自身の音を奏でる – 楽器の科学

日記・雑記
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”楽器の科学”を読んで、オーディオ演奏への落とし込みについての感想や考えをまとめた日記の3回目となります。

<目次>
プレリュード──音楽は「五線譜上のサイエンス」
第1楽章 作曲の「かけ算」を支える楽器たち
第2楽章 楽器の個性は「倍音」で決まる ← 今回日記
第3楽章 楽器の音色は「共鳴」が美しくする
第4楽章 「楽器の最高性能」を引き出す空間とは?
第5楽章 演奏の極意

第2楽章 楽器の個性は「倍音」で決まるでは、楽器たちが奏でる「音の個性」がどのようにして生み出されるのか?、音響物理の初歩を交えながら紹介されています。「楽器には二つの役割があります」から始まります。

①個々の楽器特有の美しい音色を生み出す
②聴衆にとって聴きごたえのある音量へと増幅する

楽器もオーディオも同じですね。
だから共通事項として、オーディオ演奏をするために知っておくと有益と思うことをピックアップします。

2-1:音とはなんだろう
・物理的に端的に言えば、音とは「空気の振動」である
・大気中に圧力の高い部分と低い部分が生じ、それらが波として伝わっていく現象が「音」である
・密度の変化が波の進行方向に対して平行となっている「縦波」の一種である
・圧力が高い部分の山の始まりから、圧力が低くなる部分の谷の終わりまでの波形の基本パターンを「波長」とよび、1秒間におけるこの基本パターンの繰り返し回数を「振動数(周波数)」とよぶ。


2-2:「音の高さ」とはなんだろう
・1秒間に空気が振動する回数によって空気の粗密が変化し、「音の高さ」が変化する
・振動数の大きい音ほど「高く」聞える (振動数=周波数)
・人間が聞き取れる周波数の範囲は一般的に20~2万Hzと言われており、「可聴域」という
・可聴域は動物によって大きく異なる・・・犬:65~5万Hz イルカ:150~15万Hz


2-3:決められた基準音
・基準音=440Hz(オーケストラの演奏家たちが「音合わせ」のために弾く「ラ(A音)」の音の国際基準)
・「ラ」が基準なのは、ヴァイオリンとビオラが弦を指で押さえないでよい「開放弦」で弾くことが出来るため
・通常はオーボエの「ラ」が基準とされる理由は、音の狂いが最も少ない楽器だから
・昔はそれぞれの「ラ」があった・・・ヘンデル:423Hz モーツァルト:422Hz etc
・そんな中で基準音はどんどん高くなっていった・・・415Hz→440Hz (湿度によって変化する)
・基準が高くなりすぎると、歌手が喉を潰してしまうなどの懸念があるため、ベルリオーズらが国際基準を設けるべく運動した
・そうして国際基準の440Hzは決まった(ナチス好みらしい)が、演奏家たちは独自性を貫いている


◇演奏家たちは基準音をも変えることで、独自の音楽を作っています。同じ楽譜を使おうとも、基準音の変化、演奏スピードの変化、音量の変化などを組み合わせて自分の音楽を奏でていることになりますね。

2-4:「音色」とはなんだろう
・音の高さは「周波数」という「物理量」で規定される
・人が感じる音の高さは「感覚量」が存在する
・音の高さの「物理量」と「感覚量」は比例関係にはならない

・低い周波数や高い周波数では、「物理量」が変化しても「感覚量」は大きくは変わらない
・中高域の1KHz~3KHz間では、「物理量」の変化が小さくとも「感覚量」は大きく変わる

音の感覚の三要素
・音の感覚の三要素は「大きさ」「高さ」に加えて「音色」がある
・音色は、音の個性を決定づける要素で音楽の観点では最も重要なものである
・反面として、「音色」はきわめてとらえづらいものである
・同じ高さの音であっても、異なった音に感じるのが「音色」の違いである
・この違いを生む要素として大きいのが、「倍音」と「振動包絡」である

基音と倍音
・あるひとつの音を周波数の視点から見たときに、基本周波数=「基音」とその周波数の整数倍の高調波=「倍音」と呼ぶ
・この音を分解すると下記となる

・分解された一つ一つの音を「純音」、分解前の基音と倍音が重なった音を「複合音」とよぶ
・倍音の違いで「音色」は変化する
・例えば、同じ「ラ」の音を聴いても、「フルート」と「クラリネット」の音は聴きわけられる
・フルートの倍音が十数個に対して、クラリネットの倍音は三十数個あり、その違いが音色の違いを生んでいる
・倍音の数は楽器の弾き方でも変化する
・マリンバの場合、未熟者が弾くと「ボワン、ボワン」という不快な倍音の塊を作ってしまう
・一音一音がはっきりと聴き取れる、明瞭で美しいサウンドにするためには、倍音を引き出したいという意図と意識を明確にして練習する必要がある
・楽器の個性を決めるのは音色だが、その音色を良くするも悪くするのも、演奏家の腕次第である

◇同様に人の声も一人一人で倍音が違うので、聴き分けられます。この倍音の分布は「声紋」と呼ばれ、「指紋」と同じく個人の特定が可能となることはよく知られたことですね。

偶数倍音と奇数倍音
・サックスは偶数倍音が多めに出るタイプの楽器であることから複雑で豊な音色を有し、クラリネットは奇数倍音が多く出るためにシンプルかつ明瞭感のある音色を持っている
・体験的に、サックス奏者には内向的で複雑な性格の持ち主が、対してクラリネット奏者には爽やかで快活な性格の持ち主が多いと感じている(筆者)

◇オーディオでも「音は人なり」と言われることと同じですね

音色の心理的空間
・音色の心理的空間は少なくとも三つの軸から構成される・・・①美しさ、②迫力、③明るさ
・①美しさは、「美しい音色」「澄んだ音色」「心地よい音色」で表現される
・②迫力は、「力強い音色」で表現される
・③明るさは、「華やかな音色」「キラキラした音色」で表現される
・この三つの感じ方は、好みや世代や個人などを超えて共通となる(同じ音を聴けば、同じ評価となる)

◇オーディオでも音色の個性はこの三つの組合せで分類できることになります。

2-5:振幅包絡とはなんだろう
・音色を生み出すもうひとつの大事な要素が「振幅包絡」である
・純音であれ、複合音であれ、雑音であれ、必ず振幅が存在する


・この音の振幅の頂点を結ぶ大まかな変化の様子を捉えると、その音波の全体的な形を見出すことが出来る=「振動包絡」

・振動包絡が徐々に大きくなる場合①と振動包絡が徐々に小さくなる場合②では、同じ周波数成分を持った音も感じ方が変わる

・徐々に大きくなる場合①はゆったりと聴こえ、徐々に小さくなる場合②はアタックが強く聴こえる

◇この振動包絡の特性を使って、オーディオでもメリハリの強さはコントロールが出来そうです


以上、第2楽章では音の基礎から人の感じ方までが示されていますが、演奏家たちはこれらを組合せながら自分の音楽を作っていることがよくわかりますね。オーディオにおいても同じだと思いました。

最初は機器同士を配線で繋いで出た音が自分の音と思うかもしれませんが、音はいくらでも変えられます。それらを組合せながら自分の音楽を作ってゆきます。演奏家だって基準になる楽譜はありますが、同じ楽譜をつかっても演奏家はそれぞれの音楽を奏でますね。オーディオ演奏も同じです。同じソフトを使ってもみな違う音楽を奏でます。その音楽は、たまたま出た音から、徐々によいと感じる音に追い込んでいき、更には自身の演奏へと昇華させてゆくのですね。

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