MoFi騒動

日記・雑記
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PHILE WEBコミュニティで何度か書きましたが、MoFi騒動は続いています。

(MoFi騒動: Mobile Fidelity Sound Labがあたかもアナログマスターテープから全工程アナログでヴァイナルレコードを作成していると宣伝していたのに実際は10年以上前からマスターテープをDSD256、あるいはDSD64でファイル化してそれからカッティングしていたという事実が暴かれた件)

まずはマスメディアが反応しました。

Washington Postが記事を掲載しました。

How a Phoenix record store owner set the audiophile world on fire (https://www.washingtonpost.com/music/2022/08/05/mofi-records-analog-digital-scandal/)

 

そして The Absolute Sound誌は直接記事にするのを憚ったのか、編集者Robert Harleyの質問状にMoFi社長のJim Davisが回答する形式でBlogに載せました。

MoFi President Jim Davis Addresses the Digital LP-Mastering Controversy(https://www.theabsolutesound.com/articles/mofi-president-jim-davis-on-the-companys-mastering-process)

 

たぶん会ってインタビューをしたのではなく質問リストを送りそれに回答したものでしょうからすべての質問に答えたのかどうかわかりません。

 

今回の問題では様々な人間模様を見せてもらえました。

まずはオーディオ業界、音楽業界からの反応がほとんどないこと。 いわゆる「忖度」と言うやつでしょうか。

MoFiエンジニアにインタビューして事実の暴露をさせたThe ‘In’ GrooveのMikeも当人がレコード販売を生業にしていているからかややMoFiの肩を持つ対応です。

同業者Analog ProductionのChad KassemはMoFiのことには直接触れないけどうちでプレスするヴァイナルは全工程アナログでその内容も隠すことなくすべて公開していると、まあこの機に乗じて自社宣伝をしています。

オーディオの評論家、ジャーナリストもMoFiを非難することはしません。 The Audiophiliacを自称するSteve Guttenbergは自身のYoutube channelで話題を取り上げましたが、ディジタルが介在していようがいまいが音が良いんだから問題ないということのみを強調しています。 意識して問題の本質(MoFiの嘘)には触れません。

 

アナログご意見番のMichael Fremerの対応はひどいものでした。 まずはMoFiのインタビューに関しては自分が招かれなかったからなのかジャーナリストじゃないMike EspositoがMoFiの嘘を暴いたことが気に入らないのか、非常にご立腹でほとんどの質問にMoFiエンジニアは回答していたにも拘わらず本当のことは何も聞けなかったとThe ‘In’ GrooveのMikeを非難するような言葉をまくしたて、さらにはディジタルに関してはMoFiエンジニアがDSDを使っていると明言したにもかかわらず何度もDXDと繰り返すなど、めちゃくちゃでした。 

そのことをWashington Postの記事で指摘されたらそれに反応して非難なんかしていないと言い訳たらたらのビデオをYoutubeに上げる始末。

 

業界関連者以外のYoububerの反応のほとんどは本質をついています。 MoFiは嘘をついた。 単に宣伝の説明があいまいだったなどと言うものではなく過去何度も録音全行程でアナログしか扱っていないと明言した文や映像が残っています。 MoFiは会社の方針としてDSDを使っていることを隠してきたのは明白です。

(実際インタビューに答えたエンジニアも数年前のオーディオショーでディジタルは使っていない、すべてアナログだと明言しています。 完全、明白な嘘です。)

 

もう一つの視点、ディジタル対アナログ論争に終止符を打ったのか。

今回の件では図らずも大きな副作用を生みました。 つまり今まで高額のMoFiヴァイナルを購入してその高音質を絶賛していたのに実は多くのアルバムはDSD64、DSD256に変換されたものからカッティングされていたのに誰も気づかなかった、指摘しなかったという事実です。

MoFiの作品の中にはあまり音が良くないものもあった、今思えばそれがディジタル音源だったからだなどと言い訳をする人も何人かいます(Michael Fremerもその一人、彼はディジタル音源か否かは聞き分けられると主張しています)が、もうこれは言い訳にすぎません。

音の良し悪しの原因は様々です。 DSD変換した音源を使ったアルバムでも絶賛されている作品が多いのだからその言い訳は通用しません。

 

世の中にはアナログ絶対主義者がいてMoFiを訴える動きも出ているようですが、現実的にはほとんどの消費者は音が良ければどっちでもいいという意見でしょう。

でも、それとMoFiが明らかに消費者をだましていたということとは別問題です。

 

とはいえMoFiの売り上げが下がるということはまずないでしょう。 逆に話題になって注文が増えるかもしれない。

 

実は私は最近のMoFi商品は買っていません。 何枚か1990年代の200gram盤を持っているだけです。 理由は単純、興味を引く作品が多くない、価格が高い。

単に音が良いからとかコレクターアイテムだからと言う理由で買うことはありません。 だから私はいわゆる「収集家」ではありません。 本当に好きなバンド、演奏者の好きな作品だったら買うかもしれない。

コメント ※編集/削除は管理者のみ

  1. Multi_Hobbyistさん

    この問題のポイントを纏めて頂きありがとうございます。十分にフォロー出来ていなかったので助かりました。

    この問題の本質を見誤らないためには「MoFiが長年嘘をつき続け消費者を騙してきた」ということと「デジタルを介在させたヴァイナルレコード製作の是非」という2点を分けて考えないといけないと思います。

    前者に関しては、企業としてキッチリと後始末をするべきでしょう。アメリカですから訴訟を始めややこしい問題も避けられないようですね。

    後者に関しては、消費者各人の反応と対応の問題です。あまり良くない例えかもしれませんが、ハラルフードと称して販売した食材に豚肉成分が混入していた問題(マレーシアでの「味の素」事件)とある意味で似ていると思います。宗教やアレルギーが理由で豚肉を食べられない人にとっては重大な問題ですが、単に豚肉嫌いで敬遠していた人にとっては、案外美味しいじゃないかと評価されたと聞きます。

    オーディオには本来、宗教もアレルギーも存在しないのですから、この点に関しては少し広い心で対応しても良いのかなぁと考えます。

    • のびーさん、

      心を広く、おっしゃる通りですね。 何事も大らかに対応できれば良いのですが、世の中には極端な人が多い。
      昔もそういう人は多かったのでしょう。 インターネット普及前はそれを知る機会がなかっただけなのだろうと思います。

      私もこの件はPHILE WEBコミュニティから何度もしつこく書き込んで、ちょっと粘着系っぽいですが、別にMoFiのレコードを買っているわけではないのになぜこの話題が気になるのか考えてみたら、たぶん「アナログ対ディジタル」という何十年も前からあるオーディオ界の議論に対する究極の回答になりえるのかなと思ったからです。

      要するにどっちでもよい。 音が良いこと、楽しめることが一番と言うことです。

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