まぁ皆さんご存知「アコリバCD事件」。
アコリバCD事件まとめwiki – トップページ
0.5dBだけアコリバのデジタルケーブルの方が音が大きく収録されていたのが問題視されて有名なお話です。上記のまとめwikiは凍結中ですが、凍結前の状態が見たい場合は国会図書館でおすすめのサイトで過去に遡って観られます。
事件の火種が付き始めの頃はまだ「バイナリ不一致」が問題視されていたのですが、すぐに音が大きくなっている「アコリバの方だけ0.5dB音が大きい」件に軸足を移しました。今日の日記は前者の「バイナリ不一致」とは何だったのかを改めて書いてみます。私は「アコリバCD事件のバイナリ不一致はディザである」と考察します。(アコリバの方が音量が0.5dB大きかった問題は別のお話)
ディザをWikipedia(此処をクリック!!)で復習しましょう。
理屈はさておき、24ビット録音しておいて配布がCDだからと16ビットに落とす場合には、微量のランダムノイズであるディザを加えることは製作現場?のセオリーです。逆にビットを落とさない場合には加えません。ディザを加えることはディザリングとも呼ばれています。
24ビットなど高位の音声データを色々編集・加工して、最終的に配布用の16ビットなど下位のデータに最後に落とす作業のことを「バウンス」と言うらしいです。この「バウンス」を付録CD製作の時と同じように2回行ったとしたら、出来あがる2個の16ビットデータのバイナリ同士は一致しません。それぞれの「バウンス」の度にランダムなノイズを加えているのだから、当たり前ですね。これが、「アコリバCD事件」で “高級デジタルケーブル” と “アコリバのデジタルケーブル” とを比較(後述のトラック「65」「66」とを比較)してバイナリが不一致だった原因でしょうね多分。(もう一つの、音量がアコリバの方が0.5dB大きい問題は未だに謎)
余談ですが、ディザによるバイナリ不一致を料理に例えてみます。二つの料理の皿に塩を均等振りまして、結果は塩気がまったく同じとする。料理上の塩粒の一つ一つの場所は決して一致しない。塩を振ったとき、塩粒が落ちる場所は毎回必ず?違う。塩粒の一つ一つ場所の差異が、データの差異。データに差異はあるけれど味は同じみたいなね。この日記の後ろにある参照欄に画像でディザを活用した場合の効果を白猫画像で引用紹介しているので見てみて下さい。余談終わり。
表:季刊・オーディオアクセサリーNo.128号188頁より「収録時に使用した録音機材」
表:季刊・オーディオアクセサリーNo.128号193頁より「ACOUSTIC REVIVE サウンド・カタログの収録内容と聴きどころ」からトラック「65」「66」 ※(24ビット録音から)CDの16ビットマスターに落としている事がわかる
最後に? 最新の ProToolsのリファレンスマニュアル(Pro_Tools_Reference_Guide_2024.10.pdf)からディザ(およびノイズシェイピング)が加えられる条件を紹介します。観てのとおり、ビットを下げるときにディザが加えられます。ビット深度が同じまたは逆に上げる場合にはディザは加えられません。一つ注意なのは、これは最新のマニュアルであり「アコリバCD事件」当時のものではありません。
ProToolsのマニュアルが新しいとはいえ、昔から落とすときにはディザを加えるのがセオリーなので「アコリバCD事件」の当時もそれは変わらない。そんな背景から「アコリバCD事件のバイナリ不一致はディザである」と考察するのでした。もう一歩進んで、当時のProToolsのマニュアルを読めば確証に至る事ができるでしょう。フリーソフトではディザの有効無効を切り換えできますが 現行製品のProToolsではAutomaticallyです。条件によってディザが加えられたり加えられなかったり・・・これを「ProToolsの不具合」と勘違いしてしまう人も世の中には居なくもないかもしれません。 ProTools は 真面目なソフトなので、 “不具合が本当にあれば” きちんと治してくれます。2024年最新のProToolsを用いて、「アコリバCD事件」の追検証をした場合、ディザによって「バイナリ不一致」は再現できて、後者のアコリバのケーブルを使うと0.5dB音量が上がる現象の方は・・・ 再現しない事が容易に想像できます。ディザによる「バイナリ不一致」は不具合ではない。これはマニュアルを読めば分かること。
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■参照:
ProToolsドキュメント(Pro_Tools_Reference_Guide_2024.10.pdfは此処から)
https://avidtech.my.salesforce-sites.com/pkb/articles/ja/User_Guide/Pro-Tools-Documentation
■参照:
・Pro Tools Answers #86 | When does Pro Tools automatically apply Dither?
ProToolsのAvid認定エキスパート3名による解説です
■参照:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ディザ
■参照:
【DTM用語解説】ディザリングとは
余談ですが、同一ソースから複数回バウンスを行った場合にバウンスの度に(0.5dB?)音量が上下するなんて事が、ProToolsの不具合によって起こされるという説は俄かには信じ難い。仮にそのような致命的な不具合があったならば即座にプロの誰かが気付いて大騒ぎ。そのような “致命的な” なバグは最終生成物のクリップを招く「緊急」レベルなので発見されれば迅速に修正され、音楽関係者には「XX.X以前のバージョンは使うな!」との大号令がかかり、世界中で大騒ぎになるもの。そしてその不具合がいったいどのバージョンでFIX(修正)されたのかは「修正履歴」としてユーザーに公開されるようになっているのが、世界中で使われるProToolsのような立派なソフトです。そうでないと安心して使えない。果たしてそのような、同一ソースからのバウンスで毎回音量が異なるような不具合が「アコリバCD事件」当時のProToolsに存在していて、なおかつその不具合が修正された過去が存在するのかどうか? これを確認できるのは登録ユーザーの特権でしょう。音量が変わっているというのは大抵は操作者がボリュームのツマミに不用意に触れてしまったとか、マウスに手が当たったとか操作者の操作ミスが原因だろうとは想像するのですが・・・。おしまい。
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