生とオーディオ 『生は水物』- MM神奈フィル定期から

日記・雑記
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先週に引き続き、沼尻指揮 神奈川フィルの定期演奏会を聴いてきました。先週は県立音楽堂でしたが、今回はみなとみらいホールです。先週は「ウ~ン」という感想でしたが、今回は「よかった」と明言できます。同じ指揮、同じオーケストラのコンサートでしたが、終演後の感想には大きな違いがあります。主にこの違いについて書いていこうと思います。

 

<演奏>

指揮:沼尻竜典(音楽監督)

演奏:ピアノ ニュウニュウ

オーケストラ:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<演奏曲>

①グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16

②マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」

座ったのは、「2階席 RBブロック 1列」です。この位置は、昨年に聴いてよかったので定期演奏会の年間チケットを予約しようと試みたのですが、満席で取れませんでした。今回もチケット救済サイトからの入手です。同じ人が放出していますので、昨年の11月と同じ位置でした。

編成は、グリーグ、マーラー共に第1ヴァイオリン:14 第2ヴァイオリン:12 ビオラ:10 チェロ:8 コントラバス:7 の規模での演奏です。神奈フィルの演奏としては規模が大きいですね。マーラーに合わせた演奏規模かと思います。プレトークでの話から、楽器で特徴的なのがマーラーで使われる、”テノール ホルン” ”カウベル” ”ギター” ”マンドリン”で、”カウベル”は牛につける鈴で沼尻氏の個人所有のものも使っているとのことでした。”ギター” と”マンドリン”は音量の小さな楽器です。同じプログラムを前日にオペラシティで演奏してきたが、みなとみらいホールでは聴こえ難かったので演奏する位置を13cm上げたとのことでした。「たかが13cmですが、これで聴こえるようになった」と。そして、オペラシティとみなとみらいホールでは、「ホールの響きの違い」「収容人数の違い」「ステージの広さの違い」で、同じ曲を、同じ編成で演奏するが、まったく違う演奏となるので、指揮者としても楽しみとのことでした。

聴衆からの視点では、これらに加えて、「座る座席の位置でまったく違う聴こえ方になる」ので、この点が肝要と思いました。

 

演奏の出来、聴こえ方など、前日のオペラシティはわかりませんが、みなとみらい公演はとても素晴らしいものでした。

①グリーグ/ピアノ協奏曲

冒頭のティンパニーのクレッシェンドからピアノの強打の部分は、「フィヨルドの注ぐ滝の流れを表現したもの」と言われるそうですが、このつかみはとても良かったです。右斜め上方から聴くピアノは鮮度が最良の位置ですし、ティンパニーも鮮烈に聴こえ、気持ちは持っていかれました。そして音量も予めこの部分で測ることに決めていました。結果は、オーディオで気に入る音量も、この日の生演奏も図らずとも85dBでした。先週はオーディオで聴く音量の-10dBでしたから、「普段と同じ音量で聴ける」だけでも気分は盛り上がります。

ニュウニュウのピアノもよかったです。力強さもあり繊細さもある、オーケストラをぐいぐいと引っ張るようなピアノに惹かれ、あっという間の3楽章でした。

オーディオとの比較で言えば、「鮮度の生」「バランスのオーディオ」という感じでしょうか。聴く位置の違いと、録音のマイク位置の違いですね。生の良さは、演奏者一人一人の動きがよくわかる点です。視覚があるのは楽しいですし、一期一会の演奏を楽しもうという気持ちの違いも大きいです。

ちなみにオーディオで親しんでいる音源は、ルプー/プレヴィン/ロンドン交響楽団のシングルレイヤーSACDです。

②マーラー/交響曲第7番「夜の歌」

マーラーでは、第5楽章の初めに突如として強烈に鳴り響く部分で音量を測ることに決めていました。そして、こちらも図らずともオーディオと生が同じ85dBでした。こんな奇遇もあるものですね。

第1楽章で印象的だったのが、テノールホルンのソロです。配置は、金管楽器の一番右側に配されたラッパの口がこちらを向いています。ここから発せられる音が、鮮度は高く深みがあり身体に響きました。この音はオーディオでは聴けません。指揮の沼尻氏も先週とは打って変わったようにオーケストラから音を引き出すように操っている印象です。きっと氏はマーラーが得意で、思い入れもあるんでしょうね。プレトークの時からそれを感じました。

