東京交響楽団第28回川崎定期演奏会

日記・雑記
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ショパン生誕200年という記念の年を締めくくるコンサートとして、また小生の今年50回目の節目のコンサートとして、11月最後の日曜午後にミューザ川崎シンフォニーホールへやってきた。
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今日は東京交響楽団の第28回川崎定期演奏会。

ミューザ川崎の入り口にはこのようにクリスマスの飾りつけが施され、吹き抜けの飲食街にはクリスマスツリーがそびえたっている。

今日のプログラムは、指揮者に東京交響楽団の音楽監督を務めるユベール・スダーン氏、ピアノ独奏にダン・タイ・ソン氏を迎えた、ショパン生誕200年記念のピアノ協奏曲 第2番へ短調Op.21、そしてメインはブルックナー:交響曲第8番ハ短調WAB.108「ノヴァーク版第2稿」の2曲である。
ダン・タイ・ソン氏はベトナム・ハノイ生まれで、1980年ショパン国際ピアノコンクールでアジア人初の優勝者となり、国際的なピアニストとして活躍している。
小生が今年聴いたショパンコンクール覇者は、2000年のユンデイ・リ、2005年のブレハッチ、1985年のブーニンそして今日聴く1980年のダン・タイ・ソンである。
こうしてみると、今年来日した中では唯一1975年のツィメルマンを聞き逃している。
因みに今年2010年の覇者はロシアのユリアナ・アヴディエヴァ氏で、早速12月4日のN響定期に登場するらしい。

さて、ミューザのチケットは3階席右側でいつもとはやや離れた席である。
席からだとステージ前方に配置されたピアノからの直接音が上に昇ってきた辺りに席がある感じである。

ステージや客席には大型のTVカメラが5台セットされ、カメラクルーがそれぞれ配置されていて、マイクのセットも天吊り4本にアンビエンス用が客席上方に2本、ステージにはピアノ用以外にも弦やテインパニ前などステージ各所に配置されていた。
演奏終了後に判ったことだが、今日の演奏の模様が来年1月30日夜9時からNHK教育TVの「オーケストラの森」で放映されるという。

黒色のシャツにスラックス姿で指揮者のユベール・スダーン氏を従え緩やかな歩みでステージに現われたダン・タイ・ソン氏の演奏が始まった。
ショパン19歳の時に作曲されたというコンチェルト第2番はブレハッチでも聴いた曲だが、ピアノのタッチや音色が柔らかく尖ったところがない。
かといって弱弱しいわけではなく、まるで玉を転がすように滑らかなタッチで演奏が進んでいく。
同じアジア人でも中国人のユンデイ・リやランランなどは意志の強さをあらわにした鋭いタッチで弾くが、ベトナム人のダン・タイ・ソンは、あくまでも優しく優雅でありながら奥に秘めた情熱の火を時折見せながら、この優美なショパンの佳作を弾きこなしていく。

終楽章が終わった。
幸福な気持ちで一杯になった聴衆から暖かい拍手が鳴り止まず、4回ものカーテンコールのあとにアンコールとして弾いてくれたのは、マズルカ第13番Op.17-4、優しく、あくまで優しく弾き続けるダン・タイ・ソンに大きな拍手とブラボー!の掛け声が暫し続いたのはいうまでもない。

20分の休憩後はブルックナーの第8交響曲。
70分強の長大なシンフォニーは宗教的なモチーフが随所に散りばめられており、優雅で壮麗な響きが素晴しい名曲である。
今回の編成は弦5部が8-8-6-6-5と大型で、管もトップを2名体制とした変則3管編成、ホルンはワグナーチューバ4本持ち替えの10名も配置されている。
これだけ大型の編成だと、壮麗なトゥッティの場面でも管の音が破綻することなく分厚いサウンドを軽々と出すことができるだろう。
指揮者のユベール・スダーン氏はタクトなしでオケを統率し、独特のリズム感でダンスを踊るような身振りで指揮をしていく。
プログラムによると彼の生まれたオランダでは、夏になるとキリストの像を教会から担ぎ出してブラスバンドを先頭に練り歩く風習があるそうだが、ブルックナーのリズムもその行列のテンポそのものだ、と彼がインタビューに答えている。
今まさにその行列の中の一人のように彼は指揮をしているのだろう。

3階席だと、コラール風の響きが天へ昇っていく感覚を味わえないのではと思っていたが、風邪の余波で余り調子の良くない耳が大音量に飽和することもなく、下から吹き上がってくる音の洪水に身を任せるという幸福感につつまれることになった。
盛り上がる場面では管トップ2本体制が厚みのあるサウンドを響かせ、弱音になるに従い1本体制に戻すと音の厚みが変化する面白さもあって、長大だが長くて飽きることのないこの8番シンフォニー。
最終楽章の演奏が終わると大きなブラボーの歓声と拍手がホールを満たした。
流石に緊張感から開放されたのかなかなか聴衆の方を向こうとしない指揮者に対して、奏者からも拍手が贈られていた。

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