには石造りを基本とした古建築がむいているのかな~と思いながら拝見しました。また、現代のホールはクラッシックだけでなく、ポップや他の系統のコンサートにも使うので、それが根本的な差を生み出しているのかなとも思いました。
>冒頭のインパクトはオーディオが上です。中間部の大きな広がりはオーディオでは出ないですが、pからfffへの立ち上がりはオーディオが上です。
これはヒジヤンさんのシステムならではの優劣かもしれませんね。生よりもオーディオが上とは!(流石)
Tomyさん、コメントありがとうございます。
ミューザ川崎も横浜みなとみらいホールも、関西では知名度が低いのですね。両方とも神奈川県にあるホールですが、まずまずのホールです。サントリーホールなどは、知名度は高いですが音は濁り広がり系で好きになれません。
この二つのホールですが、10年前はミューザ川崎が透明に澄んだ音で好きだったのですが、どうも年々音が濁ってきているような気がします。反対にみなとみらいは、あまり特徴のない音だったのが、大改修後は低音の響きが増えて自分好みに変化している気がします。以前とは評価が逆転してしまいました。
>これはヒジヤンさんのシステムならではの優劣かもしれませんね。生よりもオーディオが上とは!(流石)
いやいや生は本当に水ものです。
最高の生と自分のオーディオを比べたら、足もとにも及びません。
最低の生と自分のオーディオを比べたら、比べるまでもなくオーディオがいいです。
そこそこの生と自分のオーディオを比べたら、よい面わるい面です。だから面白いのです。
ですが、生を聴きに行っているのは勉強になるからです。オーディオのためにも、生演奏のためにも、音に対する認識の掘り下げのためにも有意義ですし、楽しみでもあります。
その中でも、ウィーン楽友協会ホールは音も最高ですし、勉強になることばかりです。一番すごい所は、「ホールのどこで聴いても基本的には同じ音で聴ける」点ですね。「響きをたっぷり感じるのに明瞭に聴ける」そして「ホール全体が鳴っているように聴ける」・・・これぞ「音楽を聴くためのサウンド」だと思いました。
マルチスピーカーが狙っているところも基本的には同様でしょうし、2chもスピーカーと部屋の織り成す音響で同様な効果は出せるんです。そして、単純な四角形のホールが一番音がいい(一番好き)ですね。普通のリスニングルームも捨てたものではないということです。