第2楽章のカウベルも印象的です。やはりプレトークで解説されていると目も耳も注目するものです。マーラーはきっとこの素朴な音を入れたかったんだろうなと感じるものでした。

この曲はマーラーの中でも親しんでいる曲ではなかったので、さすがに途中で緊張が解けてきます。正直、「長いな~」なんて思いも湧いていました。

第4楽章では、プレトークで解説に合った”ギター” と”マンドリン”が交互に鳴らされます。聞こえはしましたが、音が小さいのはやむを得ないですね。この点、オーディオではよく聞こえます。しかし、なぜに”ギター” と”マンドリン”を使うのか?もう一つ理解が及ばずに聴いていました。

そして唐突に鳴り響く第5楽章です。自分には、「寝るな~」という雄叫びに聞こえました。マーラーはダイナミックです。先週の緩い感じは何だったんだろうと思いながら聴いていました。最後のトゥッティでは、音量もグッと上がって盛り上げてくれます。冒頭に唐突に鳴り響く音の2倍以上を体感するサウンドに気持ちは高まり終演となりました。このダイナミックレンジは、オーディオでは味わえません。マーラーファンの方でしょうか、「ブラボー」の嵐が鳴りやみませんでした。

オーディオでは、まだ聴きこみの不足ですが、今回のために購入したのがティルソン トーマス&サンフランシスコ響のSACDです。

 

『生は水物』とずっと感じて来ましたが、今回のふたつのコンサートで、よりその思いを強くしました。先週の県立音楽堂でのモーツァルト、メンデルスゾーンと、今回のみなとみらいホールでのグリーグ、マーラーでは雲泥の差です。その要因は、「音量」「ホール音響」「聴く位置」「指揮の得手不得手」「ソリスト」であることは間違えないと感じました。こんなことを繰り返しながら、「当たりくじを引く」センスも養われてくるのでしょうね。音楽は生もオーディオもとても興味深いです。

コメント ※編集/削除は管理者のみ

  1. ヒジヤンさん、こんばんは。
    前回と異なり今回は演奏が良かったようで何よりです。

    ところでみなとみらいホールは改装後に2回聴いて、適度にクリアで硬質な音とゆったりした残響のバランスが良いホールだと思うのですが、一つだけ気になる点があります。
    今回ヒジヤンさんが座った席のちょうど真上くらいの3階席と、ステージから遠いCブロックの3階席でそれぞれ聴いたのですが、いずれもステージのサイド〜後方〜上方で音が溜まるというか、特定の音域で無駄な反響が出るような印象がありました。
    2階席や1階席だとそういった印象は無いでしょうか?もしそうであれば、次から3階席は止めようかと思ってます。

    • 眠り猫さん、コメントありがとうございます。

      おかげさまで、今回は「演奏」も「音量」も「音響」もよくて満足出来ました。沼尻氏はマーラーに思い入れがあり、得意なんですね。

      私の場合は、音量がないと満足出来ないたちですので、ステージ近傍の席を選ぶようにしています。1階席の場合は5列目辺りのセンター、2階席の場合はステージサイドのバルコニーです。

      >いずれもステージのサイド〜後方〜上方で音が溜まるというか、特定の音域で無駄な反響が出るような印象がありました。

      自分が選んでいる席では、そのようなことを感じたことはないですね。2階バルコニーのP席近傍では、モヤモヤした感覚を受けたことはありますが、RAブロックの先端より客席側では問題ないと思います。

      改装後の低音の響きも好んでいます。先日も、軽く叩くグランカッサの音が、ズンズンと身体に響いてきて心地よかったです。

      • ヒジヤンさん、確認ありがとうございます。
        次回みなとみらいホールで席を取るときは1階2階席で試してみます。

        • 眠り猫さん

          是非聴いてみて下さい。神奈川フィルの定期演奏会では、MMのRB/LBブロックがB席だなんて信じられないくらいに、音も視界もいいと感じています。1階席の前方はS席ですからCPはそれなりですね。

          そして感想をお伺いするのも楽しみにしています。

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