京都人挑戦システムとセンモニ システムの後は、最後の1階のオーディオルームにある「マスタリング システム」の試聴タイムとなりました。このシステムの狙いは、1セットのスピーカーで4つのシチュエーションの再現するとのことで興味津々です。
1)マイク位置で聴く音
2)指揮者の位置で聴く音
3)コンサートホールの5列目あたりで聴く音
4)ホールの中ほどで聴く音
部屋との相対関係を含めた一つのシステムで「4つのシチュエーションを再現する」と事前にアナウンスされていましたので、「どうやってやるのか?」その方策についての興味がわいていたのです。考えられる方策は、「電気的にコントロールする方法」か、「リスニングポイントを移動する方法」の二つでした。ですが、息子さんがプロのミュージシャンでもあり、プロのミキサーでもあるとのことで、4つのシチュエーションにはシビアな要求がされているとのことです。要するに息子さんが仕事のために使われているシステムなんですね。
④マスタリング システム
再生装置のシステム構成は、マジコ軍団に対してスピーカーのみ変更したシステムです。
スピーカー:マジコ Q1
プリアンプ:FIDELIX CAPRICE
パワーアンプ:M+GEN
SACDプレーヤー:エソテリック グランディオーソ K1X
※変更点は、スピーカーをマジコQ3からQ1に換えただけとなります。
見方を変えればマジコ軍団のひとつで、「小マジコ」とも言えると思いました。
さて、マスタリング システムでプロが仕事に使う「4つのシチュエーションの再現」の試聴となりました。試聴用の音源は、センモニ システムで最後に聴かせてもらったドリー・ベイカー /オールウェイヴスが選択されました。
「どうやってやるのか?」の答えは、「リスニングポイントを移動する方法」でした。
このリスニングポイントを変えて聞え方を変える方法は、オーディオマニア間ではよく知られることです。四国のお宅でも、「ココで聴いたら最前列」「ココで聴いたら2階席」などと座る位置を変えながら楽しんでいました。ですが、プロが仕事に使うとすると単に聞こえ方を変えるだけではないシビアな要求があるとのことです。その要求を叶えることが出来たのがマジコQ1だったと言われていました。
試聴用のソフトで聴いた結果を簡単にまとめると下記となります。
1)マイク位置で聴く音・・・音の中心は目の前で鳴っているが、広い空間の音も聞こえる(マイク位置には思えなかった)
2)指揮者の位置で聴く音・・・音の中心は演奏者に近接して聴く音だが、広い空間の音も聞こえる(自分も演奏するのだが、こんな風には聞えない)
3)コンサートホールの5列目あたりで聴く音・・・音の中心は少し離れて聴く感じだが、ピアノの音の聞え方が異なる(ピアノだけ広がる音に違和感があった)
4)ホールの中ほどで聴く音・・・この音が一般的なリスニングルームで聴く音だが、ピアノの音だけボケて広がり違和感があった
◆ここまで聴いて気が付きました。「ピアノの音だけが逆相で録音されています」
◆目の前のサウンドステージの中心部だけを聴いたならば、マスタリング システムの意図は感じられたのですが・・・
このような感想を告げると、サウンドクルーさんからの回答は以下でした。
クルー:「マイク位置で聴いてもミキサーは全部の音の粗さがしをしなくてはならない」「だから近接してもすべての音を聴く必要がある」「これはプロ用のシステム」
ヒジ:「ですが、ピアノだけ逆相ですから狙い通りの音には聞こえません」
クルー:「逆相の録音など沢山ありますからね」
ヒジ:「デモとしては選曲を誤りましたね」
クルー:「ガハハ~」
<<いやいや、よくあることです。狙い通りのデモをしようと思ったものの、「選曲のあやまり」「機器の不調」など普段とは違う条件で聴かせてしまい、思いもよらぬ感想にドギマギしてしまうこと。自分にもあります。今回の西方オーディオ巡りでも、京都人邸でありました。デモ前の事前確認、これが大事ですね>>
これで当初に予定していた4つのシステムの試聴はすべて終わりました。ですが、これで終ったのでは心残りが出てしまいます。④マスタリング システムのマジコQ1が奏でる音がとてもよかったからです。サウンドクルーさんも同様に思っているとのことで、予定外とはなりますが五番目の試聴をさせてもらうこととなりました。
⑤小マジコ システム
システム構成は、④のマスタリング システムと同じです。ですが、聴き方を変えました。マスタリング用途としての聴き方から、音楽鑑賞用用途としての聴き方に変更です。
先ずはリスニングポイント決めからです。マスタリング用途で決めた位置のどこが音楽鑑賞用として適しているか?
