頼りなき私たちの向かう先:寺尾紗穂『北へ向かう』を聞く

日記・雑記
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                     2020年05月17日

コロナウイルス禍になってから、
ちょっと太ってしまったのですが、
「いかんいかん」と思って、
週に3,4日は朝に散歩をするようにしています。
陽気が良くなったせいもあるのでしょう
けっこうな人出です。。。
私のように音楽を聞きながらの人もいるし
マスクをしてジョギングっていう人もいます。
すれ違う人の表情をうかがうと
程度の差こそあれ、心なしか不安げな
あるいは倦み疲れている、そんな気のようなものを
みんな発しているな~なんて感じてしまうのは
考えすぎなんでしょうけど。。。
みなさんはお元気でお過ごしでしょうか。

寺尾紗穂の新譜『北へ向かう』を聞きました。

2007年のデビューアルバム『御身 onmi』はよく聞いていました。
尾崎翠の詞に曲をつけた「よみ人知らずの歌」をラジオで聞いて
いいな~と思い、尾崎の作品もそれからけっこう読みました。
でもそういうこといっさいがっさいを、なぜかすべて忘れていました。。。
彼女たちの歌や言葉たちは、私の体をまるでニュートリノ(?)のように
すり抜けていってしまっていたのでした。
このニューアルバムを聞きながら、そんなことをまず思いました。
というのも、その音楽の質感はまったくといっていいほど
変わっていない気がしたからでした。

彼女のヴォーカルもバッキングの演奏も
ニュートリノがすべての物質を通り抜けていってしまうかのように
ほんとにスーッと通り抜けていくのです。。。
でもそれは悪い感じではなくて
なんだか快いのです。
これはオカルト的な意味で言っていますが(笑)
彼女のつくりだす音楽は
物質に還元できない何かを持っているかのように
私には響くのです。。。

父上の寺尾次郎氏の逝去に際し書き上げたという「北へ向かう」
はっぴいえんどの名曲を思い起こさせるアレンジはキセルによるもの。

「寺尾紗穂 – 北へ向かう」
https://www.youtube.com/watch?v=_JxUFXkwG4k

鳥が飛んでいく 頼りなく懸命に
ふと重ねてしまう あなたを私を
僕らは出会い そしてまた別れる
かなわぬことに 紛れては叫ぶ
日々生まれてゆく 新しい愛の歌が
あなたにも 聞こえますように

大切な人との別れを歌ったもののようにも思えるけれど
信太卓実さんが述べておられるように
https://realsound.jp/2020/03/post-517650.html
もっと普遍的な「生命の愛おしさ」を歌ったもののようにも聞こえます。

毎日のニュースの中で発表される亡くなった方々の数。。。
それを聞くたびに疼くもの
一人一人にそれぞれの人生があり
愛情を交わす相手がいたことに
どこかで思いをいたすからでしょうか。。。

頼りないよな~
少なくとも私なんかは自分のことを
そう思うようになっていたんだと思います。
安全バーのようなものがはずされた今日の世界の中では
ほんとに頼りない。。。
でも新しい愛の歌は私も聞きたいと思ってるし
あなたにも聞こえますようにって思ってる。。。

私が書くとこんな感じでしかないのですが
寺尾紗穂さんの歌声は
ひそやかに体の中をスーッと通り抜けていってくれるから
ありがたいのです。

先日ご紹介した谷川俊太郎さんの歌詞も
またよみがえってきました。。。

ひとりにはじまり ひとりにおわる
かけがえのない あなたのいのち
ふたつとない わたしのいのち
いまここにたち かなたをみつめる
わたしたち ホモ・サピエンス
からだにあふれる いのちのざわめき
わたしたち ホモ・サピエンス
こころにひそむ いのちのしづけさ

小林沙羅さんは朗々と歌い上げるのですが
反応してる角度が同じように思うのです。

最後になりましたが、個人的には、このアルバムの中頃に聞ける
「安里屋ユンタ」がうれしいです。

君は野中のいばらの花か 暮れて帰れば ひきとめる
嬉しはずかし浮名を立てて 主は白百合 ままならぬ
田草とるなら十六夜月夜 二人で気兼ねも 水いらず
染めてあげましょ 紺地の小袖 かけておくれよ 情けのたすき

「北へ向かう」ならぬ「南へ向かう」心に誘われたところで
今晩はお開きです。。。

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