2chとサラウンドとAuro-3Dと、様々な再生方式と音源で比較試聴をさせてもらったdonguri邸でした。音響的な調整も決まっていますし、正確な再生であることも折り紙付きです。このような環境での試聴ですから、何も学ばなかったでは済まされません。稚拙なまとめとはなりますが、記録しておこうと思います。
<donguri邸での試聴結果からの考察>
考察1:音源再生はネイティブフォームで実施すべき
(現象)
ケース①・・・葵トリオ/ハイドン:ピアノ三重奏曲第27番 CD再生では、明瞭でよいサウンドがAuro-Matic化すると、弦楽器の定位が不明になり、明瞭度も落ちた
ケース②・・・LSO ベルリオーズ/ レクイエム 5.1chSACD再生では、サラウンドで素晴らしい再生がAuro-Matic化すると、トランペットの定位が不明になり、全体の明瞭度も落ちた
ケース③・・・ティルソン・トーマス&サンフランシスコ響 / マーラー交響曲第8番 5ch SACDでは、サラウンドで素晴らしい再生がAuro-Matic化すると、合唱が風呂場の音響のようになった
ケース④・・・グリモー / Credo 5.1chSACD再生では、サラウンドで素晴らしい再生がAuro-Matic化すると、音のキレや解像度が落ちた
ケース⑤・・・幸田浩子 / カリヨン CD再生では、文句のつけようがないほど正確な再生であったものが、Auro-Matic化するとチェロとコントラバスがセンターに定位してしまい、ボーカルが奥に引っ込んでしまった
(推定原因)
1):donguri邸のルームチューニングのレベルが高いこと
2):1に伴い、「正確な再生」となっておりミキサーの意図通りの再生となっている想定できること
3):正確な再生にAuro-Matic化すると制御によるミキシングが加わるため、定位が不明瞭となり明瞭度が落ちてしまうこと
上記から、室内音響が整っていないケースなどはAuro-Matic化が有効に働くケースもあると考えられる
また、明瞭度の悪化については電気的な補正で解決する可能性がある
考察2:定在波の悪影響を感じなかったのは、対策精度の高さと、低域の伸びの少なさのためと考えられる
(現象)
・幸田浩子のカリヨン-1曲目のアベ・マリアで、コントラバスのピッツィカートが全打共に同じ音量で鳴っていた(定在波の悪影響を受けていない)
(推定原因)
1):donguri邸の定在波対策が決まっている
2):805D3の低域の伸びがないため、定在波の影響を受けやすい帯域の影響を受けにくい
3):Auro-Matic再生でサブウーファーからも音を出すと、全体の明瞭度が落ちる
上記から、低域の伸びがない再生では物量レベルの定在波対策で充分な効果が出せることが考えられる
反対に低域を伸ばした再生では、電気的な制御が有効な対策となることが考えられる
考察3:Auro-3Dは映像付きとの相性が抜群にいい
(現象)
・ウィーン ニューイヤーコンサートやツィメルマン ベートーヴェン: ピアノ協奏曲のBlu-rayがとても楽しく鑑賞出来たこと
(推定原因)
1):映像があると定位は視覚主体に感じるため、ネイティブ再生でなくとも違和感が起きない
2):違和感がなければ、抜群の臨場感が味わえるAuro-3D再生は大きなアドバンテージが得られる
音楽再生と映像再生を両立させるならAuro-3Dシステムは有効な方策と思えた
考察4:donguri邸は、なぜサラウンドのネイティブ再生が最高だったのか?
(推定原因)
1):B&W805D3を前後5本に揃えたこと
2):室内音響がサラウンド再生に適した塩梅に調整が進んでいたこと
3):考察1と同じ内容となるが、「正確な再生」となっておりミキサーの意図通りの再生となっていたこと
マルチチャンネル再生において、自分のこれまでの体験から、スピーカーを統一の効果の大きさを感じていた
donguri邸の2ch,サラウンド,Auro-3Dの比較結果から、上記は確信となった
考察5:donguri邸のサウンドの追い込みは、なぜ2年と言う驚異的なスピードで進んだのか?