1)マイク位置で聴く音と2)指揮者の位置で聴く音はあり得ませんね。3)コンサートホールの5列目あたりで聴く音と4)ホールの中ほどで聴く音のどちらがいいか。3)の位置と4)の位置を同じクラシック音源で対比させてもらった結果、音源により優劣はあるものの、自分好みは「3)コンサートホールの5列目あたりで聴く音」となりました。普段、コンサートを聴きに行く時に選ぶ席もこの辺りですから、なるべくしてなったポジションなのかもしれないです。
聴かせてもらった音源は、①リファレンス:マジコ軍団のマジコQ3と同じものです。下記の手持ちの音源から選択しました。
どれもよかったです。試聴結果を簡単にまとめると下記となります。
・正確な音
・ほぼ問題点のない音
・音楽に浸れる音
・低音が物足りないと感じた音源もあった(カノン、Credo、マーラー)
<<自分は「正確な音か」「いい音か」「好きな音か」の尺度で試聴するようにしているのですが、「小マジコ」の音はすべてをクリアし大変気に入りました。自分には、マスタリングのための音と言うよりは、自宅で音楽を楽しむための音と感じます>>
<<ですが、オーディオマニアはスゲー音や迫力のある音も出したくなってしまうんですよね。だからQ3も捨てがたい。これもマニアのサガですね>>
最後に素晴らしい音楽を聴かせてもらって大満足なサウンドクルー邸訪問でした。そして、これだけ長い間共に同じ音を聴き、会話をしていくと、ホストの本質的な部分も見えて来たように思えます。以前から疑問に思っていたことの理解出来ました。
ヒジ:「年に700人も1000人も自宅に招いて聴かせるなんて苦痛ではないですか?」
クルー:「苦痛ではないです。楽しみですね」
ヒジ:「自分の時間がなくなると言いますか。やりたいことが出来なくなりませんか?」
クルー:「聴いてもらって、アンケートを書いてもらう。そうすると本音が聞けるんですよ」「指摘があると、次の機会には何も言わずに(改善した)音を聴かせる」「その時のゲストの顔を見るのが楽しみなんです」
自分も4枚のアンケートを書いてきました。
ヒジ:「初対面の人との会話は疲れませんか?」
クルー:「人見知りをしないので疲れません」
ヒジ:「でも、700人もいたら合わない人もいるでしょ」
クルー:「それはいますよ。でも、そんな時は自分の何が問題なんだろうと考えるようにしています」
このように何事も前向きに考える方なんですね。音に対する負の指摘を言ってもニコニコしながら聞いてくれます。前向きでアクティブですから、「クルーさんの辞書に”遠慮”という文字はありません。」ですが、人間好きで向上心溢れる方ですし、こうして何百、何千の人の耳を借りて追い込んだ音を、数種のシステムで奏でておられますので、参考になることが多いと思います。関東から簡単に行ける場所ではありませんが、気に留まられた方は聴きに行かれることをお勧めいたします。きっと歓迎してくれることでしょう。
<<下記のHPのCONTACTから連絡すれば訪問可能です。・・・さて、お好みのシステムと音はどれでしょうか?>>
Y’s EPOCHのHP: https://sound-crew.jimdofree.com/
長い1日は終えて、宮島の目の前にあるホテルまで送ってもらいました。
そして、翌日はサウンドクルーさんと共に、大阪に向かったのですが、今度は自分がやらかしてしまい、トホホーです。
この話は、また次回に。
― 第1章:サウンドクルー邸 おわり ―
コメント ※編集/削除は管理者のみ