指揮者、下野竜也氏とPAC管弦楽団の特別演奏会4回シリーズ「下野竜也 シューマン&ブラームス プロジェクト」の第2回目。
今日は、地元西宮出身のピアニスト、河村尚子を迎えての演奏会だ。
4回通し券を買っているので、毎回同じ席。
今日のプログラムは、最初に、ブラームス:ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調、休憩を挟んでシューマン:交響曲 第3番 変ホ長調「ライン」である。
ブラームスのピアコン2は、全4楽章で演奏時間も46分とクレジットされている大作。
河村尚子は初めてこの曲を演奏会で取り上げるらしいので、どう料理するのか興味シンシン。
プログラムに河村尚子のインタビューで掲載されていた。
そこにはこうあった。
「ブラームスは、何か通じるものを感じる作曲家です。情熱的で、愛するものや尊敬するものに対して忠実な人だと思います。私は同じ牡牛座生まれだから、共感するところが多いのかもしれません・・・・・・」
ピアノコンチェルト2番についてはこう語っている。
「ピアノがソリストとしてというより、オーケストラと一体となって音楽をつくるという性格の強い作品です。情熱、明るさ、激しさ、そして優美さと、4つの楽章の中でさまざまなキャラクターを表現することに大きな魅力を感じます」
また、PACという同世代のオーケストラとの共演について、若手演奏者ならではのコメントもある。
「仲間意識がより強く、おもしろいものになるかもしれません。年齢による上下関係は音楽にとって邪魔になることもあります。ショスタコ-ヴィッチも言ってますが、私たち音楽家はみんな同じ音楽の奴隷なのですから、舞台に立ったら同じ目線で音楽を創り上げなくてはなりません。・・・・・・・」
う~ん!と唸らせる言葉ではないか!!
ここまで真摯に音楽へ取り組んでいる河村尚子の演奏への期待が高まってきた。
黒一色の正装で並んだオケの前に、朝陽の中で光り輝く緋毛氈のように目にも鮮やかなドレスを身にまとって表れた。
今日のコンマスは豊嶋氏。
期待のチェロトップは、PACに2008年まで在籍し、現在は東京交響楽団の主席を勤める、イケメンチェリストの西谷牧人氏だ。
2回目の特別演奏会であり、指揮者の下野氏とPACの息は前回に増してぴったりであり、しかも今回のコンマスは、長年PACを指導してきた一人である豊嶋氏である。
滲みのない音といったら判るだろうか?
これだけ各パートの一音一音が一体となった素晴らしいアンサンブルを聞かせるとは!!
河村尚子のピアノの音色は明るくストレートな響きでタッチの一つ一つに切れがある。
下野さんとの呼吸もピッタリでオケとピアノの曲想のかけあいで横糸を紡げばその後から見守る豊嶋氏がコンマスとしてオケの一音一音の縦糸を紡ぎ出していく。
河村尚子はピアノに喰いつく獅子のごとく身を揺らしその腕を、指を自在に操っている。
柔らかいタッチであるにもかかわらず強いアタック音が響くのはどしてだろう?
3楽章の冒頭からチェロトップとの愛の語らいが始まると、ピアノ越しに双方がアイコンタクトを取りながら演奏しているのがわかる。
時折恥ずかしそうに顔を背けるのはチェロの西谷の方で、河村尚子は食い入るように見つめるばかりで、これは勝負あったか。
最終楽章までピアノ付き交響曲のごとく一体感のある演奏が続き、それを支えたのは下野さんのタクトであるのは言うまでもない。
演奏終了後に、指揮者と握手した河村尚子は、突然指揮台を乗り越えてチェロの西谷さんに駆け寄りハグハグのパフォーマンスに出たものだから、西谷氏は顔を真っ赤にして照れているのが印象的だった。
休憩を挟んで演奏されたシューマンのライン。
これも、前半同様に滲みのない音が、シューマンのロマンティックな響きを際立たせ、各パートがまるで一つの楽器のような素晴らしいアンサンブルを繰り広げる。
ライン川の流れのごとく、あるときは早瀬を駆け抜け、あるときはまどろむようにゆったりと、自在のテンポで進行していく。
圧巻だったのは最終楽章のトロンボーンが入った冒頭のファンファーレ。
教会のパイプオルガンを彷彿とさせる荘厳な演奏には参ったとしか言いようが無い。
今回も期待を裏切らないどころかそれ以上の感動と満足を与えた演奏会。
あと2回も完売御礼間違いないだろう。
コンサートが終った余韻を楽しむ今夜のディナーは、フレンチ界のシェフ、アラン・デュカスが関西に出したビストロ、「ル・コントワール・ド・ブノワ」で夜景を楽しみながら。
シャンパンと赤ワインを飲みながらスペシャルメニューを楽しんだ夜が過ぎていく。
この日記はブログでも
コメント ※編集/削除は管理者のみ