古風な無調の世界:エリーズ・ベルトラン作品集『愛の手紙』

日記・雑記
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久しぶりに新譜レビューです。
エリーズ・ベルトランは2000年生まれのフランス人作曲家です。
と書き始めてみたものの、
彼女が今後どのような(音楽家)人生を歩んでいくのか
まだ想像しにくいこともあって、
こういう紹介の仕方がふさわしいのか、
少しためらいがちになっている自分がいます。

発表されている作品もまだ十数というところですし、
演奏者としてもヴァイオリンやピアノは自身の演奏が
動画サイトで見られるくらいだから、
腕前としても見劣りすることはありません。
まあ彼女の場合、ヴィジュアル的にもなかなかなので、
その点は割り引いて見なければなりませんが
それでもやはり魅力的ではあります。。。

「Elise Bertrand, Quasi Variazioni for Piano」
https://www.youtube.com/watch?v=7fZFQ8XSocU

そんな彼女のデビューアルバムを
毎日のように聞き続けている私ですが、
「無調の世界にもう一歩踏み込んだドビュッシーの曲」を
聞いているかのような感じがしています。。。
完璧な十二音技法というわけではなく、
ギスギスした息苦しさのようなものはあまり感じないかな~。
そういう意味でも同時代の情景に溶け込んでいく魅力を
持っているような気がします。

でもその一方で感じる古風な印象。
それはたとえばバルトークが
自身の民族音楽の研究のもとに生み出したようなものとは
根本的にアプローチが違う気がしていて、
彼女はそのバルトークを二次的によく研究していて、
そのもとに生み出されているように聞こえてくる。
つまり無調化していく先人の仕事をきっちり踏まえた
楽曲づくりなんではないかな~などと
邪推してしまったわけなのです。。。
それはちょっとどこかで以前に聞いたことある無調風の楽曲
という感じを受けるせいかもしれません。

いや、でもそれが悪いと言っているんではないです。
こういう楽曲の雰囲気を自分のものとしている彼女は
素晴らしいと思うし、
けっして歴史に対する皮肉めいたもので
こういう曲を作っているわけではないことは、
彼女のコメントなどからもうかがい知れます。
個人的には、彼女のピアノ曲は瑞々しい魅力にあふれていると
感じますし、
特に作品1の「12の前奏曲」は、ずっと聞いていたくなるほどです。

また、さきほど同時代の情景に溶け込んでいく魅力
なんて申しましたが、
ちょっと映画音楽と親和するところもありそうで
現代劇のBGMとしてかかっていても違和感はないように思います。
さらに踏み込んでいえば、ポップミュージックが浸透しきった後の
この21世紀前半の我々の音楽的日常を逆照射するかのような
古風さが意図されているのかも。。。
なんていうことさえ思ってしまいました。
つまり「今聞かれるべき古風さ」っていう気さえしたってことです。
深読みに過ぎるかもしれませんが、
これだけ聞き続けられる魅力を私なりに分析してみると、
そんなところに行きつくかな~と思っています。

あと、このアルバムを知るきっかけになった
最近ではエンジニアとしてだけではなく、
プロデューサーとしてもクレジットされるようになった
ケン・ヨシダの存在についても最後に触れておきたいと思います。

最後にアルバムにはまだ入っていないベルトランの新作を
ご紹介します。
歌曲です。
「Elise Bertrand – Âme de Nuit, Op.12 (Adèle Charvet, Théo Fouchenneret)」
https://www.youtube.com/watch?v=NG5uA0Opt1I

コメント ※編集/削除は管理者のみ

  1. ゲオルグさん、こんにちわ~♪

    フランスの歌というと何故かエディット・ピアフとかミッシェル・ポルナレフが頭に浮かんできます。

    YouTube聴きましたがベルトランいいですね、古き良き時代のフランス歌曲といった感じでしょうか!!!
    曲想としてはドビュッシーよりフォーレやフランクが近いような気がします?
    でもフランス語の曲ってみんな同じに聴こえちゃう(をぃ)
    わたしの感性不足ですかね、ドビュッシーとラベルは全歌完備してるんだけど(笑)

  2. spcjpnorgさん
    レスありがとうございます!

    「古き良き時代のフランス歌曲といった感じ」とおっしゃるのはわかります。そうですね。曲想がフォーレやフランクの感じに近いですか。彼らの歌曲ももっと聞いてみなくちゃ。対位法も好んで使われているようなので、おっしゃる通りかもしれないです!

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