なぜヴァイオリンの音に驚いたのか? – 感動再生に向けて

日記・雑記
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ネマニャ・ラドゥロヴィチのコンサートで一番印象的だったヴァイオリン群の音の話です。演奏を聴きながらも「なぜこんな音が出せるのか?」と思いは駆け巡りました。しかも、リーダーのネマニャの音は特別な音を出しているわけではありません。そして、ステージに向かって右側に配されたチェロやコントラバスの低弦楽器は芯のない音に聴こえました。

ヴィヴァルディの四季は生でもオーディオでも何回となく聴いた曲ですから、どんな音が流れるのかは頭に刻み込まれています。もちろん、ホールや演奏、音源やオーディオシステムなどで音が変わるのは普通ですから、めったなことで驚くことはないのですが、今回は驚きでした。もちろん楽譜が差替えられていたわけではないです。聴きなれた「春」のチャンチャンチャンチャララ~♪のメロディなのですが、下に響く音と言いますか、ヴァイオリンとチェロが同じ旋律を同時に弾いたような音と感じたのです。旋律は同じですが、低い方に響くので、押し出しが強く圧倒されました。

 

三鷹芸術文化センター風のホールは公共ホールですが、写真を見る限り音響に配慮された「音がよさそう」なホールですね。ですが、ホールに入るとわかるのですがかなり安普請です。風のホールでは、安普請であるがゆえに、空間の響きだけではなく構造物が響く感覚がありました。ウィーンの楽友協会ホールもホールが響く感覚があります。こちらは歴史を感じさせる建物で、安普請ではありませんが個体伝搬による響きも感じますね。

 

対比するとわかり易いのが、幸田浩子リサイタルに行った浜離宮朝日ホールです。こちらはしっかりした作りと感じました。

ホールの規模としては同程度です。三鷹の風のホールが定員625席で、浜離宮朝日ホールは定員552席です。ですが、作りも音もずいぶん違うのです。作りがよくて高級感があるのは間違えなく浜離宮朝日ホールですが、音は三鷹芸術文化センター風のホールの方がよいと感じました。

 

四季を聴いて面白い音のホールと感じたので、ステージの床や壁を叩いてみたのですがドンドンと響きます。ボ~ンボ~ンと鳴るわけではないのですが、しっかりしたホールのコツコツと鳴る感じとはずいぶん違いました。ヴァイオリンが下に響いたのはこれが原因だと思います。

 

更に、ドゥーブル・サンスの弦楽奏者は立って演奏していたことも、構造物の響きに拍車をかけていたのだと思います。骨伝導ですね。ネマニャは足のケガから、ピアノ椅子に座っていたので構造物への振動伝達が少なかったので、普通の音に感じたのだと思います。こう考えると、チェロやコントラバスの音が芯がなく膨らんだような音に聴こえたことの説明もつきます。

ですが、この安普請さが今回はいい方に働いたようです。力強く迫るようなヴァイオリンの音色が、聴いたことのないような音であり、聴いたことのないような四季を感じさせ、感動へといざなったのだと思います。構造物の響きは、楽器の音に対しては間違えなく付帯音となるわけですが、音楽を感じる上では付帯音がなければいいと言うものでもなく、場合によっては聴く者の感動を高める働きをするとも言えそうです。

 

オーディオ再生での感動再生を模索するために足を運んでいる生演奏ですが、音楽も楽しめましたし新たな発見もあって、三鷹市芸術文化センターでのネマニャ・ラドゥロヴィチ presents ドゥーブル・サンスは有意義なコンサート体験でした。今年の課題の感動再生も、年初から実施している実体験でようやく指標がはっきりしてきた気がします。言葉では表しにくいのですが身体が覚えた感覚ですね。すでに反映し始めてはいますが、最終的にこの指標をどのように料理するかです。

 

音楽もオーディオも奥が深すぎて目が回るようです。

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