(推定原因)
1):学生時代に音楽活動を実施していたことから、生の感覚を肌身で学んでいたこと
2):研究職らしく、世間の評価に惑わされることなく、自己の判断で追い込みを進めたこと
3):ドクターとして身に付けた、冷静かつ客観的な判断で追い込みを進めたこと
・自分の中の常識として、「新しい部屋とシステムを追い込むには最低でも5年はかかる」というものがあった
・今回のdonguri邸訪問で、その常識が覆された
・再度、自分になぜ5年?と問うてみた
・時間かかかる理由は、自己のサウンドの「問題点を受け入れ」「改善行動に向かわせるまでの時間がかかる」ためと考えた
・donguriさんは、この「問題点の受け入れ」に迷う時間が短かったのだろうと想像する
・加えて、工作による自宅に適した音響対策を次々に進められたこともスピードに寄与したと考えられる
・いずれにしても、「目指すサウンドが明確であり」「冷静かつ客観的な判断」を身に付けていたことがハイスピードのポイントであると考えられる
オーディオのサウンド作りは、1)2ch,サラウンド,Auro-3Dなどの再生方式、2)機器のレベルアップ、3)「電源」「振動」「音響」などの作り込みなど、様々な方策があるが、「目指すサウンドの明確化」「冷静かつ客観的な判断」の重要性を改めて感じた
考察6:donguri邸へ行くときは、渋滞がなければ高速で、渋滞があるときは下道で向かうのがよさそう
今回の訪問では、行きは朝6時に出て渋滞なしだったので直行すれば2時間少々で到着する近さだった
しかるに、帰りは渋滞があり、ナビでの検索では高速使用で4時間、下道で5時間の表示であった
下道で進みながら渋滞が収まったら高速に乗ろうと思い進んだ
いくら進んでも渋滞情報は収まらなかったので、最後まで下道で帰宅した
空いている下道は快適なワインディングロードの運転で、4時間半で到着した
渋滞でイライラしながら4時間運転するよりも、快適な下道の4時間半の運転を選択して正解だったと思う
donguri邸へ向かう時は、行きも帰りも渋滞次第。直前に確認して、ルートを決めるのがよさそう
以上、長くなりましたがdonguri邸 初訪問の訪問記となります。
大変学びの多いオフ会でした。繰り返しますが、2年間でこれだけの追い込みレベルに持ってこられたのは驚異的だと思います。「正確で」「いい音」、ここまでは到達されていると思いました。donguriさんご自身が書き込みされていたことですが、この先に目指すのは感動する音に昇華させることでしょうか。きっと、この目標もあっという間にクリアしてしまわれるのでしょうね。
でもココだけの話、若いころは美人シンガーのおっかけもやられていたとのことです。「歌声に恋をした」と言われていました。そんな、お茶目な一面もお持ちです。この先もdonguri邸から目が離せません。
<おわり>
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ヒジヤン様
今回も楽しく拝読させていただきました。さすがの分析ですね。私がレスしようと思った内容とほとんど同じでした。考察6は、ヒジヤンさんなりのジョークでしょうか(笑)
やはり、原理的にネイティブ再生が一番なのでしょう。録ったものをその通りに再生すれば、レコーディングエンジニアやプロデューサーの意図が明確に伝わるのは明白です。ただ、そこに自分の好みの色を加えて自分の好きな音にしていくことを私は否定はしません。結局、オーディオは自分の好きな音で聴くのが一番ですから。こんなことを書くと、原理原則を大事にするオーディオファイルの方からは、非難されてしまうかもしれませんが(笑)
我が家でも5.1chのマルチチャンネル録音ソフトをAuro-MaticでAuro-3D化して再生することがありますが、ヒジヤンさんが書かれている通り、明瞭度の点では落ちるように思います。ただし、2層目3層目のSPの響きが加わるので、高さ方向の広がりが出て3次元的な音場展開がなされるので、聴くことはたまにあります。その場合は、音の広がりを重視して聴いているので、楽器の定位はあまり重視していません。というよりも、クラシックがほとんど分からないので、楽器の定位などと言われてもよく分からないと言った方がいいのかもしれません。響きが広がって気持ちいいなあという点でしか聴いていないからなのでしょうね。
我が家でもここ最近、グランドスラム5本によるマルチチャンネル再生を行っていますが、大型SPを5本揃えるというのは、マルチチャンネルには有効であっても、2ch再生には弊害があるのではないかと考えています。
これについては、もう少し考察が必要なので、また報告したいと思います。
グランドスラムさん、コメントありがとうございます。
マルチチャンネル再生の雄である、グランドスラムさんが思うことと殆ど同じとのことで心強いです。
>ただ、そこに自分の好みの色を加えて自分の好きな音にしていくことを私は否定はしません。結局、オーディオは自分の好きな音で聴くのが一番ですから。
このご意見に同感です。ただ、「何でも鳴るようにしたい」と思う場合は、基本に忠実でないと、「あのソフトはよく鳴るけど、このソフトはダメ」みたいなことが起きてしまうんですよね。「よく鳴るものだけ聴ければいい」という考え方もあると思いますので、そこは個々人の選択かなと思います。
