サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団&ヒラリー・ハーン演奏会(兵庫県立芸術文化センター)

日記・雑記
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2015年のヒラリー・ハーン来日公演は、フィンランド生まれの指揮者エサ=ペッカ・サロネンが率いるイギリスの名門フィルハーモニア管弦楽団とのアジアツァーとしてやってきた。

台湾公演を終えて来日最初のステージが今回の兵庫県立芸術文化センターでの公演のようで、来日後はしっかり倉敷観光などを楽しんだらしい。

今回はサロネンの母国フィンランドの作曲家、シベリウスの生誕150周年記念としてシベリウスの交響曲が順次演奏されるという。
来日初回の今日は、交響詩「フィンランディア」に始まり、ヒラリー・ハーンはブラームスのヴァイオリンコンチェルトだが、メインはシベリウスの交響曲第5番というプログラムだ。

PACの公演より1時間早い土曜日午後2時開演のコンサート。
あいにくの雨だがチケットは完売。
小生は今回1人なのので、1階E列16番という、指揮者とコンマスの丁度間から前列5列目でヒラリー・ハーンからは10メートルの至近距離で演奏が楽しめる席を確保できた。

会場はいつものPAC定期とは少し顔ぶれが違い、ヒラリー・ハーンの追っかけらしき集団も居る。

小生は喉風邪をこじらせたのが完治してなくて咳が出たらどうしようかと悩んでいたが、幸いに薬と青ネギの効果で問題も無くコンサートを楽しむことができた。

開演5分前のチャイムの合図が始まる少し前から、フィルハーモニア管弦楽団員がゾロゾロステージに現れて思い思いに練習を始めたり話に花を咲かせている光景は、昨年のバーミンガム市交響楽団と同じ。

このスタイルはイギリスのオケは皆同じなのか知らないが、とてもリラックスしていて緊張の欠片など一片も無い。
最後にコンマスが拍手の中を登場して聴衆に挨拶をすると、チューニングが始まった。
チューニングの最中も隣の楽員と話に夢中なのもバーミンガムとそっくりである。

ザワザワした雰囲気のまま指揮者のサロネンが登場すると、途端に場の空気が本気モードに変わった。
冒頭のトロンボーンとティンパニから始まるフィンランディア。
金管楽器の重厚なサウンドに木管パートが旋律を重ねていく。
やや年齢構成が高めなフィルハーモニア管弦楽団だが、その技術は確かなものだし、弦楽器の各人が楽器をしっかり鳴らし切るサウンドは日本のオケではなかなか聞けない厚みがある。

フィンランディアでしっかり温まりほぐれたオケが、ヒラリー・ハーンを迎えた。
白っぽいが光沢を抑え気味のタイトなワンピースドレスで現れた。ヒラリー・ハーン。
足元は素足のサンダル履き。
髪の毛は昨年にアンドリス・ネルソンス指揮、バーミンガム市交響楽団と来日してシベリウスのコンチェルトを演奏した時に比べてやや短めでウエーブがかけられており、体つきも随分ふっくらと大人の雰囲気に変化している。

そして注目はタイトなドレスのお腹が妊婦のようにポコっと膨らんでいていることだが、本人は委細かまわない笑みをたたえながら聴衆に向かって挨拶をして演奏が始まった。

シベリウスの現代的な演奏からブラームスのロマン的かつ内省的な音楽がオケから響き渡る。
サロネンの指揮はオケを煽統制するような指揮ではなく、共に音楽を作り上げていくような控えめな指揮である。
音楽の流れをコントロールするのは、むしろヒラリー・ハーンの方。

首を振って合図を出したり、グッと足を踏み出す際にタメを作ったりして、目指すテンポとリズムを指揮者とオケに伝え同化させようとしている。

バイオリンの音色はより楽器自体を響かせるような弾き方になったように感じる。
至近距離で聴いているのに全く刺激的な音がしないのも凄いことだ。
音程の確かさにボウイングによる音色と音楽表現の幅が以前に増しているし、何より音楽に「色気」が出てきたことだ。
長大な第1楽章のカデンツァでは、ヒラリー・ハーンの持つ内面的な「優しさ」が滲み出るようで素晴らしいものだった。
悠然とした第2楽章に続いて怒涛の中を駆け抜ける第3楽章が始まるタイミングを取るサロネンとハーンのアイコンタクトが絶妙。
テンポのペースを決めるのはいつもヒラリー・ハーンの方というのがこのコンビでのスタイルなのだろう。

指揮者とコンマスの間に空けられた2メートル四方もないスペースを縦横に動き回り演奏する姿を見るにつけ、成熟した大人の色気を感じる大演奏家になったことを実感した。
ムターのような「小節」が効いた妖艶さに一歩近づいたようなブラームスであった。

アンコールはバッハの:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番より ジーグを弾いてくれたが、バッハ演奏ではボウイングがより古典的になるのか、CD演奏で聴き慣れた音色になるのが興味深かった。

休憩を挟んで、サロネンが今回のツアーで取り組むシベリウス生誕150周年を記念するシベリウス交響曲は5番が演奏された。
2番が有名でよく演奏されるが3楽章形式からなるこの5番も、シベリウスの作曲の集大成と言える名曲だと思う。、
木管楽器による特徴的な北欧のメロディ、独特な細かな動きを伴う弦楽合奏。
そして白夜の太陽のごとく明るくそして暗くなる様を金管のロングトーンが響く。
シベリウスの響きはシベリウス独特のものだ。

現代的な要素も取り入れたシベリウスの交響曲は、今年沢山演奏されることだろうが、今回の演奏は正に白夜のシベリウスであった。

演奏が終わり、オケのメンバーも今日の演奏の出金栄えと聴衆の拍手に満足そうである。
アンコールにはシベリウスの悲しきワルツが演奏された。

全ての公演が終った後にヒラリー・ハーンのサイン会が開催された。
さすが人気のヒラリーハーンであり数百人が列を成したが、小生は30人目位で持参のブラームスのバイオリンコンチェルトのCDにサインをしてもらった。

誰にでも優しい笑顔でサインに応じるヒラリー・ハーン。
来年は来日するのか?気になる??

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