ル・スコアール管弦楽団第29回演奏会

日記・雑記
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昨日の法政大学交響楽団の演奏会に続き、47回目のコンサートとなる日曜日の今日は、スケジュールが重なった二つのどちらに行こうか?と悩んだ。
ブログの方もご覧ください。

一つは文京シビックホールで開催される青山学院管弦楽団の第97回定期演奏会。
そしてもう一つが昨日と同じすみだトリフォニーホールで開催されるアマチュアオケ、ル・スコアール管弦楽団の第29回演奏会だ。
昨日同様に学生オケの若さ溢れる溌剌した演奏を楽しむのもよいと思い曲目を見ると、メインがチャイコの5番と定番中の定番。
さて、アマチュアオケの方はというと、これも定番中の定番、ベートーベンの運命、それに何とストラヴィンスキーの春の祭典という豪華カップリング。
う~ん、これは悩むということで、電車に乗る頃まで悩みに悩んでしまった。

さて結局やってきたのはこの東京スカイツリーが間近に見えるすみだトリフォニーホール。
完成すれば634メートルとなるが、現在でも497メートルと周囲に比べるもののない高さに思わず見とれる。

1996年に発足したル・スコアール管弦楽団の演奏会は全席自由で入場料が1000円だが、このチラシを持っていくと5名までの招待券をくれるというので小生も今日は無料の招待券で入場する。
今日もほぼ満席の入りだが、昨日同様に前方席は空いているので、首尾よく前から8列目の真ん中に座ることができた。

今日の演奏会は、田部井剛氏の指揮で、ベルリオーズ作曲:序曲「ローマの謝肉祭」Op.9、2曲目がベートーヴェン作曲:交響曲第5番「運命」、休憩をはさんでメインが、ストラヴィンスキー作曲:バレエ音楽「春の祭典」という豪華カップリングのプログラムである。

開演時間5分前のチャイムが鳴る前から、ステージ上には続々と奏者達が現われ、自分のポジションに座ると思い思いに練習を始める。
開演前になっても練習の手を休めないのだが、これがこのオケのスタイルなんだと思う。
客席の照明が落とされるとおもむろにコンマスが立ち上がり、チューニングが始まる。

指揮者の田部井剛氏は早稲田大学を卒業後に東京音大、東京芸術大学指揮科を卒業した新進気鋭の指揮者で、小柄ながら筋肉質の精悍な顔立ちで、颯爽と指揮台に登場した。
ローマの謝肉祭は祝祭的な明るい曲調で、冒頭のイングリッシュホルンの長いソロが素晴しく優雅で、思わず聞き惚れてしまう。
弦楽器の音色は、金属的な明るさを持つバイオリンに対し、漆のような渋い艶を持つビオラにチェロ、そして丸太のような厚みある響きのコントラバスといった具合で、ややバイオリンの音量が小さめに聞こえるが、これはどちらかというと音量が大きめの管楽器パートに対してのようなバランス具合だからか。
木管楽器の各トップが吹くソロパートを聞くと、管楽器群が充実しているオケのように思える。
ゆったり優雅な前半部から激しくアップテンポなダンス部分にさしかかると金管楽器が咆哮をはじめ、特にホルンがステージ左奥の壁際に位置しているためか、音の反射でとても大きく聞こえるが、これは意図的にそのような座席配置にされているようだ。
終盤はとても歯切れ良く小気味よいアップテンポのままエンドとなり、大きな拍手が送られていた。

2曲目の運命であるが、これもとてもハイテンポな演奏で、指揮者の意図のまま、冒頭の運命の動機からとても緊張感溢れるリズムを刻んで突き進んでいく。
その指揮ぶりはとてもダイナミックで、体一杯を使って指揮台の上でダンスを踊るようなリズムの感覚が奏者にも聴衆にも乗り移り、まるでトランス状態にでもなったかのように疾走する運命交響曲であった。
ハイテンポでありながらリズムの乱れがほとんどなく、テインパニの刻むリズムに乗って終楽章のフィナーレが始まると、延々と続く運命の動機のリズムにあわせて弓の毛が切れるのも構わないほど演奏に没入する弦楽器奏者。
それに応える木管、金管楽器が絡み合う白熱したセッションのような、最近聴いたことのないほど素晴しい運命交響曲の演奏だった。

運命交響曲で、グッとひきつけられた聴衆は、メインの春の祭典で完全に打ちのめされてしまった。
演奏会で春の祭典を聴くのは本当に久しぶりで、しかもアマチュアオケでどれだけの演奏になるのか、正直なところ運命交響曲が素晴しかったにもかかわらず、奏者により高い演奏技術を要求するストラヴィンスキーの音楽。
ところが、田部井氏の指揮は、この変拍子がどんどん変化するこのバレエ音楽の難曲に対し、ほとんどダンサーに同化したごとくベジャールの踊りさながらに指揮をしてみせた。

音量が豊富な管楽器群はベートーベンではやや抑制気味であったが、このハルサイでは遠慮は無用とばかりに雄叫びを上げるが、指揮者はもっともっとと催促をするがごとくこの土着的で原始的な生贄のダンスを再現してみせた。
ダブルで組まれたティパニやグランカッサにドラまで加わったパーカッションのリズムと圧倒的なスケール感はとてもオーディオでは再現は不可能といえる。
またCDではなかなか聞き取れない弦楽器のピチカートのリズムと音程が生演奏では明瞭に聞き取れて、それが管楽器のメロディやリズムと交互に掛け合いになっているところなど新たな発見をもたらしてくれた。

生贄になるべくトランス状態となり最後の最後まで踊り狂った踊り手が一瞬の静寂の後に倒れこんだと同時に終曲となり、万雷の拍手とブラボー!の掛け声がホール一杯に木霊し、奏者も聴衆も上気した面持ちで大成功に終わった演奏会。

今日の選択に間違いはなかったと満足の面持ちで会場をあとにした。

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