そして、基本に忠実で「正確な」「よい音」だけでは、「感動する音」が得られないのも事実かと思いますので、donguri邸はここからが試練の時かなとも思いました。
ご提示の通りで、定位や明瞭さを気にしなければ、「Auro-MaticでAuro-3D化することによる響きが広がって気持ちいい」を味わうのはありかと思います。自分も映像付は、Auro-3DやAuro-Maticが心地よく感じました。
>我が家でもここ最近、グランドスラム5本によるマルチチャンネル再生を行っていますが、大型SPを5本揃えるというのは、マルチチャンネルには有効であっても、2ch再生には弊害があるのではないかと考えています。
なるほど、面白いですね。音響的な弊害や再生しないスピーカーユニットの吸音効果でしょうか?大型を5本揃えられるお宅はめったにありませんので、グランドスラムさんの研究成果に注目ですね。
報告を楽しみにしています。
ヒジヤンさん、こんにちは。
donguriさん邸訪問記のシリーズを最後までとっても楽しく読ませて頂きました。
素敵な環境で素敵な音楽ライフを送っていらっしゃって本当に羨ましく思いました。
バズケロさんのハーベス部屋やAuro-3Dさんのお宅もそうですが、ピクチャーウインドからの景色が絶品ですね。
donguriさんはヒジヤンさんより少し年上でしかも研究職に就かれているとのことですので、ヒジヤンさんと同じで、やはり「オーディオ」や「音響」を包括的・客観的に考察できて的確に問題に対処する能力に長けておられるのでしょう。非常に勉強になります。
あと、genmiと同じ805シリーズをdonguriさんがお使いで、しかもB&Wの音が好きだと公言されているのにもとても親近感が湧きました。好みの音がgenmiとかなり近いのではないかと勝手に妄想しております (^^;)
距離はメッチャ遠いもののgenmiと一応同じ沿線/高速で繋がっているようですので、機会があれば是非donguriさんと交流を持たせて頂きたいです。
それと、グランドスラムさんも指摘されていますが、考察5から考察6への展開と、考察6の「donguri邸へ向かう時は、行きも帰りも渋滞次第。直前に確認して、ルートを決めるのがよさそう(下線付)」で日記を締めくくるあたりのヒジヤンさんのジョーク?が最高でした!!
サラウンドのことは無知なのでノーコメントでお願いします(笑)
genmiさん、コメントありがとうございます。
是非是非交流されてください。
当日も、「genmiさんが805SDで追い込んでいて、よい音を出しているので交流されることをお薦めします」と話していました。genmi邸のサウンドと比較しても、よい面ともう一つな面なのでよい交流につながると思いました。
>ピクチャーウインドからの景色が絶品ですね。
ここ、反応されると思いましたよ。そしてもう一つ、気になるところがあるでしょ。この話はしていませんので、行かれるときは兵器持参で(笑)
donguriさんは、自慢げなことや大きなことは全く言わない方ですし、「私は初心者なので・・・」などと話されますが、沈着冷静な思考力、判断力に長けた人だと思いました。距離は離れていますが時間はかからないと思いますので、勉強させてもらう価値があるかと思います。
>考察6の「donguri邸へ向かう時は、行きも帰りも渋滞次第。直前に確認して、ルートを決めるのがよさそう(下線付)」で日記を締めくくるあたりのヒジヤンさんのジョーク?が最高でした!!
ぴえ~、この話しは強く印象に残ったので最初から記録に残したいと思っていました。ですが、入れ所が見つからないので無理に入れた感じです。
私の渾身のジョークは、『走るドクター』だったのですが、外してしまったようです。
ヒジヤンさん、こんばんは。
再レス失礼します。
genmiの話題もしてくださったのですね。ありがとうございます。両方の音をお聴きになったヒジヤンさんが言われるのですから、益々興味津々です。
うちの805は大して自慢できるほどのサウンドではありませんが、genmi好みに調教(調整)していますので、それはそれで楽しんで頂けるかなって思っています。でも、それよりもgenmiが勉強させて頂きたいですね。ちなみにgenmiはそこそこオールマイティに鳴らしたいタイプの人間です。
兵器持参ですか? 携帯性を考慮して設計されていないので、donguri邸に辿り着く前に自爆してしまうかも(笑)
『走るドクター』もちゃんとgenmiに伝わって存分に笑わせて頂きましたよ!
ただgenmi的には、 ヒジヤンさんがヒジヤンさんの切り口でサウンド分析と同等レベルでdonguri邸へのアクセスについても分析されていたのが妙にツボに入ってしまいました(笑)
失礼致しました (^_^;)
genmiさん、さっそく話がまとまったようでよかったです。
兵器については、genmi邸で効果を感じていただくのもよいかもしれないですね。
考察5から考察6の流れは、自分でも「ちょっと面白いかも?」と思っていました。
「走るドクター」と「走る武者」の融合反応も楽しみにしています。
ヒジヤンさん、こんにちは。
はい、ヒジヤンさんのおかげです。ありがとうございます!
