今年の海外オーケストラの来日公演はドヴォルジャークの演奏が多いですね。来年は没後120年を迎えること、そして日本で人気があるからでしょうか。オーケストラ再生のために生演奏巡りを始めたころに、交響曲第8番は学生オケやアマチュアオケで度々聴いていました。交響曲第9番”新世界より”は、オーディオで初めて楽しいと思えた交響曲ですから、思い出深い曲です。
今年はドヴォルジャークの故郷であるチェコからチェコ・フィルが来日する、しかもプログラムは交響曲第8番と第9番とのことで「これは聴きに行くしかない」と思い、早々にチケットを確保しました。もうひとつの理由としては、大規模改修後の横浜みなとみらいホールが自分好みであるかを確かめたかった狙いもあったのです。
指揮:セミヨン・ビシュコフ
オーケストラ:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
<演奏曲>
・ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88 B.163
・ドヴォルジャーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 B.178 《新世界より》
選んだ席は、今年の5月に”幻想交響曲”を聴いて気に入った座席の1列前、「1階席5列目センター」です。
席についてステージを眺めただけで、自分好みのサウンドが聴こえて来るようでワクワクしました。
①ドヴォルジャーク:交響曲第8番 感動度★★★★☆
プログラムは交響曲第8番からですが、第1楽章冒頭のメロディが流れ始めると共に感慨深い思いがわき上がってきて涙が出そうになりました。「いくら何でも、早すぎるだろう。ここで涙を流したら恥ずかしすぎる」なんて思いもわいてきます。盛り上がる気持ちを抑えながら、冷静に耳を傾けると、「弦の音が厚いです。こんな分厚い弦の響きは聴いたことがない」という印象です。この曲の郷愁感にぴったりなサウンドと感じました。この分厚さは、第1、2ヴァイオリンとビオラが12台、チェロが9台、コントラバスが8台の編成で奏でられていました。
懐かしさの感情がわき上がる第1楽章のままに、第2楽章でもテンションを上げたままに聴いていました。第3楽章では、再度こみ上げてくるようなメロディが流れて危険な状態に。周囲ではハンカチを出している人もいました。第4楽章で、高らかにファンファーレが鳴り響いた後は、力がわき上がるような盛り上がったかと思うや、すっと落ち着き、また盛り上がらせる。ドヴォルジャークに、ビシュコフに、チェコ・フィルに、いいように揺さぶられていました。
終演後は、拍手と歓声の渦です。観客の拍手に応えて、ビシュコフは4回も出て来ました。まだ1曲目だよね?もうこれで終演かと思うような盛り上がりに、自分も演奏中のテンションで、力いっぱいに拍手をしていました。
第1曲目で自分のメインディッシュでしたので、このまま帰宅してもいいかなと思いましたが、オーディオ再生で取り組んだ《新世界より》も捨ててはおけません。
②ドヴォルジャーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 B.178 《新世界より》 感動度★☆☆☆☆
この曲もよかったのですが、8番でテンションを使い果たした感もあり冷静な気持ちで聴いていたように思います。オーディオ再生的には、遥かに第9番の方が面白いですね。静かに始まる弦楽から、つづく木管、金管の旋律、徐々に盛り上がるように鳴り響いていく、オーディオ再生にはピッタリなサウンドだと思いながら聴いていました。第2楽章は、子供の頃のなつかしさを感じさせるメロディで少しの間、落ち着いた時間です。再度激しさを増していく第3楽章。体の大きな奏者が叩くティンパニーが印象的でした。最終楽章では、迫るように盛り上がる中でトランペットとホルンが鳴り響きます。みなとみらいホールは、ホルンの響きがいいですね。左サイドに回り込んだ響きが、演奏の大きさを引き立てます。そして盛り上げたかと思うと静かに聴かせ、最後は豪快なトゥティで幕を閉じました。
チェコ・フィル2023の来日公演も千秋楽です。気合の入った演奏に、観客の拍手と歓声は鳴りやみません。アンコールは、「ドヴォルジャークのスラヴ舞曲第2集」と「ブラームスのハンガリー舞曲第1番」でした。最後は楽しい感じの舞曲で幕を閉じたようです。オーケストラ奏者の全員が舞台からはけても観客は帰ろうとせずに拍手をしていました。そこにカーテンコールでビシュコフが再度出て来ます。まるで、ミュージカルやオペラの千秋楽をみるようです。本当に来てよかった!と思えるコンサートでした。
もう一つの課題の「横浜みなとみらいホールが自分好みであるかを確かめること」、これは確信に変わりました。「よき思い出を持つこと」、これも自分にとってのメインに据えるための条件かと思います。そして、オーディオとの対比も追々に実施していきます。今は、この感動をじっと味わっていたい気分です。
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