兵器は、もしdonguriさんが興味がおありなら拙宅でデモしたいと思います。
>「走るドクター」と「走る武者」の融合反応も楽しみにしています。
若武者の”若”が取れてしまった理由が気になりますが、genmiも今から融合反応が楽しみです(笑)
genmiさんへ
ヒジヤンさんに交流を勧められたdonguriです。
genmiさんのやっておられる事は拝見しておりました。
なんか感性が近いものを感じておりました。
今後ともよろしくお願いいたします。
小生、なかなか時間の余裕がない状況が続いており、
10月中旬以降で調整させてください。
追って連絡いたします。
donguriさん、おはようございます。
直接レスを頂きありがとうございます。
もちろん時間の余裕が出来たらで構いませんのでご連絡をお待ちしております。
楽しみにしていますね。
こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。
ヒジヤンさん
ヒジヤンさんのレビューを読ませていただいて、Auro-Maticについて、自分なりの考え、使い方のお勧めを思いつきました。
ベルリーズのレクイエムを1年以上前に聴いた時にはAuro-MaticがNativeより良かったのに、その後部屋をデッドからライブに大きく変えた後の今回の試聴では5.1chネイティブ再生の方が良く感じられた。このことは、部屋の音響状況によって個人的に適切と思えるAuro-Maticの設定の適正値が変化した可能性を示唆しています。Auro-Matic 3Dの「Auro-Matic 3Dプリセット」ないし「Auro-Matic 3Dレベル」の設定を変更して再聴したら、印象は変化した可能性があります。
Auro-Maticを使う場合、2chオーディオ用に適正化した部屋ではライブすぎ、よりデッド気味の部屋の方が自然な感じになるのかもしれない。ただし何が自然なのか、何を良い再生音と感じるのかの個人差が激しいので自分なりのAuro-Maticの効果の最良点をさぐる必要がありそう。
スピーカーを多数利用するマルチチャンネル再生では、適切な部屋の音響設定は物理的な対策だけでは限界があるかもしれない。実測データを利用するDirac Liveなど高度な音響補正ソフトの利用は有効な解決策かもしれない。
ということでAuro-Matic 3Dを使う場合、デフォルトでいまいちと思った方は、以下を試してみましょうという文を思いつきました。用語・設定はデノン、マランツ製品でのものを想定しています。
「オーロマティックの調整法」
Auro-Maticの効果は「Auro-Matic 3Dプリセット」と「Auro-Matic 3Dレベル」で調節可能です。
「Auro-Matic 3Dプリセット」では、小、標準、大、ムービー、スピーチに切り替えられます。音楽を聴く場合は、編成の規模、演奏される会場の想定に応じて、小、標準、大のいずれかを選んでみてください。自分の好みを選んでください。差が感じられなかったら、標準のままで良いでしょう。
「Auro-Matic 3Dレベル」では、1から16までの数値が選べます。個人の好みや部屋の音響状況によって適正な値は変わります。数字の大小で囲まれ感、楽器の定位、上方の開放感が大きく変化するので、デフォルトの10で聴いてみて、効果が不自然に強すぎると思ったら一桁に下げ、もっと効果を強くしたければ、12以上に値を上げてみてください。
donguriさん
早速のように思考がフル回転されていますね。
お考えの話は腑に落ちるものでした。加えて、Auro-3Dユーザーへの提言もされていてスピードを感じます。この訪問記のままですと、Auro-3Dは音楽鑑賞用としては不要となってしまいますからね。活用方法の深堀についても楽しみにしています。
ベルリーズのレクイエムの件ですが、
サラウンド再生で聴いた時に、こだわりのバンダからのトランペットの演奏を聴いて、「ベルリオーズはこの音響効果を狙ったのか」と感じるものがありました。Auro-Maticにした時に、同様なことを感じられるのか否かがひとつのポイントかと思います。また聴かせてください。
もう一つ、こちらはかなりの難題となるかもしれないのですが、
・幸田浩子/カリヨンの1曲目・・・あんなに正確で生々しかった再生が、Auro-Maticにすると定位がバラバラで「ピカソの絵」になってしまいました。
⇒ミキサーが丹念にこしらえた作品を、弄ってしまう悪影響を強く感じました。
このあたりの解決が可能なのか?大きな研究テーマかと思いました。
部屋の音響とAuro-Maticのレベル調整の大事さは同感です。